総誕イベント・愛と欲望の果て~能登でちゃぷん~第七話 by チーム類
第七話
こちらのお話は、類チームで刻みました
どこを誰が書いたのか分かるかな?
(まあ確実に私が書いた部分は分かりそうですけど、、)
楽しんでくださいね
「もうっ///……あんなに…」
「……そう剥れんなって…気持ち良かったろ?」
「バカっ///」
ほんのり紅色の頬を膨らませて、たいして恐くも無いが睨んでくる愛妻 つくし。
いや……つくしを独りにして、先に風呂に入ったのは悪かったけど、誘ったのはそっちだろ?
誘われたら……乗るだろっ!俺達…夫婦だもんな?しかも…夫婦の前に『新』と『婚』が付くんだよ♪♪♪♪♪♪
愛されちゃってるよな……オレ♪♪
限りなく緩む口元を手で隠したら、テーブルの上のおしぼりが飛んで来そうになった処で、呼び鈴。
「失礼いたします。少し宜しいでしょうか?」
「あっ、はい」
今の今まで、テーブルが冷たくて気持ちが良いとか言ってふにゃふにゃしてたのに、仲居の声でシャキッ!と立ち上がり玄関に向かいやがった。
…一睨みは忘れねぇのな?…可愛いけどな♪
「お夕食の時間は予定通りで宜しいでしょうか?確認に参りました」
「ありがとうございます。予定通りでお願いします」
「承知致しました。お食事前にお庭の散策等如何ですか?雪化粧にろうそく風の灯りが綺麗ですよ。足湯もありますので」
「そうなんですね!ありがとうございます」
「ねぇ、総…行ってみよ?」
「あぁ」
「先に行ってるねぇ~鍵 掛けて来てね♪」
「……は?おいっ!」
玄関先の会話に片耳を傾け、適当に返事をしてたら……置いていかれた。
確かに…露天風呂からの景色は、あいつが好きそうだな…と思ったんだったな……
えーと……ここの鍵は……
**
本館受付脇にあるこの館内地図を見つけたつくしは、その広さとゴージャスさに再びの感動。
お薦めの庭園と足湯の場所を確認中に、
『オーナー♪』との従業員の声と、直ぐ隣に立つ人の気配に気が付き視線を上げた。
「……あれ?類…どうして?」
「いらっしゃい♪牧野」
「楽しんでる?どうしてって…俺 一応ここのオーナーだよ?」
「そうだったのっ?!言ってよね、お祝いするのにっ」
「名前だけだよ、オープンしたばっかだしね♪」
「……もぅ…今日は、ありがとね♪」
「……ぁ…牧野……温泉の匂いがする♪もう入ったんだ」
「……///…ぅん……」
……ホント…あんたって判りやすいよね
類はつくしの首筋に顔を寄せ、その薫りを吸い込む。
館内とはいえ、愛しい妻を独りにする事など無いだろう旦那の行動を想像しながら。
………ヤバい……愉しいかも♪♪
「……おいで 牧野、案内するよ♪」
「えっ!いいの?本当?」
「勿論♪♪いこ?」
「うん、ありがと♪」
類は背中に感じる痛い程の視線を愉しみながら、彼女をエスコートして足湯へ。
その扉を開けて、中へと誘った。
**
一方、総二郎。
テーブルの上にポツンと置かれた部屋の鍵を手にとり、つくしを追った先に……
良く…知った…いや、知りすぎているシルエット。
はっ!!何でお前がここにいるんだよっ!
(そうだった!ここは花沢リゾート)
なっ!!首筋に顔を埋めるなっ!そ、そこは俺の場所だっ!
(いやいや、そう言う事ではなく…)
……やっぱり…フリ……
一瞬にして湧き出て来る数日前からの負の妄想。それを打ち消す事も出来ず、二人に気づかれないよう後をつけた。
**
「うわっ。 すごい!」
「ん。」
扉を開けると長い板の上に座布団が等間隔に置かれている。
その座布団の上には、籠に入ったタオルセット。
そして目の前にはライトアップされた日本庭園が見える。
先客がおり、足湯を堪能しているのが分かる。
「凄い。 こんな風になってるんだ。」
「ん。 冬は寒いからね。 部屋の一室のようにしてる。 もちろん夏は目の前のガラス戸を開けるけどさ。 二か所出入口があって、ここから庭へ行くことも出来る」
「へぇ。 凄いね」
類は説明しながら、ドアを閉める。
すると目の前のガラス戸に大きな犬が見えた。
「犬? ゴールデンレトリバー?」
つくしの呟きと同時に、先客が立ちあがり足を拭き始めた。
どうやら客の飼い犬らしい。
「ペット同伴OKなんだ」
「へぇ、、」
客は庭に続く扉を開けると、サッとゴールデンレトリバーが入ってきた。
そして何を思ったのか、つくしに乗りかかるとぺろぺろと顔を舐め始めた。
総二郎は、忍び足でゆっくり近づくと、外からでも中の二人の楽しそうな声が聞こえる。
「きゃっ、くすぐったい」
(くすぐったい? あいつ何をしているんだ?)
