愛なんていらないから07 つかつく
コノベッコフレーム、ナニヲイッテイルンダ
あたしは、眉根を寄せ首を傾げた。
「あっ、私としたことが、控えの契約書をまだお渡ししておりませんでしたね」
秘書沖田、いいやべっ甲フレームにもう一度格下げだ。ふんっ まぁ、そのなんだ、べっ甲フレームが額をパチンっと一つ叩いた。なんだ、べっ甲フレーム、お前はお笑い芸人か。今時そんなベタな芸人は流行らないぞーだ。
そんなあたしの思いなんか気づきもせずにべっ甲フレームは、ズイッと音がしそうな勢いで書類を渡してきた。
そんな悪魔の書類は受け取りたくなくて、手を伸ばしたままにしたのに……べっ甲フレームの手が伸びて、あたしの手を掴もうとした、その瞬間………
パンッ
べっ甲フレームの手を払い除ける音がして、書類が宙を舞った。
「えっ?」
「えっ?」
綺麗に声がハモる。
ハモった先には、手を払われたべっ甲フレームと、手を払い除けた道明寺がいた。
まぁ、この部屋には三人しかいないんだから、そりゃそうか。と、自問自答してから、頷いた。
うんっ? この二人って利害が一致してるんじゃなかったっけ?あれっ?
あたしが左右に首を傾げれば、つられたかのように、二人の男も首を傾げてる。 一番先に元に戻ったのが流石のべっ甲フレームだった。べっ甲フレームは、しゃがんで書類を拾っている。チラッと見られたので、立ったまま見下ろすのもなんだか申し訳なくて、あたしもしゃがんで書類を拾うのを手伝った。なのに、べっ甲フレームは、「いやいやっ、こちらは私の仕事ですので」とかなんとか言っている。
手を払った道明寺にいたっては、「なんでだ?」とか何とか呆然とした様子で呟いている。なんでだ?って、なんでだ?
横柄だし、ケチだし、ケチだし、いや、ここ大切だからもう一回言おう。ケチだし、意味わかんない行動とるし________ 道明寺財閥大丈夫か?なんて、あたしには一ミリも関係ないことを考えてた。一ミリも関係ない?だよね?いいんだよね?あってるよね?一ミリも関係ないよね?
「牧野さん、大変申し訳ないのですが、これからの牧野さんの人生には大変密接な関係があるかと…………」
あたしの耳が不快な言葉をキャッチした。いやいやいや、密接ノーノーノー うん。うんうん。
ってか、べっ甲フレーム、なんであたしの考えてることがわかる? やっぱいい会社の秘書は、読心術にも長けているのか?と顔を見れば、
「では、契約書の写しに関しましてはコチラに置かせて頂きますね。……それと……牧野さん、牧野さん時折、心の声が漏れていると言うか……」
「えっ、じゃあ、まさか道明寺のことケチて言ったのも漏れてました?」
聞いた後、あたしは慌てて両手で口を押さえた。漏れてる漏れてない以前に、ケチって思ってたのバレたじゃん。
べっ甲フレームは、冷静さを装いながらも真っ青な顔をしている横で、真っ赤な顔で怒る道明寺……しゃ、ちょう
人ってさ、まずいっていう極限状態だと身体の緊張からなのか?精神を守ろうとしているからなのか? どうでもいい変な事を思いついて笑ってしまうらしい。
えっ? そんなことないって……うーーーん、じゃあ、魔王のような顔した道明寺の前に立ってみて。
それより、なにを思い出したかが気になるって?
「ぷっ 赤鬼さんと青鬼さんみたい ぷぷっ」
しかもだあろうことに音声付きだった。
口は災いの元……コレ牧野つくし、あたしの一生の教訓にしたい。
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