まだ気づかない15 類つく
「あぁーーーーー」
たわわになる葡萄を見つめながら、雪之丞は呟いた。早くくっついちゃえばいいと思ったのも、類に発破をかけたのも自分だ。それでも____類から貰った電話の後、何度も何度もため息をついた。覚悟してたとは言え
「結構、キツイよね あぁーーーーあ」
そんな雪之丞のボヤキを知らない牧野は、真っ赤な顔をしたまま車を降りて、勝手知ったる我が家の如く、雪之丞のもとに向かって歩き出す。類は、そのあとを_____あれ???
「あれっ? ここって」
類が前に泊まったフィレンツェの丘の宿がここから見えるのだ。類は、それを確かめるために、牧野が進んだ道と直角に道を進んだ。
「雪ちゃ-――――ん 雪ちゃん、雪ちゃん 会いたかった」
イノシシのように、牧野が雪之丞目掛けて飛び込んでくる。雪之丞は、牧野を抱きとめながら
「うん。つくしちゃん。俺も会いたかったよ」
本当に本当に会いたかったよ。君は相変わらず可愛いね。もう少しだけもう少しだけ抱きしめていたい。そう願いながらも、雪之丞は、牧野を近くのベンチに座らせた。
「あのね、あのね、雪ちゃん大変なの。本当に本当に大変なの」
「うん。大変なんだねつくしちゃん」
「うん。本当に本当に大変なの。それなのに、専務ったら専務ったら意地悪して雪ちゃんに会わせないようにしたんだよ。なのにね、突然、突然ここに来ようって。もうさぁ、本当にあの人ばっかりは、何考えてんだかだよね。いつもさ昼寝ばっかりしてる癖して、仕事は出来るし。語学は堪能だし、本当に本当に」
「うん。つくしちゃん、落ち着いて」
「うん。雪ちゃんありがとう。雪ちゃんも、仕事出来るし、語学堪能だもんね。あっ、でもさ、雪ちゃんは昼寝しないもんね。あぁ、だからね、だから、私、雪ちゃんに会いたかったの。あのね、あのね_____うんと、あのね」
「うん。色々分かったから、取り合えず落ち着いて。はいコレ飲んで」
雪之丞の言葉に、牧野はコクンコクンと頷いてから、雪之丞から渡されたサングリアを口にした。
「はぁっーー 美味しい。これジェシカさんのサングリアだよね。相変わらず美味しいね」
「うん。類さんから二人で来るって電話貰ったからさ。つくしちゃんと久しぶりにサングリア飲みたいなって思ってさ」
「うふふ。ジェシカさんのサングリア美味しいもんね」
「うん。落ち着いた?」
「うん。落ち着いてきた」
「で、何があったの?」
「あのね、専務が私の事を、好きだって言うの」
「そっか。______で?」
雪之丞はコテンと首を傾げる。
「で?って、雪ちゃん、ちょっと冷たい」
「っん? だって、つくしちゃんの気持ち聞いてからじゃないと、俺何にも答えられないでしょ」
「あぁ。うん。って、私の気持ち?私の気持ちって」
雪之丞に問われて、牧野の顔は真っ赤に染め上がる。
「うん。つくしちゃんの気持ち」
本当は、その真っ赤な顔が答えだよね。でもさ、最後に少しだけ意地悪させてよ。そんな思いを乗せた雪之丞の瞳が真っ直ぐに真っ直ぐにつくしを見つめる。牧野は雪之丞の瞳を真っ直ぐに見返しながら
「私_____専務が」
「うん。専務が?」
「_____好き」
「そっか。じゃぁさ 俺の事は?」
「うんっ? 雪ちゃん 雪ちゃんの事は、勿論好きだよ」
「で、類さんへの好きなと、俺への好きは同じ?」
雪之丞の言葉に牧野は首を振る。
「うん。それがつくしちゃんの類さんへの答えでしょ。だからさ、つくしちゃんと類さんは両想いってやつで、幸せいっぱいってことだよ」
「でも____」
「でもじゃないよ。つくしちゃんの初恋って、類さんでしょ?」
「_____えっ?なんで____」
雪ちゃん、私に内緒にしてたけど実はエスパー?