総二郎は足湯の扉にピタリと耳をくっつける。
もちろん心中穏やかでいられない。
一方、中のつくしはされるがままだ。
「もう💓 くすぐったいったらぁ💓」
(くすぐったい? 類の奴、どこを触ってんだ?)
と思うと、モヤモヤして鼓動が激しくなる。
総二郎は落ち着けるために、一度耳を離すと大きく深呼吸をする。
その間に先客が慌ててつくしから犬を引きはがす。
「すみません。 怪我はないですか?」
「大丈夫です」
「本当に申し訳ありません」
先客はペコペコと何度も頭を下げながら、庭に続く扉から出て行った。
(大丈夫だ。 俺たちは既に結婚している。 俺はつくしを愛しているし、つくしも俺を愛している。 そんなつくしが俺に隠れて浮気をするはずがねぇ。)
総二郎は自分に何度も言い聞かせ、心を落ち着かせる。
そして、もう一度中の様子を窺うように耳を貼り付けた。
「類。 総には内緒ね」
(内緒だと? 俺たち隠し事はしねぇという約束だったよな? それなのに、、俺に内緒? 考えられねぇ。)
(犬に襲われたと総に知られたら、絶対に大笑いされるから絶対に黙っててね)
「分かった。 二人の秘密にする。 それより、あんた凄い事になってる。 テカテカ光ってて」
「あっ/// だって…舐めるんだもん////」
(はあ? 舐める? テカテカ光る? それって、あそこだよな? あそこ以外に舐めるとテカテカする場所はねぇよな!! っていうか、舐めたのか? つくしのあそこを?)
総二郎は信じられないという表情を見せる。
「ぺろぺろって勢いよく舐められたら、すぐにこうなるよね」
(あぁ、舐めるとすぐに濡れるんだよ。 テカテカ蜜を滴らせて、甘い声で『総、、』と呟いてくれるんだよ。 でも、、普通舐めさせるか?)
「ん。 それに、牧野も嬉しそうでさ。 じゃあそろそろ、、」
(類に対しても嬉しそうな顔をするのか? 俺だけのつくしだろ? そろそろって事は、そのテカった場所に挿れるのか? さっき俺のを挿れたところだろ?)
「うん。 楽しみ」
(嘘だろ? 楽しみだって? 類とやる事が?)
総二郎は頭をブンブンと大きく振る。
(いやこれは何かの間違いだ。 つくしに限ってそんなことはない)
つくしは、サッと足湯へと歩を進めると、浴衣の裾を捲り始める。
そして、類に向かって告げる。
「早く…来て?」
(つくしの方から誘う? 俺に対しては、ぜってぇ言わねえぞ?)
「分かった」
類は、ゆっくりつくしの隣へ…
(分かったじゃねえ! つくしに挿れて良いのは俺だけだ!)
と思うものの、根がはったように足が動かない。
つくしを信じたい思いと信じられない思いが交錯している。
「じゃあ…ここに…入れるよ?」
「うん」
類の合図と共に、二人は片足を浸ける。
「あっ❤」
何とも言えない温かさに、つくしは快感の声をあげながら、もう片方の足も入れる。
その声に、総二郎はぎりぎりと奥歯を噛み締める。
(挿れやがった。 マジで挿れやがった。 落ち着け…落ち着け…。 今乗り込んだら、自分を静止出来ねぇ)
「中が…温かい…❤」
類も、心地好いの声色で呟きながら、もう片方の足を入れ椅子に腰を落とす。
(当たり前だろ! つくしの中は最高なんだよ! それなのになんで俺の目を盗んで二人は…)
「気持ちいい❤…」
「俺も…。 凄く中がトロトロ…こんなの俺…初めて…」
(つくしは名器なんだよ! 絶妙の締め付けで、中はとろりとした蜜が絡んでさ)
「総二郎は、こんな風に時間をかけるのは嫌いなんだろうな」
(総二郎は、こんな風に足湯にのんびり浸かるって事は嫌いだろうな。 それよりも牧野と愛し合う時間を持ちたいというかさ…)
(それって俺が早漏だって言いたいのか? なめんなよ! いつもつくしを満足させてるんだよ!)
