Rival amoureux 第3話 -りおりお-
つくしの家に戻った3人。
「すぐに布団を敷くからそのままで待っててね。」
類は楓維を背負ったまま入り口で待つ。
つくしは自分のベッドの横に布団を一組敷いた。
これはたまに来る優紀の為に買った物で、来客用の寝具はこれ一組のみだ。
「じゃ、楓維君をここに降ろしてくれる?」
「ん。」
類はゆっくり楓維を布団に降ろすとそっと布団をかけた。
このまま朝まで眠って欲しいからだ。
「じゃ俺達も早めに寝ようか?」
「そうだね。」
類は持ってきて貰った荷物の中から歯ブラシを取り出すと、洗面所へ向かう。
そこには既につくしが歯磨きをしていた。
「歯磨き粉、貸して?」
類はサッと洗面台にある歯磨き粉を手に取ると、それを歯ブラシに乗せながらも心の中はウキウキが止まらない。
同じ歯磨き粉を使用するって、同棲してます!って感じで良いよな。
しかも歯磨きが終わった後の歯ブラシは……
先につくしが歯磨きを終えると、カランとコップの中に歯ブラシを入れる。
類もそれに倣い、歯磨きを終えると同じコップに歯ブラシを入れた。
これだよ!これ!!
一つのコップに二つの歯ブラシ!!
同棲してます!って感じだろ?
憧れていたんだよなぁ。
でもなかなかチャンスがなくってさぁ。
それがまさか!
楓維のおかげで達成できるなんて!!
まあ、あいつの所為で、大切な告白が出来なかったんだけどさ。
さあ、、勝負はこれからだ。
邪魔な楓維は布団で爆睡中。
残るはベッドのみ♪
これってやっぱり・・・・同じベッドで牧野と寝るんだよな。
ルン♪
洗面所から出ると、牧野が布団の横で楓維の顔を覗き込んでいる。
「何してるの?」
「可愛い顔してるよね。 椿お姉さんに似てるんだけど、この可愛さは旦那様の遺伝子かなぁ?」
類もつくしの隣に屈みこみ、楓維の寝顔をまじまじ見る。
「確かに寝顔は可愛いな。 起きている時も、あの鋭い眼光さえなければ可愛いと思うんだけど?」
「だよねぇ。 なんであんなに目つきが悪いんだろ? いつも笑っていればいいのに…」
多分、色んな重圧なんじゃないだろうか?
幼い頃から凄く期待されいろいろな物を詰め込まれてさぁ。
それらのフラストレーションもあるし、、人間不信もあるかなぁ。
まあ、道明寺家独特の遺伝子も含まれているだろうけどさ。
「あっ! 明日どこかに行こうよ!」
「どこか?」
「うん。 本当なら京都や沖縄に行く予定だったんでしょ?」
「みたいだね。」
「椿お姉さんの仕事もあるけど、それって楓維君にいろいろな物を見せて情緒を養い、いつも笑顔で過ごして欲しいって事だったんじゃないかな?」
それはどうだろ?
でもこの時期にいろいろな物を見せるのは賛成だ。
俺がそうして欲しかったと言う思いがあるから。
だ・け・ど…
それって楓維の為の一週間であって、俺の為の一週間ではない!
俺は一刻も早く牧野に告白したい。
それこそずっとこのまま牧野の家に住みたいし、あ~んな事やこ~んな事だってやりたいと思っているのに、それが全くできないじゃないか!!
つ・ま・り…
邪魔なんだよ!!
楓維が!!
「どこが良いかなぁ。 今日、類と水族館に行ったから同じ所って言うのもねぇ。 やっぱり動物園が良いかなぁ?」
ほらね。
既に牧野の頭の中には俺なんて存在していないだろ?
楓維の事だけに占められているってずるくない?
俺の予定としては、今日告白→OKを貰う→そのまま俺の家or牧野の家で愛を囁き合う→出来ればその後夢のような世界へ…
「夢のような世界?」
やべっ。
口に出てたか?
「それ良いかもね。」
へっ?
「夢の世界へ連れて行っても良いの?」
「うん。 類がそれで良いなら。」
マジ?
本気にするよ?
今すぐするよ?
でもその前に告白をさせて?
でないと、、、単にやりたいだけの男になるからさ。
「じゃ早く寝ないとね。」
「ん。」
やる気満々?
じゃなくて楓維が起きる前にやり終えないといけないしな!
「でね。 類はどっちに寝る?」
どっち?
右側、左側って事?
そんなのどっちでも良いんじゃない?
すぐに上下になるんだからさ。
「どっちでも。」
「じゃあ、ベッドを使って? あたしは楓維君と布団で寝るから。」
へっ?
楓維と布団?
なんで?
そんなアクロバティックな事、出来ないだろ?
というか楓維の存在が気になって集中できないだろ?
「ダメ! 俺と牧野がベッドで!」
「それだと狭いでしょ? 大人同士なんだから。」
「大人同士だからベッドなんだろ?」
「なんで? 狭いじゃない。 それだと寝られないじゃない。 明日、夢の世界へ行くのに。」
明日、夢の世界?