「あははっ、実もなにも俺、エスパー」
「えっ、ホント?」
「うんっ。つくしちゃん限定だけどね」
「えっ、じゃ私のこと何でもわかっちゃうのって、だからなの?」
そんなことあるわけないじゃんと、雪之丞が突っ込もうとした瞬間
「牧野、あんた、馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、本当に馬鹿だよね。雪之丞がエスパーなわけないよね。それに、もし、もし、雪之丞がエスパーだとしても、あんた専用のエスパーなんて都合のいいことあるわけないよね」
「そ、そんなのわかんないじゃないですか_____それより、馬鹿って、専務は私の事、ずっと馬鹿だと思ってたんですか? 随分と失礼ですよね。それにですよ。雪ちゃんがエスパーじゃないって、なんで専務が言い切れるんですか? 雪ちゃんがエスパーだったら、専務、これからずーーーーーっとお昼寝禁止ですからね」
「あぁ、いいよ。じゃ、雪之丞がエスパーじゃなかったら、牧野、あんたの昼寝なしね」
「うっ” それ横暴です」
「コレが横暴なら、牧野、あんたも横暴だよね」
延々と続きそうな二人のやり取りを止めたのは、雪之丞の大きな大きなため息。
「はぁっーーーーーー 本当に、二人ってどうでもいい事で喧嘩するよね?ってさ、二人って両想いなんでしょ? で、それを類さんは報告に来て、つくしちゃんはこれ幸いと相談しようと思ったんでしょ。
先ずは、類さん、報告ありがとう。本当に類さんは律儀だよね。あっ、挙式の時はさ、ぜひともグルームズマンやらせてね。
で、つくしちゃん。初恋成就おめでとう。ずっと君を見てきたから、心から嬉しいよ。だからね、二人で幸せになりな。
あっ、少しだけアドバイス。俺がつくしちゃんの事、色々解ってたのは、下心満々だったから。
初恋成就で幸せな花嫁さんになるつくしちゃんに、下心満々で接したら、類さんに殺されちゃうから、もうつくしちゃんのエスパーにはなれないから、悩み事が出来たら、類さんに真っ先に相談するんだよ。ね。分かった? 約束だよ。
はいっ。解決! で、二人が来た早々申し訳ないんだけど、俺、ちょっといま忙しいんだよね。折角来てくれたのにごめんね。ジェシカには伝えてあるからさ、二人はゆっくりしてってよ。ねっ」
そう言い残して雪之丞は去っていった。類は、「ありがとう」と雪之丞の後ろ姿に言い、牧野は黙ったまま雪之丞を見送った。
雪之丞の後ろ姿が見えなくなっても、長い長い時間。牧野はその姿を思うかのように見送った。

雪ちゃんに幸あれ!
たわわになる葡萄を見つめながら、雪之丞は呟いた。早くくっついちゃえばいいと思ったのも、類に発破をかけたのも自分だ。それでも____類から貰った電話の後、何度も何度もため息をついた。覚悟してたとは言え
「結構、キツイよね あぁーーーーあ」
そんな雪之丞のボヤキを知らない牧野は、真っ赤な顔をしたまま車を降りて、勝手知ったる我が家の如く、雪之丞のもとに向かって歩き出す。類は、そのあとを_____あれ???
「あれっ? ここって」
類が前に泊まったフィレンツェの丘の宿がここから見えるのだ。類は、それを確かめるために、牧野が進んだ道と直角に道を進んだ。
「雪ちゃ-――――ん 雪ちゃん、雪ちゃん 会いたかった」
イノシシのように、牧野が雪之丞目掛けて飛び込んでくる。雪之丞は、牧野を抱きとめながら
「うん。つくしちゃん。俺も会いたかったよ」
本当に本当に会いたかったよ。君は相変わらず可愛いね。もう少しだけもう少しだけ抱きしめていたい。そう願いながらも、雪之丞は、牧野を近くのベンチに座らせた。
「あのね、あのね、雪ちゃん大変なの。本当に本当に大変なの」
「うん。大変なんだねつくしちゃん」
「うん。本当に本当に大変なの。それなのに、専務ったら専務ったら意地悪して雪ちゃんに会わせないようにしたんだよ。なのにね、突然、突然ここに来ようって。もうさぁ、本当にあの人ばっかりは、何考えてんだかだよね。いつもさ昼寝ばっかりしてる癖して、仕事は出来るし。語学は堪能だし、本当に本当に」
「うん。つくしちゃん、落ち着いて」
「うん。雪ちゃんありがとう。雪ちゃんも、仕事出来るし、語学堪能だもんね。あっ、でもさ、雪ちゃんは昼寝しないもんね。あぁ、だからね、だから、私、雪ちゃんに会いたかったの。あのね、あのね_____うんと、あのね」
「うん。色々分かったから、取り合えず落ち着いて。はいコレ飲んで」