「確かに、総は早いよね。 ちんたらするのは好きじゃねぇんだよ!っていつも言うもん」
(総は、早く二人っきりになれる部屋に行きたがるもんね)
(はあ? きちんと時間をかけてるだろ? 早漏じゃねえだろ? まあ時々? つくしの色香りにやられ、がっつくときもあるけどさ。 さっきもがっついたけど、いつもじゃねぇだろ!!)
すると目の前のガラス戸に、先ほどのゴールデンレトリバーが現れ、しっぽを振り振りして愛嬌を振りまいている
「あっ…凄い…凄いよ!類! 腰の動きが…」
つくしは笑いをこらえながら告げる
その籠った声が、総二郎の耳には色っぽい声に聞こえる
(腰じゃなくしっぽを振ってるんだけど…。相変わらず天然と言うか面白いやつ)
(なんだと! 類の腰の動きが凄いだと!! 俺だって負けてねぇだろ? なあ、つくし!!)
「何してやがるっ!」
本当ならばそう言って、二人の前に出るべきところ。
だがそうなると、二人のコトの現場を間近で見る羽目になってしまう。
このまま続けられるのは、嫌だ。
けれど、それを目の前で見せつけられるのも、嫌だ。
どうしようもないジレンマに、ひとり悶々とする総二郎。
そんな男の気配を、類はしっかりちゃっかり、察していた。つくしは勿論、足湯に夢中で気付かない。
類はタダ洩れの総二郎の気配が、楽しくて仕方がない。
(…あいつ、一体何を勘違いしてるんだか…?
まっ、どうせ良からぬコトなんだろうけど。
……あっ、そうだ♪)
ふっと大切なことを思い出した類が、ゴソゴソとポケットの中を探る。
「どうしたの? 類」
「あげる」
「えっ?」
つくしに手渡されたのは、天然石のストラップ。
今日、総二郎に渡すものと同じデザインだが、石が違っていた。
くるりと弧を描くように繋がれた石は、ロードクロサイト。つくしの唇の色と同じ、可愛らしくも瑞々しい色。
「これ…?」
「お揃い。あんたの誕生石だろ」
「えっ…でも…」
僅かに躊躇する。類にしてみれば大した金額ではないが、なんの理由もなく物を貰うのは気が引ける。
そんなつくしの気持ちを察したように、類が耳元で『少し早いけど、誕生日プレゼント』と囁いた。
「あっ…ありがと。…ふふっ、お揃いなんて嬉しい」
「…あんたなら、そう言うと思った」
「うん、前のが古くなってきたんだよね。丁度いいから捨てちゃおう」
その時、扉の向こうでガタンと大きな音がする。
(捨てる…?
捨てるっ!?
…って、何を…?
まさか…? 俺…!?
渡したのは……新しいエンゲージリング!?
嘘だろ?
…ってか、そんなの許せる訳ねぇっ!!!)
バンッ!!!
