まだ気づかない11 類つく
いくつもの視線に晒されて
「腰、腰、腰、腰」
と言葉を繰り返す牧野を、類は抱き抱えながら
「早退するって、田村に言っといて」
ニッコリと笑って爽やかに去っていった。
バタンっ
秘書室のドアが閉まった5秒後________
「いまのって、いまのって、そういう事よね?」
そんな言葉を皮切りに
「キャーーーーーーッ」
「オォーーーーー」
と歓声が上がった。
「うぅうぅっ」
美人秘書が涙を流し悲し……
「ヤッターーーー」
いいや、喜び
「はい、はい。みんな1万円ねーーー」
ホクホクしながら、手を差し出す。
「えっ、でも……まだ付き合うとかじゃないかもよ」
「うんうん。いつものジレジレかもよ」
「あんなにガッツリとお姫様抱っこされといて?」
「まぁ 今回は専務が思い切った行動とってるけど……
でも、牧野さんと専務だもん」
「ぁっ でもでも、流石に今のは、そう言うことでしょう?」
「でもさー あの二人だよ?」
「ねっーー」
差し出されていた美人秘書の掌が美しく弧を描きながら宙に舞った。
その頃牧野は、完熟トマトのように全身を真っ赤にさせながら、ピカピカ光る黒塗りの車に乗っていた。
「あ、あ、あの……専務」
「んっ?」
「あの……もう降ろしてくださって大丈夫か……と」
「っん?こんな道の真ん中で降ろせないよ」
「そ、そういうことじゃなくて……ひぃ、ひぃ」
「ひぃ ひぃ ふぅっーーーー?」
小首を傾げた類が牧野の顔を見ながらふざけた事を言う。
「違います。って、せ、専務、顔が、顔が近過ぎます」
「っん そう?
近いって言うのはさぁ……」
そんな言葉と共に類の顔が近付いて来て、おでここおでこが合わさる。
「ひゃっ な、な、なにするんですか」
「っん? 距離についての説明。
分かりやすいでしょ」
「でしょって……可愛く言うの、似合ってませんから」
「そう?」
「えぇ 全然似合いません」
「でも、牧野は可愛いって思ったんでしょ?」
「言い方が です」
「あははっ 牧野はホントすぐムキになるよね」
「専務にだけです」
「へぇ 俺にだけなんだ」
「専務が揶揄うからです」
「ふーん でも、俺にだけなんだよね」
「それはだから、専務が意地悪だからです。って言うか……あーもうそうじゃなくて下ろしてください」
「どうせまた抱きかかえるんだから、このままで良いよ。
それに、ほらっ、もうじき着くしさ」
「もうじき着く?」
「うんっ 牧野も何回かは来たことある筈だよ」
類の言葉に牧野は首を傾げる。
「随分と昔だから覚えてないかな。
あっ、こっちは駅からとは逆方向の来かただから見たことないかもね。
でも、着いたらわかるからね」
コテンと首を傾げて類が微笑む。
「うっ 専務。そんなかおしても可愛くありませんから」
「そう?
牧野はなんだかとっても可愛いよ」
「可愛いって……」
「うん。牧野は可愛いし、カッコいい」
「専務……お昼なんか悪いもの食べましたっけ?」
「昼飯はまだ食べてない。朝はコーヒーだけ」
「あっ そうでしたね。って、また朝ごはん食べてないんですか? ちゃんと食べて下さいって言ってますよね」
「あっ、ほらっ もう着いた」
緩やかに車は止まる。
「腰、腰、腰、腰」
と言葉を繰り返す牧野を、類は抱き抱えながら
「早退するって、田村に言っといて」
ニッコリと笑って爽やかに去っていった。
バタンっ
秘書室のドアが閉まった5秒後________
「いまのって、いまのって、そういう事よね?」
そんな言葉を皮切りに
「キャーーーーーーッ」
「オォーーーーー」
と歓声が上がった。
「うぅうぅっ」
美人秘書が涙を流し悲し……
「ヤッターーーー」
いいや、喜び
「はい、はい。みんな1万円ねーーー」
ホクホクしながら、手を差し出す。
「えっ、でも……まだ付き合うとかじゃないかもよ」
「うんうん。いつものジレジレかもよ」
「あんなにガッツリとお姫様抱っこされといて?」
「まぁ 今回は専務が思い切った行動とってるけど……
でも、牧野さんと専務だもん」
「ぁっ でもでも、流石に今のは、そう言うことでしょう?」
「でもさー あの二人だよ?」
「ねっーー」
差し出されていた美人秘書の掌が美しく弧を描きながら宙に舞った。
その頃牧野は、完熟トマトのように全身を真っ赤にさせながら、ピカピカ光る黒塗りの車に乗っていた。
「あ、あ、あの……専務」
「んっ?」
「あの……もう降ろしてくださって大丈夫か……と」
「っん?こんな道の真ん中で降ろせないよ」
「そ、そういうことじゃなくて……ひぃ、ひぃ」
「ひぃ ひぃ ふぅっーーーー?」
小首を傾げた類が牧野の顔を見ながらふざけた事を言う。
「違います。って、せ、専務、顔が、顔が近過ぎます」
「っん そう?
近いって言うのはさぁ……」
そんな言葉と共に類の顔が近付いて来て、おでここおでこが合わさる。
「ひゃっ な、な、なにするんですか」
「っん? 距離についての説明。
分かりやすいでしょ」
「でしょって……可愛く言うの、似合ってませんから」
「そう?」
「えぇ 全然似合いません」
「でも、牧野は可愛いって思ったんでしょ?」
「言い方が です」
「あははっ 牧野はホントすぐムキになるよね」
「専務にだけです」
「へぇ 俺にだけなんだ」
「専務が揶揄うからです」
「ふーん でも、俺にだけなんだよね」
「それはだから、専務が意地悪だからです。って言うか……あーもうそうじゃなくて下ろしてください」
「どうせまた抱きかかえるんだから、このままで良いよ。
それに、ほらっ、もうじき着くしさ」
「もうじき着く?」
「うんっ 牧野も何回かは来たことある筈だよ」
類の言葉に牧野は首を傾げる。
「随分と昔だから覚えてないかな。
あっ、こっちは駅からとは逆方向の来かただから見たことないかもね。
でも、着いたらわかるからね」
コテンと首を傾げて類が微笑む。
「うっ 専務。そんなかおしても可愛くありませんから」
「そう?
牧野はなんだかとっても可愛いよ」
「可愛いって……」
「うん。牧野は可愛いし、カッコいい」
「専務……お昼なんか悪いもの食べましたっけ?」
「昼飯はまだ食べてない。朝はコーヒーだけ」
「あっ そうでしたね。って、また朝ごはん食べてないんですか? ちゃんと食べて下さいって言ってますよね」
「あっ、ほらっ もう着いた」
緩やかに車は止まる。
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