ずっとずっと 75
彼女は、僕がつけた紅い花びらを咲かせ、僕と同じ香りを身に纏っている。
首筋に顔を近づけ確認して、少し安堵する。僕のものだと安堵する。
会場が近づくに連れ‥…彼女の頬から赤みが消える。ぎゅっと彼女の手を握る。
僕を見て、微かに微笑む。
司君に会う事に躊躇(ためら)いがあるのだろう‥…
会場に着き、つぅ爺達と共に会場入りをすると、一瞬空気が止まった気がした。
公の場に、筒井、宝珠、薫が揃って出るのは珍しいからか? 皆の視線が集まる。
こぞって我先に挨拶しようとする輩に囲まれる。
薫があたしの腕をとり、そっとその場から離そうとした、その瞬間...
煌びやかなドレスを身に纏った若く美しい女性が、あたしを上から下まで見ながら
「雪乃様、薫様と一緒にいらっしゃるお嬢様お見かけしないお方ですけど‥…私どもにご紹介頂けませんでしょうか?」
雪乃さんが、鼻先でフッと笑い
「このネックレスの意味もご存じないあなたに、なぜご紹介しなければいけないのかしら? 笑止千万」
言葉を発した娘を、顔面蒼白になった男が引っ張っていく。
初めて見る雪乃さんの冷たい微笑み...
その場に居たもの達の空気が張りつめる‥…
「あらぁ、嫌だわ。うふふっ 皆さんは、あのお嬢さんのようにに無礼な方達ではなくてでしょ?」
それはそれは美しい顔で微笑まれた。
これが、世界のトップに立つ男の妻の顔なのだと思い知る。
亜矢さんが、場の空気を変えるかの如く
「さぁ〜皆さん、今宵は KAGURAの婚約パーティ、流石、多神楽のオーナー。美味しそうなお料理が沢山並んでましたわよ。」
そう言いながら前に進み出した。
道が開き、優雅に美しく歩く雪乃さんと亜矢さん。その後ろを、笑いながら棗さんと、つぅ爺がついて行く。
薫がクスリと笑って‥…
「怖かった?」
「う、う、うん。怖かった‥…」
「宝珠のお婆様が怒るとあの百倍くらい怖いよ。」
「そ、そ、そうなんだ。」
「あははっ、つくしには、絶対に怒らないから大丈夫だよ。」
「はぁっ、良かったぁ。薫は怒られたことあるの?」
「うん。悠斗と2人で嵐山の別荘の池にダイブして死ぬ程、怒られた。」
「えっ” あの高そうな鯉が泳いでいる池?」
「うん。お爺様達は笑ってらしゃったから、後でこってり絞られてたよ。プッ」
「あはっ プッ‥」
「‥…やっと笑った。つくしは笑顔の方が似合うよ。」
薫があたしの肩に、そっと手を置きながら囁く。
挨拶周りをしていた祥子さんが、あたし達2人を見つけ近寄って来る。
「しぃちゃん‥…そのネックレス、とってもとっても似合ってる」
今にも泣き出しそうな祥子さん。
「あ、あの‥… 祥子さん、河津桜大変有り難うございました。祥子さんのいいえ、由那さんの想いしっかりと心に刻みつけさせて頂きました。」
「‥…ありがとう。しぃちゃん。悠斗もカオちゃんも自分達の事より2人の事大喜びなのよ。あの子達ったらね、あなた達の婚約発表の日が待ち遠しくてしようがないみたいよ。うふふっ息子夫婦共々これからも仲良くして頂戴ね。って、まだ夫婦ではないわね〜」
「こちらこそ宜しくお願いします。ご挨拶遅れましたが、本日は本当におめでとうございます。」
「有り難う。セミナーやらなんやで忙しいと思うけど、たまには薫君と一緒に神楽の邸にも遊びにいらしてね」
そう言い残し、他の人の元へ挨拶に行かれる。
入れ替わり立ち代わり、やって来る、つぅ爺ズのメンバー達。口々に
「正式な発表を今から楽しみにしておりますぞ」
そう声をかけてくる。
京夫人と東雲夫人が嬉しそうに
「しぃちゃーーん うふっ、やっぱり私達の勘は当たりましたでしょ?」
「しぃちゃん、これからも秘密の亜矢さん情報宜しく頼みますわよぉ」
矢継ぎ早にお話になるお二人。
「はい。承知しました。」笑って敬礼を返す。
「そうそう、末息子の千尋と婚約者の桜子さんがお二人のマンショに呼んで頂いたと喜んでましたわぁ」
「実は‥…桜子さん、つくしの友人だったみたいで、昨日お会いして、偶然に驚いていた所なんです。」
「あらぁ〜 まぁ〜嬉しいわ〜 伯母の紹介でお会いしたお嬢さんなんだけど、千尋が一目惚れしてね、どうしても桜子さんが宜しいって大変だったのよ〜 これもご縁なのねぇ」
つぅ爺からの紹介ではなく、東雲夫人の伯母様からの紹介と知り、そして千尋さんに乞われ嫁ごうとしている友人に、あたしは安堵する。桜子の幸せを心から祈る。
今日の主役のかおるちゃんと悠斗が歩いてくる。まるで一対の絵の様にお似合いの2人。
とても誇らしい気持ちで、2人を眺める。
「しぃちゃ〜ん ルゥ君 今日はありがとう」
「こちらこそお招き頂いてありがとう。かおるちゃんとってもとっても綺麗。」
「うふっ ありがとう。しぃちゃんもとっても綺麗よ。」
「お二人さん、お互いに褒め合いですか?」
「もうっ、ユト君はすぐ茶化す〜」
「あはっ、カオちゃん、悠斗が茶化す時は、照れくさい時だよ。ねっ悠斗」
どうやら図星だったようで、耳まで真っ赤にしながら照れてる悠斗。照れる悠斗を見て、照れるかおるちゃん。本当に可愛らしい2人。あたしの大切な友人カップル。
イニーと、フィルが、薫と悠斗を呼び、4人で話し始める。
あたしとかおるちゃんは少し離れた場所で、会話を始めた。
刹那‥…
良く知っている香りが、あたしの鼻腔を刺激した。
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