Rival amoureux スピンオフ④ -GPS-
牧野と星空を眺めて語り合って……これって凄くロマンチックなんじゃない?
今告ればきっと一生の思い出…しかも美的センス抜群!と思った時だった。
「じゃあそろそろ寝よっか?」
「……寝ちゃう?」
「ふあぁ~~、うん、眠くなっちゃった……」
「………………」
司の甥っ子、楓維を連れてきたオートキャンプ……やっぱり5歳児は早々と夢の世界に行ってしまった。
そこから始まる2人の時間、それが目的だったのに牧野まで「眠たい」なんて目を擦り始めた。
途端、さっきの夢がガラガラと崩れてく……
ーオトナはまだこれからでしょ?ー
なんて呟く俺……それを無視して「楓維くんのところに行く~」…だって。
やれやれ、仕方ない……って俺も腰を上げた。
俺のキャンピングカーはベッドが2つ。
楓維には落下防止用の柵でもしておけば問題無い。どうせ爆睡してるんだから居ないものと思えばいい。
それなら今度はここで語り合って、甘い空気に変えていけば……だからどうにかしてその状況になるように仕向けたかったのに、牧野は当たり前みたいに楓維を寝かせたベッドに……。
「………………牧野、そこなの?」
「ん?普通そうじゃない?」
「………………すぅ」←楓維
「そうなの……かな」
「だって楓維くん1人だと可哀想じゃない……ふあぁ~、類も早く寝たら?」
「………………すぅ」
どうして牧野が楓維を抱き締めて寝るかな💢!!
密着する相手が違うんじゃないの?💢💢
と叫ぶことも出来ずにベッドに寝転んだら2人に背中を向けた。
だって見たくないし!!
ヴォ~~~~ヴォ~~~~……
「……ねぇ、類……起きて?」
ヴォ~~~~ヴォ~~~~……
「……類ったら、起きてよ……ねぇ」
「…………ん?どうしたの……」
どのくらい寝ただろう……暫くしたら身体を揺すぶられて、薄く目を開けたら牧野が俺のベッドに乗っかってた。
あぁ、なんだ……やっぱり俺の方が良かったんじゃん♪って嬉しくなって両手をだしたら、今度はそれをグイッ!と引っ張られた?!
……いきなり座ってヤるの?なんて寝惚けて牧野を抱っこしようとしたら、今度はベッドから降ろされた?!
「……なに?牧野……真夜中だよ?」
「何か聞こえるの。なんだと思う?」
「どんな声が……」
「牛みたいなの。ねぇ、類…この辺には野良牛がいるのかしら」
「…………野良牛?」
野良犬、野良猫、野良牛……いやいや、聞いたことないけど?ってキャンピングカーのドアを開けたら……
ヴォ~~~~ヴォ~~~~……
ヴォ~ヴォ~~~~……
ヴォ~、ヴォ~、ヴォ~、ヴォ~……
…確かに牛の声みたいなのが聞えた。
しかもかなり近いし、1頭じゃない。そいつはどうやら近くの池の辺りから聞えてくる……ちょっとマジで不気味だった。
牧野はその声に答えるみたいに「モォ~~!!」とか言うし、俺は慌てて牧野の口を手で塞いだ!
「ダメじゃん!はっきり判らないのに呼ぶようなマネしちゃ!」
「あはは!だってあんなに鳴くんだもん~」
「随分近いみたいだけど、何かあったらヤバいから移動する?」
「え~?牛さん見ないの?」
「……そんなに見たいなら昼間に牧場に連れて行くから……」
「
…ほら!楓維まで起きちゃったじゃん!
「…どうし…たの?」
おそらく半分寝惚けてるのだろう、
目を擦りながらモゾモゾと起きて来た楓維は、本来の5歳児らしくて…可愛いく見えるから不思議だ…
ヴォ~~~~ヴォ~~~~……
「ぁ、ウシガエルだ」
「「は?」」
「うん、ウシガエル♪」
「ウシ?」
「カエル?」
「ウシガエル、間違いないよ?僕 知ってるもん♪」
ほら♪と言って荷物の中から取り出したのはタブレット。
その中の生物図鑑を開いて見せてくれた。
「カエルなんだぁ~でも、カエルの時期には早くない?冬眠中じゃないの?」
「ここは、暖かいからじゃないかな?」
まぁ、この時期にしては暖かい場所を選んだんだけどさ…寒かったらヤダし…
「楓維くん、本当に詳しいのね~」
「僕、動物好きなんだぁ~」
「凄いねぇ~」
いやいや、感心する処じゃないよね?そこ。
キャンピングカーの周りにカエルだよ?