雪之丞の言葉に、牧野はコクンコクンと頷いてから、雪之丞から渡されたサングリアを口にした。
「はぁっーー 美味しい。これジェシカさんのサングリアだよね。相変わらず美味しいね」
「うん。類さんから二人で来るって電話貰ったからさ。つくしちゃんと久しぶりにサングリア飲みたいなって思ってさ」
「うふふ。ジェシカさんのサングリア美味しいもんね」
「うん。落ち着いた?」
「うん。落ち着いてきた」
「で、何があったの?」
「あのね、専務が私の事を、好きだって言うの」
「そっか。______で?」
雪之丞はコテンと首を傾げる。
「で?って、雪ちゃん、ちょっと冷たい」
「っん? だって、つくしちゃんの気持ち聞いてからじゃないと、俺何にも答えられないでしょ」
「あぁ。うん。って、私の気持ち?私の気持ちって」
雪之丞に問われて、牧野の顔は真っ赤に染め上がる。
「うん。つくしちゃんの気持ち」
本当は、その真っ赤な顔が答えだよね。でもさ、最後に少しだけ意地悪させてよ。そんな思いを乗せた雪之丞の瞳が真っ直ぐに真っ直ぐにつくしを見つめる。牧野は雪之丞の瞳を真っ直ぐに見返しながら
「私_____専務が」
「うん。専務が?」
「_____好き」
「そっか。じゃぁさ 俺の事は?」
「うんっ? 雪ちゃん 雪ちゃんの事は、勿論好きだよ」
「で、類さんへの好きなと、俺への好きは同じ?」
雪之丞の言葉に牧野は首を振る。
「うん。それがつくしちゃんの類さんへの答えでしょ。だからさ、つくしちゃんと類さんは両想いってやつで、幸せいっぱいってことだよ」
「でも____」
「でもじゃないよ。つくしちゃんの初恋って、類さんでしょ?」
「_____えっ?なんで____」
雪ちゃん、私に内緒にしてたけど実はエスパー?
「あははっ、実もなにも俺、エスパー」
「えっ、ホント?」
「うんっ。つくしちゃん限定だけどね」
「えっ、じゃ私のこと何でもわかっちゃうのって、だからなの?」
そんなことあるわけないじゃんと、雪之丞が突っ込もうとした瞬間
「牧野、あんた、馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、本当に馬鹿だよね。雪之丞がエスパーなわけないよね。それに、もし、もし、雪之丞がエスパーだとしても、あんた専用のエスパーなんて都合のいいことあるわけないよね」
「そ、そんなのわかんないじゃないですか_____それより、馬鹿って、専務は私の事、ずっと馬鹿だと思ってたんですか? 随分と失礼ですよね。それにですよ。雪ちゃんがエスパーじゃないって、なんで専務が言い切れるんですか? 雪ちゃんがエスパーだったら、専務、これからずーーーーーっとお昼寝禁止ですからね」
「あぁ、いいよ。じゃ、雪之丞がエスパーじゃなかったら、牧野、あんたの昼寝なしね」
「うっ” それ横暴です」
「コレが横暴なら、牧野、あんたも横暴だよね」
延々と続きそうな二人のやり取りを止めたのは、雪之丞の大きな大きなため息。
「はぁっーーーーーー 本当に、二人ってどうでもいい事で喧嘩するよね?ってさ、二人って両想いなんでしょ? で、それを類さんは報告に来て、つくしちゃんはこれ幸いと相談しようと思ったんでしょ。
先ずは、類さん、報告ありがとう。本当に類さんは律儀だよね。あっ、挙式の時はさ、ぜひともグルームズマンやらせてね。
で、つくしちゃん。初恋成就おめでとう。ずっと君を見てきたから、心から嬉しいよ。だからね、二人で幸せになりな。
あっ、少しだけアドバイス。俺がつくしちゃんの事、色々解ってたのは、下心満々だったから。
初恋成就で幸せな花嫁さんになるつくしちゃんに、下心満々で接したら、類さんに殺されちゃうから、もうつくしちゃんのエスパーにはなれないから、悩み事が出来たら、類さんに真っ先に相談するんだよ。ね。分かった? 約束だよ。
はいっ。解決! で、二人が来た早々申し訳ないんだけど、俺、ちょっといま忙しいんだよね。折角来てくれたのにごめんね。ジェシカには伝えてあるからさ、二人はゆっくりしてってよ。ねっ」
そう言い残して雪之丞は去っていった。類は、「ありがとう」と雪之丞の後ろ姿に言い、牧野は黙ったまま雪之丞を見送った。
雪之丞の後ろ姿が見えなくなっても、長い長い時間。牧野はその姿を思うかのように見送った。
雪ちゃんに幸あれ!
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