いやいや、、夢の世界は今夜行くのであって……
あれ?
もしかして俺の勘違い?
牧野の言う夢の世界は、あのネズミーランドの事?
ヤバいヤバい!!
勘違いするところだった
でも楓維と牧野が一緒に一つの布団と言うのは絶対に嫌だ!!
「5歳児を舐めたらダメだろ?」
「なんで?」
なんで?
だって寝るときは寝間着だろ?
わざとではなくとも牧野に触れることが出来る。
それこそ胸タッチは絶対だろ?
何で楓維が一番にタッチするのさ。
一番は俺って決まってるだろ?
でもこれを言うと、俺の株が下がるよな?
それだけは避けたいし。
「あのさ。 子供って動きまくるだろ?」
「確かに、小さい子供って良く動くよね。 横になるのもしょっちゅうらしいし。」
「だろ? だから俺と牧野がベッドで一緒に寝た方が良いだろ?」
良し!
上手く誤魔化せた!!
「/// それだとあたしが寝られないの///」
つくしは小さな声で呟く
それは類が聞き取れないほどの小ささで
「ん?」
「何でもない! とにかく類と一緒は嫌!」
俺と一緒は嫌……
もしかして俺って嫌われてる?
それとも、、、、楓維の方が良いとか?
どことなく司に似ているし、以前司の事が好きだったし、可愛い寝顔だし、大きくなるとイケメンになりそうだし。
「そんなに強く否定しなくても…」
シュンとする類に、つくしは慌てる。
「ごめん。 そんなつもりじゃないの。 とりあえず今日はどちらかが楓維君と一緒に寝よう? それで様子を見て明日考えよう? 凄く動き回るようなら、、その時は………ねっ?///」
その時は、俺と一緒にベッドって事だね?
よしっ、今日だけ我慢だ!!
「じゃ、俺が楓維と寝るよ。 牧野はベッドで寝な。」
「分かった。」
こうしてつくしはベッドに、類が楓維の横に寝ることになった。
そこでも類はベッドの横を死守する。
万が一にも、楓維が寝ぼけてつくしのベッドに潜り込む事があってはならない。
出来れば何かの拍子でつくしがベッドから落ち、キスというハプニングにならないかと期待しながら。
電気を消し、真っ暗になる事数十分。
類の胸に楓維の腕が当たる。
ほらねっ、、
これが牧野だったら、俺より先にタッチされるところだった。
危ない危ない。
類は楓維の腕をそっと払いのける。
そして目を瞑り5分後、今度は強烈な足蹴りが類の大事な股間にヒットする。
「痛っ!」
思わず声を漏らす類
痛っ、、痛い! 痛すぎる!!
こんな無防備な部分を蹴るなんて!!
こいつ、わざと俺の生殖機能を破壊する気じゃないだろうな?
類は乱暴に楓維の足を跳ね除け、自分の大切な股間を撫でながら楓維を見ると、ムニャムニャと口元を動かし、頬をポリポリ搔いている。
眠ってる……
それなら……
類は楓維に背を向け横になる。
すぐ隣のベッドには、つくしの手が見える。
触れるぐらいなら良いよな?
と手を伸ばしたとき、ドンッと背中に衝撃が走った。
しかも一度や二度じゃない。
ドンッドンッと、背中を何度も何度も蹴っている。
類は、ガバッと起き上がり楓維を見る。
すると体が横になり、両足がバタバタと動いている。
しかも何かをしゃべりながら。
「
こいつ、ホントに眠ってる?
わざとじゃないよな?
それにしてもどんな夢を見ている訳?
「はあ…」
類は深いため息を吐くと、楓維の体を再びまっすぐに戻し、その隣に横たわる。
少なくとも、牧野が蹴られるよりはマシだ。
それにそろそろ大人しく眠ってくれるんじゃない?
「
楓維が目を擦りながら上半身を起こし、その場でズボンを下ろし始めた。
えっ!
おしっこ?
寝ぼけてる?
大変だ!
類は楓維を抱え上げると、急いでトイレへ連れて行く。
何とか間に合った楓維の手を引き再び布団へ連れて行くと、そのままバタンッと倒れこむように眠り始める。
すっげぇ、、
でも何とか布団は死守した。
類は楓維に布団をかけながらその隣に潜ると、目を閉じる。
とりあえず寝よう。
少しでも寝ないと、明日はネズミーランドだったっけ?
あそこ凄く広くて人が多くて疲れるんだよな。
でも牧野とデートが出来るし、もし良い雰囲気になったら今度こそ告白が出来る!!
邪魔な楓維も、ネズミーランドに夢中になるかもしれない。
きっと夢中になる。
子どもが大好き夢の国なんだから!!
よしっ!
寝よう!!
類がウツラウツラとしかけたとき、再び楓維の攻撃が始まる。
その衝撃に耐えながらも必死に睡眠をとる類だった。
Rendez-vous demain...
↓おまけつきです♪
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