明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

Rival amoureux スピンオフ① -plumeria & asu-


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スピンオフ①『~Birthday Present~』




この告白はずっと先の未来で思い出してもロマンチック……だよね?
チンアナゴの前でもクラゲの前でもなく、金魚に見られながらでもない。
人混みの中でもなく、俺達の真上には光り始めた星。その星空へと続く滑走路の誘導灯……牧野の潤んだ目にも空港の灯りが映ってるみたいで凄く綺麗…だ。


「私を類の彼女にして……」

そう言った後で少し牧野が背伸びした。
もしかして、これは……って自然と俺は少しだけ前屈みになる。

夢じゃないよね?これ……ホントだよね?って短い時間にドキドキしながら期待が唇に集中……でも、その瞬間だと思った時に牧野がフイッと横に動いてほっぺたにチュ……?

えっ?!そこなの?!


しかも触れたかどうだか感じる間もなく離れてくし、離れたらすぐに両手で顔覆ってるし。

「……えへへ、恥ずかしいから」
「……くすっ、そうなんだ?」

「うん、だって人が見てるかもだし」


……って事は見えてなきゃ良いんだね?うん、よく判ったよ、牧野。
それじゃあって事で俺の頭の中にはムクムクとこの後の事が……そして真っ赤になってる牧野の肩を抱き、展望デッキから駐車場に向かった。
少しだけ落ち着いた牧野がチラッと俺を見上げる…その顔が可愛くて堪んないんだけど。


「それにしても類、まさかここまでキャンピングカーで来るとは思わなかったよ」
「あぁ、楓維のリクエストだよ。あのキャンプが楽しかったらしくて、どうしてももう1回乗りたいって言うから」

「そうなの?でも楓維君、助手席で椿さんの事ばっかり話してなかった?やっぱり5歳だからママが恋しいんだな~って思ってみてたんだけど」
「そうだった?ただあの車に乗りたかったのかもね。ほら、子供ってやたら大きなものに惹かれるとはあるでしょ?」

「類、子供の事が判るの?どっちかって言うと苦手だと思ってたのに」


……うん、正解。
確かに子供の考えてる事なんて判んないし、正直すこし苦手だよ。

でもまぁ、楓維は特別だったけどね……。
あいつは5歳児だけど、もう少しで本気のライバルになるかと思ったし。それにあの顔だから余計に負ける訳にはいかなかった…最後には友達になれたけど。
で、もっと特別だと思えるのは自分の子供でしょ?勿論誰が産んでくれるのかってのは決まってるけど。

そして産むためにはね…あそこへのキスじゃダメなんだよ、牧野。
それを今から教えてあげるね。

クスクス…この車は少しだけ期待込めて乗ってきただけ。まさかホントに役に立つとは思わなかったけど。


「さ、乗って。牧野の好きなところに連れてってあげる」
「えっ、今から?でももう夜だし…」

「俺の誕生日がもうすぐ終わるだろ?その最後の時間まで一緒に過ごしてくれない?」
「……あ、そう言う事?」

「…ん、そう言う事。だって彼女…なんでしょ?」
「………そ、そうだね♡じゃあ…夜桜の綺麗な場所…かな?」

「夜桜ね…了解」


うとうととしかけては一生懸命に目を開け

「っん、テールランプ綺麗だ……ね……
なんか、深海魚が出てきそうだよね」


一言二言話しては、睡魔に引っ張られ目を閉じて……小首を振りながら目を開け


「……あっ 、そう言えば……最後に楓維君が類と約束したよって言ってたけど、なんの約束だったの?」


「うーん……みら……

それより、着いたら起こすからしっかり寝てな」

「ううん、眠くないか……ら……大丈夫……ぶ」

いつものように……気遣いと眠たさで戦ってる牧野の姿が視界の片端に入ってくる。半目の顔は中々凄くて、お世辞にも可愛いなんて言えない。でも……身体の奥底から牧野に対する愛おしさが込み上げてきて

「幸せ…だな」

陳腐な台詞が口を衝いてでて、思わず笑いが溢れた。


「ぅーーんっ るぅいー なぁに?」

「俺のお姫さんは、変顔しててもすごく可愛いなって」

「なっ 変顔って
もぉ 褒めてるのか貶してるのかわかんないじゃん」

可愛いの言葉に照れたのか、牧野は頬を膨らませる。

「ねぇ牧野、その膨れっ面もすごく可愛いよ」

「もぉ 類っ からかわないっ」


ねぇ牧野、からかってなんていないよ。俺は至って真面目に言ってるよ。

ねぇ牧野、俺がどれだけ牧野を好きかって知ってる? 

ねぇ牧野、俺、牧野の笑い顔が一番好きだけど、照れる顔も、怒る顔も、いじける顔も、真面目な顔も、泣き顔もあんたが見せる、全部全部……全部が愛おしいんだ。

車の振動が再び牧野を眠りへと誘う。羽田から3時間ほど車を走らせれば伊豆高原の駅が見えてくる。駅を過ぎた辺りで牧野に声をかけ起こす。夢うつつの牧野の前に桜のアーチが広がる。

「うわっ」

夢から覚めた牧野は、どこまでも続きそうな桜並木を楽しんで見ている。俺はそんな牧野を楽しんでいる。

幸せだな。何度目かの幸福を噛み締めながらしばらく車を走らせれば、目的の場所に到着する。

「着いたよ」

目の前には、満開の花を咲かせる2本のエドヒガンザクラ。

はらはらと花びらが空を舞う。牧野は言葉も発せずに舞う花びらを見つめている。その様は、妖しいほどに美しくて、瞬きをする合間に消えてしまいそうで

「牧野っ」

手を伸ばし抱きしめた。すっぽりと俺の手の中に収まる牧野が愛おしくて、彼女を抱きしめ続けることが出来るいまに感謝した。

「類」

牧野の大きな瞳が真っ直ぐに、俺を、俺だけを見つめている。

「牧野 愛してる」

「あたしも類を愛してる」

どちらからとなく触れ合う唇。牧野の薄く開いた唇から舌を絡めとる。痺れるような甘い口付けに甘美という名の意味を知る。


時間よ止まれ。本気でそれを願った後に……いいや、時間よ進めと願い直した。

だってそうだろう?
これからは、2人で一緒に歩むんだから。



🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸


「今年も綺麗に咲いたね」

「そうか? 今年はいまいちじゃないか?」

つくしは俺の答えに呆れたとばかりに

「ほんと往生際が悪い」

両手を上げる。

「往生際も悪くなるよ」

「プッ もう拗ねないの
どの男に娘をやるより安心でしょうが。それに、男と男の約束したんでしょ?」

ぐうの音も出ないとは、こんな時に使うんだろうと思い知る。あぁあ あの時、安易にあんな約束をするんじゃなかった。後悔先に立たずとは、正しくこのことだ。

あの日から25回目の誕生日。もうじき娘が未来の婿を連れてやって来る。

その男の名は、道明寺楓維と言う。





Rendez-vous demain...


↓おまけつきです♪
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