総二郎が勢いよく扉を開ける。
と、そこには情事のあとの二人………
などではなく、並んで座り足湯に浸かる、二人の姿。
勿論、二人とも服はちゃんと着ている。
そして、開け放たれた庭の向こうには、フリフリと尻尾を振る、ゴールデンレトリバーの姿があった。
「………ぁ………???」
「総、遅かったじゃない」
『待ってたんだよ』と笑顔で迎えるつくし。その手元を見れば、持っているのはストラップ。アワアワと慌ててそれを隠す姿に、それが“誰と”お揃いなのかは、容易に察することができた。
そんな姿可愛らしいつくしの姿に、総二郎の焦りと怒りは急速にしぼんでいく。
類はしたり顔で『突っ立ってないで、座れば』と促すが、つくしの隣を退く気配はない。
その口元に僅かに見える笑み。
瞬時に、類が二人の会話を“態と”聞かせていたことを悟る。
(……コノヤロウ……)
ふつふつと別の怒りが湧き上がる、総二郎。
だが類は、平然と爆弾を投下する。
「あ、そうだ。俺、28日は日本に居ないんだ」
「えっ、そうなの? 仕事?」
「ん…。だから先に言っておく。誕生日おめでと」
「あっ…ありが……」
ちゅっ❤️
つくしの額に、軽いキスを落とす。
不意打ちのキスに、つくしの顔が真っ赤になる。
総二郎の堪忍袋の緒が、ぷちんと切れた。
「つくしっ!! 部屋戻るぞっ!!!」
「えっ…総……だってまだお庭に行ってない……」
「いいからっ!!!」
足を拭くのもそこそこに、つくしは総二郎に引っ張られて行く。
『ごめんね』と動く唇に、類はひらひらと手を振ってそれを見送った。
残された類はひとり、別のポケットからスマートフォンを取り出す。
そこに付けられているのは、先程と同じ形のストラップ。
「……俺ともお揃いだって、言い忘れちゃった……」
『ま、いいか』と、独り言ちる。
総二郎は、一番大切なものを手にしたのだ。
このくらいの“お揃い”くらい、目を瞑って貰うことにしよう。
とは言っても、その総二郎ともお揃いになるのは、なんとも複雑ではあるのだが。
しばしそのまま黄昏ていた類だが、のろのろと立ち上がると支度を整え、上着を羽織る。
「オーナー。お出掛けですか?」
「……帰る……」
「お帰りでございますか…? ではお車を…」
用意のため行こうとする従業員に『そうだ』と続ける。
「特別室の客のとこ、明日、呼ばれるまで行かなくていいから。
連泊するようなら、そのようにしてあげて」
「はい。畏まりました」
心得たように従業員が一礼する。
類が表玄関を出ると、既に陽は暮れあちこちに雰囲気を醸し出すランプが灯っている。
既に待機された車に乗り込んだ類は、再びスマートフォンを取り出した。
ゆらゆらと揺れるストラップは、淡いピンク色。それは何処か、つくしの頬の色にも似ている。
ふと浮かび上がる、切なさ。
それを誤魔化すかのように、ちょんとストラップの石を小突く。
「…いいよ…。牧野が幸せなら」
少しだけ淋し気に微笑むと、ゆっくり目を閉じた。
こちらのお話は、類チームで刻みました
どこを誰が書いたのか分かるかな?
(まあ確実に私が書いた部分は分かりそうですけど、、)
楽しんでくださいね
「もうっ///……あんなに…」
「……そう剥れんなって…気持ち良かったろ?」
「バカっ///」
ほんのり紅色の頬を膨らませて、たいして恐くも無いが睨んでくる愛妻 つくし。
いや……つくしを独りにして、先に風呂に入ったのは悪かったけど、誘ったのはそっちだろ?
誘われたら……乗るだろっ!俺達…夫婦だもんな?しかも…夫婦の前に『新』と『婚』が付くんだよ♪♪♪♪♪♪
愛されちゃってるよな……オレ♪♪
限りなく緩む口元を手で隠したら、テーブルの上のおしぼりが飛んで来そうになった処で、呼び鈴。
「失礼いたします。少し宜しいでしょうか?」
「あっ、はい」
今の今まで、テーブルが冷たくて気持ちが良いとか言ってふにゃふにゃしてたのに、仲居の声でシャキッ!と立ち上がり玄関に向かいやがった。
…一睨みは忘れねぇのな?…可愛いけどな♪
「お夕食の時間は予定通りで宜しいでしょうか?確認に参りました」
「ありがとうございます。予定通りでお願いします」
「承知致しました。お食事前にお庭の散策等如何ですか?雪化粧にろうそく風の灯りが綺麗ですよ。足湯もありますので」
「そうなんですね!ありがとうございます」
「ねぇ、総…行ってみよ?」
「あぁ」
「先に行ってるねぇ~鍵 掛けて来てね♪」
「……は?おいっ!」
玄関先の会話に片耳を傾け、適当に返事をしてたら……置いていかれた。
確かに…露天風呂からの景色は、あいつが好きそうだな…と思ったんだったな……
えーと……ここの鍵は……
**
本館受付脇にあるこの館内地図を見つけたつくしは、その広さとゴージャスさに再びの感動。
お薦めの庭園と足湯の場所を確認中に、
『オーナー♪』との従業員の声と、直ぐ隣に立つ人の気配に気が付き視線を上げた。
「……あれ?類…どうして?」
「いらっしゃい♪牧野」
「楽しんでる?どうしてって…俺 一応ここのオーナーだよ?」
「そうだったのっ?!言ってよね、お祝いするのにっ」
「名前だけだよ、オープンしたばっかだしね♪」
「……もぅ…今日は、ありがとね♪」
「……ぁ…牧野……温泉の匂いがする♪もう入ったんだ」
「……///…ぅん……」
……ホント…あんたって判りやすいよね
類はつくしの首筋に顔を寄せ、その薫りを吸い込む。
館内とはいえ、愛しい妻を独りにする事など無いだろう旦那の行動を想像しながら。
………ヤバい……愉しいかも♪♪
「……おいで 牧野、案内するよ♪」
「えっ!いいの?本当?」
「勿論♪♪いこ?」
「うん、ありがと♪」
類は背中に感じる痛い程の視線を愉しみながら、彼女をエスコートして足湯へ。
その扉を開けて、中へと誘った。
**
一方、総二郎。
テーブルの上にポツンと置かれた部屋の鍵を手にとり、つくしを追った先に……
良く…知った…いや、知りすぎているシルエット。
はっ!!何でお前がここにいるんだよっ!
