明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

まだ気づかない12 類つく

類は牧野を抱えたまま、車を降りた。手揉みをしながら挨拶をしてくる初老の男達に

「無理言って悪かったね。寄付金はあれくらいで良かったかな?
また何かあったら、田村に連絡しといて。
じゃっ お借りするね」

爽やかに告げると、スタスタと男達の前を通り過ぎる。

「あっ 花沢さまっ」

追い掛けて来ようとする男等に

「もう用はないから着いてこないでね」

とってもにこやかに、それでいてどこか冷たく言い切った。


角の道を曲がると共に、それまで黙って腕の中で俯き顔を隠していた牧野が類の顔を見上げ

「専務、随分と見事な技を習得されましたね」

感心したように口にする。

「っん?何を習得?」

類が聞き返せば

「にこやかに人を斬る技です」

この状況で、うんうん頷きながらそんな言葉を返してくる。

「ぷっ 流石牧野、俯いてた割には色々見てるんだね。
あれはさぁ、牧野が日々してることを真似しただけだよ」

白い歯を輝かせて類が笑う。

「えぇーー 私、あんな迫力ないです」

唇を尖らせ、類を睨む。

「真偽の程は如何程にだね。さっ、あとちょっとだよ」

類は牧野を抱き抱えたまま、空へと続く階段を一歩一歩登る。

類は、あと半階で屋上に着く、なんともまぁ中途半端な場所に牧野を座らせてから、その横に自分も腰掛けた。



「ねぇ牧野、あんたはいつ気づいた?」

「な、何をですか?」

「幾つかあるけど……先ずは、あんたと俺が何度も出会ってるってこと……かな」

類の問いかけに、牧野は口ごもり返事を返さない。

「俺はね、仮面パーティーで出会った日の夜に気づいたよ。

あんたと俺、何度も出会ってるんだって」


柔らかな風が吹き、二人の頬を擽る。


「二つ目はね、俺があんたを好きだってこと」

牧野が泣きそうな顔で類を見る。


「三つ目は、牧野、あんたも俺が好きだってこと」

牧野は両手で耳を塞ぎ、何かをブツブツと唱え……だした。類は牧野の両手を優しく掴み、畳み掛けるように牧野の耳元で囁く。

「ねぇ、俺と牧野が運命の相手だっていつ気がついた?」

「せ、専務は、意地悪です」

下唇をキュッと噛んだ牧野が類を睨む様に見上げる。

「いじ……わる? なんで?、意地悪?」

「だ、だ、だって、そんな甘い言葉で、私の雇用先を奪うつもりじゃないですか……」

「雇用先?奪う?」

「いやっ、それともドッキリ?
いやっ、白昼夢?」

牧野は、真顔でうんうーん言いだした。

思いがけない牧野の行動に類は、目をパチクリさせたあと……初めて会ったあの日の様に、階段に腰掛け独り言を言い続ける牧野を眺め、様々なことを思い出す。

自由で気ままで
何でも真っ直ぐで……

「変な女……」

クスリと笑いながら言葉が溢れれば

「ちょっ、専務、今、へ、変な女って仰いました?」

「あっ”」

「あっじゃないです。うら若き女性に向かって変な女って」

今度はブツブツ文句を言い始めた。

やっぱり……変な女。

でも……目が、心が、とらわれる。


「ねぇ牧野、牧野は花沢が好き?」

類の質問にブツブツ文句を言っていた牧野は、なに聞いてるんですか?とでも言いたげな表情で類の目をマジマジと見つめ


「好きに決まってるじゃないですか。ってか、逆に専務にお伺いしたいんですけど、花沢のどこに嫌いになる要素があるんですか?
それともなんですか、まさかまさかですけど、専務は花沢がお嫌いだとでも仰りたいのですか?」

