ちび ラジオ体操 総つく
耳を澄まさないと解らない、小さい電子音が何度も何度も聞こえる‥…
何度目かの電子音の後、大きな大きな溜め息
「ハァッーアッー」
「志摩、この体温計壊れてるよ。」
「櫂様、残念な事にこの体温計は壊れてはおりません。」
「でもでも、何度計っても38度だよ。」
「えぇ、ですから何度もお伝えしております様に、櫂様にはお熱がおありなんですよ。」
「志摩、母様を呼んで‥…」
「櫂様、大変申し訳ございませんが、つくし様は家本の名代でお出かけでございます。」
「父様‥…うーん父様には駄目、駄目だ。」
「ねぇ、志摩お婆様は?」
「家元夫人でいらっしゃいますか?」
「うん。そろそろお帰りだよね?」
「はいっ。」
志摩は、大切な大切な櫂坊ちゃんの為に小走りになる。こんな所を菫お嬢ちゃまに見られたら大変とばかりに、辺りを見回し誰もいないのを確かめると、長い廊下を走る。
大野君と遊んでいたすぅちゃんが、ニンマリ笑って
「すぅちゃん。いいものみっけたぁ♪」
なんて、言っているのを志摩は気付かない‥…
「す、すみません、家元夫人‥櫂様が‥‥」
「なにかあったのですか?」
「いえ、先と同じ状況でございますが、家元夫人を呼んで欲しいと」
「櫂がですか?それは大事ではないですか‥」
弟子に明後日の用意を任せ
「私、ちょっと櫂の所に参りますので用がありましたら呼びに来て頂戴」
そう言い捨てと、志摩と共に櫂の部屋へ向う。
2人辺りを見回し、誰もいないのを確認すると目を見合わせ、二人同時に長い廊下を走る。
「おおのくん」
「菫さま何でしょうか?」
「すぅちゃん、いいのみっけたの。」
すぅちゃんが、嬉しそうに嬉しそうにニンマリと微笑む
ガラッ
息せき切って駆けつけた家元夫人、普段の冷静沈着ぶりはどこへやら‥…
「櫂、櫂どうしたのですか?」
「お婆様お願いがあるのですが‥…」
熱も手伝ってか、切れ長の美しい瞳を潤ませ家元夫人の耳元で何やらゴニョゴニョと話し出す。
眉を顰めながらも、可愛い可愛い櫂の頼みとあっては、無下に断る事も出来ず了承する。
チロンッと志摩を見る。櫂も心得たもので
「志摩、志摩も一緒にお願い出来るよね?」
憂いを含んだ櫂坊ちゃんの頼みを誰が無下に出来ようか?とばかりに、大きく頷く志摩。
「では、あと3時間ほどで終わらせてしまいますので、櫂は一眠りしてて下さいね。」
ほっと安堵し、櫂は眠りにつく。 眠りについた櫂の布団をかけ直し、頭を一撫でし志摩が部屋を出る。
静寂の中の、櫂の規則正しい寝息だけが聞こえる。
***
夜の帳が落ちた頃、人払いを徹底した櫂の部屋に、揃いの衣装を身に纏った3人が集結する。
空調の温度を最大限にして、
タァンタァターンタン ターン、ター ンッタタッタッタッタ. ターン、ターンッタタッタッタッタ. タッタッタッタッタッタッタッタ. タッタッタッタッタ、タラララーン.
ラジオ体操の曲が軽快に流れる中、真面目な顔して踊る3人‥…
飛び散る汗、汗,汗 水分補給をし、また踊る 真剣な面持ちで‥…
タァンタァターンタン ターン、ター ンッタタッタッタッタ. ターン、ターンッタタッタッタッタ. タッタッタッタッタッタッタッタ. タッタッタッタッタ、タラララーン.
「ふぅっ〜 沢山汗をかきましたね。ではお着替えなさってもう一度眠りなさい」
タオルで汗を拭き、一通り着替えた後に再び眠りに入る。
一仕事終えた家元夫人と志摩は、誰にも見つからないように部屋に戻る。
光る、4つの瞳‥…
見つめ合い、笑い合う2人。
「ととさま、おばあちゃまとシマしゃん タンタカタンしてたね♡」
「あぁーすげぇ真剣だったな。あっ菫、この事は他の人には言っちゃ駄目だぞ。今日の事は父様と2人だけの秘密だかんな。」
「うん。わぁーった。ととさまとナイショ。ナイショね。」
「ただいま〜」つくしの声がする。
「あっ、かかさまだ〜 かかさま〜」
「櫂の具合はどう?」
「あぁ、今寝てるぞ。」
じゃぁ少し見てくるねと言いながら、櫂の部屋に向ったつくし。
「あんねあんね、かかさま かかさま きょうね シマしゃん おろうかをね タッタタってはしったんだよぉー」
菫の話しに頷きながら、櫂の部屋から出て来たつくしが
「すっかりお熱下がってるみたい。あんなに高かったのに。不思議よね〜」
菫と2人で目を合わせ、
「母様にだけおしえちゃおうか?」
「かかさまにはおしえちゃう」
笑いながら、俺達の今見た事を教えた。
肩を震わせ、可笑しそうにつくしが笑う
「見たかったぁ〜 どんな顔して踊ってたの?いやぁん気になるわぁー。でもさぁ、あのお二人も櫂には弱いわよね〜」
翌朝、起きて来た櫂は熱もすっかり下がり元気溌溂だ。
「父様、明日の初釜‥…これでしっかり出れますので、どうぞお願い致します。」
あぁー そうか、コイツはそういう奴だ。3が日が終わると一斉に行われる、西門の大切な初釜。コイツはそれに出る為にあんなに一生懸命だったんだ。
隣にいるつくしなんて、もう涙でウルウルしてやがる。
「あぁ、宜しく頼むな。」
頼もしい息子。
そりゃー 家元夫人も志摩も頑張るよな。
菫が走ってくる
「ににさまーーーー おねつしゃがりましたか?」
「うん。すぅちゃんのお陰だよ。」
「すぅちゃんないです。お‥」
慌てて、菫の口を塞ぐつくし。
菫もやっと思い出したのか、
「やっぱりすぅちゃんのおかげでしゅね」
なんて、話しを合わせた瞬間、
「菫様、廊下は走ってはなりませんと、志摩は菫様にお教えした筈です」
志摩に、早速怒ら‥…???
「すぅちゃん、シマしゃんとおばあちゃまが はしってるのみっけたよ」
ニンマリと嬉しそうに笑った。
あれから、シマに怒られそうになると、ラジオ体操の真似っこをする菫‥…
確かに、確かに口には出してねぇ。だがよぉ どうなんだよ?それってよぉ
ククッ でもよぉ〜 櫂がすぅを可愛がるのも仕方ねぇな。
こういう時の菫、滅茶苦茶可愛いもんなぁー ククッ あぁー俺ん家はあきねぇな。
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♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
思い出の欠片頂きました♡
どうしても行きたいイベント。熱があって行けない。そんな時に思いついた。汗をかく作戦!
行くぜっラジオ体操とばかりに頑張る頑張る。
うふっ、きっと一生懸命だったんだろうなぁー
思い出のエピソード有り難うございました。
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