(そうだった!ここは花沢リゾート)
なっ!!首筋に顔を埋めるなっ!そ、そこは俺の場所だっ!
(いやいや、そう言う事ではなく…)
……やっぱり…フリ……
一瞬にして湧き出て来る数日前からの負の妄想。それを打ち消す事も出来ず、二人に気づかれないよう後をつけた。
**
「うわっ。 すごい!」
「ん。」
扉を開けると長い板の上に座布団が等間隔に置かれている。
その座布団の上には、籠に入ったタオルセット。
そして目の前にはライトアップされた日本庭園が見える。
先客がおり、足湯を堪能しているのが分かる。
「凄い。 こんな風になってるんだ。」
「ん。 冬は寒いからね。 部屋の一室のようにしてる。 もちろん夏は目の前のガラス戸を開けるけどさ。 二か所出入口があって、ここから庭へ行くことも出来る」
「へぇ。 凄いね」
類は説明しながら、ドアを閉める。
すると目の前のガラス戸に大きな犬が見えた。
「犬? ゴールデンレトリバー?」
つくしの呟きと同時に、先客が立ちあがり足を拭き始めた。
どうやら客の飼い犬らしい。
「ペット同伴OKなんだ」
「へぇ、、」
客は庭に続く扉を開けると、サッとゴールデンレトリバーが入ってきた。
そして何を思ったのか、つくしに乗りかかるとぺろぺろと顔を舐め始めた。
総二郎は、忍び足でゆっくり近づくと、外からでも中の二人の楽しそうな声が聞こえる。
「きゃっ、くすぐったい」
(くすぐったい? あいつ何をしているんだ?)
総二郎は足湯の扉にピタリと耳をくっつける。
もちろん心中穏やかでいられない。
一方、中のつくしはされるがままだ。
「もう💓 くすぐったいったらぁ💓」
(くすぐったい? 類の奴、どこを触ってんだ?)
と思うと、モヤモヤして鼓動が激しくなる。
総二郎は落ち着けるために、一度耳を離すと大きく深呼吸をする。
その間に先客が慌ててつくしから犬を引きはがす。
「すみません。 怪我はないですか?」
「大丈夫です」
「本当に申し訳ありません」
先客はペコペコと何度も頭を下げながら、庭に続く扉から出て行った。
(大丈夫だ。 俺たちは既に結婚している。 俺はつくしを愛しているし、つくしも俺を愛している。 そんなつくしが俺に隠れて浮気をするはずがねぇ。)
総二郎は自分に何度も言い聞かせ、心を落ち着かせる。
そして、もう一度中の様子を窺うように耳を貼り付けた。
「類。 総には内緒ね」
(内緒だと? 俺たち隠し事はしねぇという約束だったよな? それなのに、、俺に内緒? 考えられねぇ。)
(犬に襲われたと総に知られたら、絶対に大笑いされるから絶対に黙っててね)
「分かった。 二人の秘密にする。 それより、あんた凄い事になってる。 テカテカ光ってて」
「あっ/// だって…舐めるんだもん////」
(はあ? 舐める? テカテカ光る? それって、あそこだよな? あそこ以外に舐めるとテカテカする場所はねぇよな!! っていうか、舐めたのか? つくしのあそこを?)
