明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

恋と呼ぶには深すぎて 第一話

そうたん2022

古びた喫茶店の一角で、唇の形をへの字に曲げながら

「はぁっーーーー」

つくしは、大きな大きな溜め息を吐いた。

それを受け流すかのように、目の前の男は長い足を組み替えながら、珈琲を啜った。

「はぁっーーー」

気がつけよとばかりのこれ見よがしの大きな溜め息に……手元のカップをソーサーに戻した男が口を開く。

「ってか、おまえ 溜め息一つ吐くと幸せが一つ逃げるって言ってなかったか?」

唇の端を歪めた男が言えば


「はぁっーーー
こんな時くらい、溜め息吐かせてよ。本当にもうさ、かれこれ何年らいの付き合いだってぇーのよ」

「はい、はい。 
で、その大きな溜め息の原因とやらは何だよ?
ついこないだまで、あたし、人生を!恋を!謳歌してます!って得意げに言ってなかったか?」

「はぁっーー ジンセイヲオウカ? コイヲオウカ? 何それ美味しいお菓子の名前ですか? 

はぁっーあのさ なんでさぁ浮気すんの?」

「はっ? 浮気? いやっ、俺は女遊びはしても浮気はしねぇぞ」

「あっ いや 西門さんじゃなくてさ。 って、まぁ西門さんのそれもそれでどうかとは思うけどさ……じゃなくて一般論的みたいな?」

「もしかして……人生謳歌のお相手が浮気って奴か?」

総二郎の言葉に

「な、な、なんでわかったの?」

大きな目を更に大きくさせながら、つくしは総二郎の顔をまじまじと見る。総二郎は唇の端にほんの少しの笑みを浮かばせながら


「なんでって、お前の大きな溜め息と話の流れで百人中百人が分かるんじゃねぇの。
に、してもだ。お前、ほんと男見る目ねぇのな」

総二郎の言葉に、つくしは力無く笑みを浮かべ

「本当よね」

そう呟き項垂れた。


つくしの黒髪がサラサラと揺れる。その揺れる黒髪に吸い寄せられたかのように、総二郎の指がつくしの髪を一房掬い上げた。

項垂れていたつくしの顔が上を向く。掬い上げた髪の毛が指先から溢れていく。溢れた髪の毛を惜しむように指先が空を掴んだ。


「髪、伸びたな……」


「えっ、今それ?

もうホント、慰め下手だよね。
もうちょっとさ、気の利いたこと言えないかなー
もうじき30の誕生日でしょ。こうグッと来る慰めの言葉っていうのが出ないもんかね」

「いやっ 牧野ちょっと待て……3ヶ月前俺が落ち込んでた時に、人生謳歌中のお前なんて言った」

「うっ」

「福善禍淫ってやつだな」

「何それ。また面倒くさい言葉でけむに巻くつもりでしょ。
あっ、思い出した!その時、私が一杯奢ったんだった。うふふっ じゃ今日は西門さんの奢りだね。
コレも福善禍淫ってヤツでしょ

さぁて、西門、管巻くから覚悟しろ!」

つくしの人差し指が真っ直ぐに総二郎を指す。総二郎は呆れたように両手を上げながらも瞳の奥に優しさを滲ませつくしを見ながら

「はいはい。お嬢様了解致しました。でプランは何になさいますか?」

いつもの流れが始まれば、気難しいと有名な喫茶店のマスターの片頬が僅かに上がり、カシャカシャと卵を混ぜる音がする。

2人は、あーだーこうだの末に


「うーーーん 先ずは 
「「オムライス」」

いつものメニューを注文する。

「あいよ」

マスターの声と共に、まんまるお月様のようなオムライスがテーブルの上に置かれた。

2人は、顔を見合わせニコリと笑って仲睦まじくオムライスを食べ始めた。

マスターは、その様子を眺めながら『とっととくっつきゃいいのにねー』とばかりに小さな小さなため息を溢した。



つづきは 
河杜花さま

恋と呼ぶには深すぎて第二話 12月1日15:00~



柳緑花紅





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
ありがとうございます


関連記事
スポンサーサイト



3 Comments

asu  

パールさま

ジレジレ二人をどうぞお楽しみあれ

ってね、今回は総ちゃんず頑張ったんだよーー

2022/12/03 (Sat) 11:14 | EDIT | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2022/12/02 (Fri) 23:56 | EDIT | REPLY |   

asu  

ミキッpさま

ありがとうございます♪
お仕事お疲れ様です

マスターの思惑通り
二人はくっつくのか否か?
ヘタレの2人故、なんと今回のリレー12話ですw

2022/12/02 (Fri) 06:11 | EDIT | REPLY |   

Add your comment