しかも、スッゴい声で鳴くヤツ。
「僕、見てみたいっ♪」
「「は?」」
「本物のウシガエル見たいっ!図鑑の動画じゃないつまんないし♪」
「「………………」」
***
………何で…何で夜中にカエル探して歩き回らなくちゃならないのさ…
人の足音1つで鳴き止むウシガエルを懐中電灯を握りしめて…探すってさ…
ヴォ~~~~ヴォ~~~~……
カサッ
しぃーーーーん
ヴォ~~~~ヴォ~~~~……
カサッ カサッ
しぃーーーーん
………💢💢
ヴォ~~~~ヴォ~~~~……
「あっ!あれかな?」
「ん?どこ?」
「ほら、あそこ」
「えぇ~本当ぉ~?」
池の向こう側に懐中電灯の灯りを反射する複数の光。
1匹、2匹……結構、居るんだ……
つーか 楓維!!牧野に近過ぎだろ💢
「えぇ~判んないよぉ、どこ?」
「ほら、あそこだって」
……くそっ!離れろっ!5歳児!
ちらっと視線を寄越して、鼻で嗤われた気がした。
…………💢💢💢
ウシガエルを探して小一時間、歩いて歩いて池の向こう側の光は見付けても、
その姿を見る事は出来ない。
「あのさ…もう夜中だし寝よう?カエル探しは明るくなってからにしよ」
「えぇーーまだ 探したいぃ」
「楓維くん、もう遅いから…ね、また明日探そ?」
「はーーーい」
………コイツ…牧野への返事は最高だよね💢
***
チュンチュン♪
チュンチュン♪
……朝だ…
はぁ~完全に寝不足だ……身体が重い、瞼も重い…
夜中のカエル探しと寝てからの大合唱、
………あぁ……まだ、耳元で鳴いてる気がする。
隣のベッドでは牧野がモゾモゾ…
……まだ、夢の中か……な?
「あれ?」
「ん?どした?」
「楓維くんが居ないっ!!」
「えっ?」
「つくしぃ~♪♪」
牧野は外から聞こえた声に慌てて飛び起きドアを開けると……
「つくし、おはよう♪見てっ!」
「楓維くん、どこに行ってたのっ!心配…うわぁーーーーーっ💦💦」
「牧野っ!!」
「自然教室のお兄さんと一緒に探して来た♪」
「「……………」」
元気一杯な楓維の手にはアクリルゲージに入れられたウシガエル。
そう言えば……管理棟の隣に『自然教室』の看板があったな……と、到着時の記憶を辿る。
その間も、楓維はそのウシガエルを上から下から横から、嬉し気に牧野に見せている。
一方の牧野は……一定の距離を保ちつつ引きつりぎみの笑顔で対応。
……うん、判るよ…デカ過ぎだよね…
「ねっ♪可愛いよね?」
「んーーーー」
「ほら、大きいでしょ♪オスだって!お兄さんが教えてくれたんだ♪」
「そ、そうなんだ…」
楓維は牧野の反応などお構い無し!
ウシガエルの可愛いさを力説。
「か、楓維くん……」
「うん?何?」
「観察したら、お兄さんと池に放してあげよう…ね?」
「えぇーーーやっと捕まえたんだよ?つくしに見せようと思ったんだ…」
急にションボリした楓維の様子に、牧野の肩がガックリ下がる。
…ぷっ…5歳児の説得に失敗したっぽいw
いやいや、笑ってる場合じゃない!
こんなデカいカエル、連れて帰るとか飼うとか言わないよね?
牧野は…ダメっぽいし……えっ!家に?
……都心の住宅地にウシガエル…冗談じゃないぞっ!
ご近所さんに騒音で訴えられちゃうじゃん!
「あっ!そうだっ!!」
「ど、どうしたの?楓維くん」
「僕、連れて帰って飼うっ!!!」
「「はぁーーーーっ!!!」」
おしまい🐸
↓おまけつきです♪
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