総二郎は信じられないという表情を見せる。
「ぺろぺろって勢いよく舐められたら、すぐにこうなるよね」
(あぁ、舐めるとすぐに濡れるんだよ。 テカテカ蜜を滴らせて、甘い声で『総、、』と呟いてくれるんだよ。 でも、、普通舐めさせるか?)
「ん。 それに、牧野も嬉しそうでさ。 じゃあそろそろ、、」
(類に対しても嬉しそうな顔をするのか? 俺だけのつくしだろ? そろそろって事は、そのテカった場所に挿れるのか? さっき俺のを挿れたところだろ?)
「うん。 楽しみ」
(嘘だろ? 楽しみだって? 類とやる事が?)
総二郎は頭をブンブンと大きく振る。
(いやこれは何かの間違いだ。 つくしに限ってそんなことはない)
つくしは、サッと足湯へと歩を進めると、浴衣の裾を捲り始める。
そして、類に向かって告げる。
「早く…来て?」
(つくしの方から誘う? 俺に対しては、ぜってぇ言わねえぞ?)
「分かった」
類は、ゆっくりつくしの隣へ…
(分かったじゃねえ! つくしに挿れて良いのは俺だけだ!)
と思うものの、根がはったように足が動かない。
つくしを信じたい思いと信じられない思いが交錯している。
「じゃあ…ここに…入れるよ?」
「うん」
類の合図と共に、二人は片足を浸ける。
「あっ❤」
何とも言えない温かさに、つくしは快感の声をあげながら、もう片方の足も入れる。
その声に、総二郎はぎりぎりと奥歯を噛み締める。
(挿れやがった。 マジで挿れやがった。 落ち着け…落ち着け…。 今乗り込んだら、自分を静止出来ねぇ)
「中が…温かい…❤」
類も、心地好いの声色で呟きながら、もう片方の足を入れ椅子に腰を落とす。
(当たり前だろ! つくしの中は最高なんだよ! それなのになんで俺の目を盗んで二人は…)
「気持ちいい❤…」
「俺も…。 凄く中がトロトロ…こんなの俺…初めて…」
(つくしは名器なんだよ! 絶妙の締め付けで、中はとろりとした蜜が絡んでさ)
「総二郎は、こんな風に時間をかけるのは嫌いなんだろうな」
(総二郎は、こんな風に足湯にのんびり浸かるって事は嫌いだろうな。 それよりも牧野と愛し合う時間を持ちたいというかさ…)
(それって俺が早漏だって言いたいのか? なめんなよ! いつもつくしを満足させてるんだよ!)
「確かに、総は早いよね。 ちんたらするのは好きじゃねぇんだよ!っていつも言うもん」
(総は、早く二人っきりになれる部屋に行きたがるもんね)
(はあ? きちんと時間をかけてるだろ? 早漏じゃねえだろ? まあ時々? つくしの色香りにやられ、がっつくときもあるけどさ。 さっきもがっついたけど、いつもじゃねぇだろ!!)
すると目の前のガラス戸に、先ほどのゴールデンレトリバーが現れ、しっぽを振り振りして愛嬌を振りまいている
「あっ…凄い…凄いよ!類! 腰の動きが…」
つくしは笑いをこらえながら告げる
その籠った声が、総二郎の耳には色っぽい声に聞こえる
(腰じゃなくしっぽを振ってるんだけど…。相変わらず天然と言うか面白いやつ)
(なんだと! 類の腰の動きが凄いだと!! 俺だって負けてねぇだろ? なあ、つくし!!)
「何してやがるっ!」
本当ならばそう言って、二人の前に出るべきところ。
だがそうなると、二人のコトの現場を間近で見る羽目になってしまう。
このまま続けられるのは、嫌だ。
けれど、それを目の前で見せつけられるのも、嫌だ。
どうしようもないジレンマに、ひとり悶々とする総二郎。
そんな男の気配を、類はしっかりちゃっかり、察していた。つくしは勿論、足湯に夢中で気付かない。
類はタダ洩れの総二郎の気配が、楽しくて仕方がない。
(…あいつ、一体何を勘違いしてるんだか…?