「あっ、いや、そう言うことじゃなくて……花沢が好きなら、花沢に永久就職しないかなーと思ってさ」

「えっ、今なんて仰いました?」

「いやっ 永久就職しないかなって」

「それは、専務負けを認めたってことですか?」

「負け?」

「ですから……以前お会いした事があるって言う専務の勘違いですよ」


「うーーーん そうじゃなくて、永久就職だよ」


「そうじゃないの意味は分かりかねますが、永久就職に関しましては願ったり叶ったりです」

「じゃ、決定ね。牧野は一生涯、花沢にいてね」

「一生涯? そ、そ、それは退職しなくてもいいってことですか?」

「永久就職だからね」

コクンコクンと牧野が頷いた瞬間、類の瞳がキラリと光る。

「じゃ 言質はとったことだし話しを戻してと

牧野あんた、ココ受験したよね?」


「ココ? いやしてません
と言うか……ココどこですか?」


「……うーん
あっ 裏門から来たからね。少し雰囲気違うよね。ココは英徳学園

で、受験当日、ココで昼寝して面接すっぽかしたよね」


「あっ……」

「ねっ」

「……なんで専務がご存知なん……です……か?」


牧野は尻つぼみに小さくなる声で疑問を発した。


「なんでって……一緒に昼寝して起きたら怒られてたから」

「えっ?」

「えっ……て、あっ、ちなみにココ、非常階段」

「えっ」

「牧野、えって言ってばっかりだけど、俺達しっかり会ってるからね」


「か、か、髪型が違います」


「何年も前とは流石に違うよね」


「は、肌の色も、身長も体格も違います」

「肌の色? 学生の頃より外にでてるからね。体格は、あのあと伸びたし、筋肉ついたけど成長の範囲だと思うよ」

「ぅぐっ」

「参った?」

「参りま……」

「しただよね。じゃさ、俺の願い事聞いてくれるよね」

「……参りません。だって専務は、ずるいです」

牧野は大きく頭を振って、類を睨め付ける。


「ずるいって……
会ったことあるよって聞いたら、会ったことないって言い張ったのは牧野だよね」

「理詰は、反則です」

「ずるいの次は反則か……この調子で願い事言ったら、なんて言うのかな」

「せ、専務、独り言が、だだ漏れです」

「大丈夫。牧野がこれ以上アタフタあいないように、わざと声に出してるから」

類は、牧野の瞳を見つめ極上の微笑みを浮かべた。

牧野は覚悟を決めたのか、スーハーと音が出るくらいな大きな深呼吸をしたあと

「アタフタなんてしませんから、専務の願い事って言うのを発表してください」


「そう? 流石牧野! 女は度胸だね。
じゃ、遠慮なく」

類は、遠慮なくと言ったものの、その後の言葉を続けずに、牧野を見つめた。

類の視線に牧野の鼓動はドクンと跳ねる。

ドクン…ドクン…ドクン……ドクドクドクン……

慌てて牧野は目を逸らす。逸らした瞳を追うように、類の指先が牧野の頬に触れる。

指先から熱が伝わり、牧野は恋に落ちていく。いや、蓋をしていた自分の気持ちに気がついた。


初めて会ったあの日から

「……好き」


「……牧野、声が漏れてる」

「ぇっ」

「嬉しすぎる独り言だから、大歓迎だけどね」

嬉しそうに眦を下げた類が牧野を抱きしめる。

「牧野、好きだ」

言葉と共に、二人の心が重なった。



関連記事
スポンサーサイト



6 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/08/15 (Sat) 18:02 | EDIT | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/07/27 (Mon) 09:39 | EDIT | REPLY |   

asu  

名無しさま

喜んでいただけて嬉しいです
ありがとうございます

亀亀更新ですが、これからも宜しくお願いいたします

2020/06/16 (Tue) 20:54 | EDIT | REPLY |   

asu  

まりぽんさま

お久しぶりです😊

コロナ……えらいこっちゃですよね
早く終息することを願うばかりです。
お互い頑張りましょうね

っと
キラキラとくっつく筈だったのですが
もうちょい待っててねー😅

2020/06/16 (Tue) 20:51 | EDIT | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/06/09 (Tue) 12:36 | EDIT | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020/06/04 (Thu) 10:14 | EDIT | REPLY |   

Add your comment