まっ、どうせ良からぬコトなんだろうけど。
……あっ、そうだ♪)
ふっと大切なことを思い出した類が、ゴソゴソとポケットの中を探る。
「どうしたの? 類」
「あげる」
「えっ?」
つくしに手渡されたのは、天然石のストラップ。
今日、総二郎に渡すものと同じデザインだが、石が違っていた。
くるりと弧を描くように繋がれた石は、ロードクロサイト。つくしの唇の色と同じ、可愛らしくも瑞々しい色。
「これ…?」
「お揃い。あんたの誕生石だろ」
「えっ…でも…」
僅かに躊躇する。類にしてみれば大した金額ではないが、なんの理由もなく物を貰うのは気が引ける。
そんなつくしの気持ちを察したように、類が耳元で『少し早いけど、誕生日プレゼント』と囁いた。
「あっ…ありがと。…ふふっ、お揃いなんて嬉しい」
「…あんたなら、そう言うと思った」
「うん、前のが古くなってきたんだよね。丁度いいから捨てちゃおう」
その時、扉の向こうでガタンと大きな音がする。
(捨てる…?
捨てるっ!?
…って、何を…?
まさか…? 俺…!?
渡したのは……新しいエンゲージリング!?
嘘だろ?
…ってか、そんなの許せる訳ねぇっ!!!)
バンッ!!!
総二郎が勢いよく扉を開ける。
と、そこには情事のあとの二人………
などではなく、並んで座り足湯に浸かる、二人の姿。
勿論、二人とも服はちゃんと着ている。
そして、開け放たれた庭の向こうには、フリフリと尻尾を振る、ゴールデンレトリバーの姿があった。
「………ぁ………???」
「総、遅かったじゃない」
『待ってたんだよ』と笑顔で迎えるつくし。その手元を見れば、持っているのはストラップ。アワアワと慌ててそれを隠す姿に、それが“誰と”お揃いなのかは、容易に察することができた。
そんな姿可愛らしいつくしの姿に、総二郎の焦りと怒りは急速にしぼんでいく。
類はしたり顔で『突っ立ってないで、座れば』と促すが、つくしの隣を退く気配はない。
その口元に僅かに見える笑み。
瞬時に、類が二人の会話を“態と”聞かせていたことを悟る。
(……コノヤロウ……)
ふつふつと別の怒りが湧き上がる、総二郎。
だが類は、平然と爆弾を投下する。
「あ、そうだ。俺、28日は日本に居ないんだ」
「えっ、そうなの? 仕事?」
「ん…。だから先に言っておく。誕生日おめでと」
「あっ…ありが……」
ちゅっ❤️
つくしの額に、軽いキスを落とす。
不意打ちのキスに、つくしの顔が真っ赤になる。
総二郎の堪忍袋の緒が、ぷちんと切れた。
「つくしっ!! 部屋戻るぞっ!!!」
「えっ…総……だってまだお庭に行ってない……」
「いいからっ!!!」
足を拭くのもそこそこに、つくしは総二郎に引っ張られて行く。
『ごめんね』と動く唇に、類はひらひらと手を振ってそれを見送った。
残された類はひとり、別のポケットからスマートフォンを取り出す。
そこに付けられているのは、先程と同じ形のストラップ。
「……俺ともお揃いだって、言い忘れちゃった……」
『ま、いいか』と、独り言ちる。
総二郎は、一番大切なものを手にしたのだ。
このくらいの“お揃い”くらい、目を瞑って貰うことにしよう。
とは言っても、その総二郎ともお揃いになるのは、なんとも複雑ではあるのだが。
しばしそのまま黄昏ていた類だが、のろのろと立ち上がると支度を整え、上着を羽織る。
「オーナー。お出掛けですか?」
「……帰る……」
「お帰りでございますか…? ではお車を…」
用意のため行こうとする従業員に『そうだ』と続ける。
「特別室の客のとこ、明日、呼ばれるまで行かなくていいから。
連泊するようなら、そのようにしてあげて」
「はい。畏まりました」
心得たように従業員が一礼する。
類が表玄関を出ると、既に陽は暮れあちこちに雰囲気を醸し出すランプが灯っている。
既に待機された車に乗り込んだ類は、再びスマートフォンを取り出した。
ゆらゆらと揺れるストラップは、淡いピンク色。それは何処か、つくしの頬の色にも似ている。
ふと浮かび上がる、切なさ。
それを誤魔化すかのように、ちょんとストラップの石を小突く。
「…いいよ…。牧野が幸せなら」
少しだけ淋し気に微笑むと、ゆっくり目を閉じた。
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