ずっとずっと 77
怪訝に思い、視線の先を見る
牧野さんが何故ここに?
あの娘の胸元に燦然と輝くブルーダイヤを見て、私は驚愕する。
リックマン夫人とエバンズ夫人が、交わしていた会話を思い出す。
「薫様のINVITATIONは届いた?」
「えぇ、いよいよね。由那さんご夫妻の念願だったLucyJewellの誕生ね」
「由那さん‥素敵な方だったわよね。」
「えぇ、優美さと温かさを醸し出した素敵な方だったわね。あの方といるといつも温かな気持ちになれましたもの。」
「LucyJewellの代表就任の際には、婚約発表も行うとか。」
「えぇ、そのようね。楽しみだわねぇ〜」
「ノアの情報によると、KAGURAの婚約パーティーにそのお嬢さんと出席なさるそうよ。」
「まぁっ、ではまたあのブルーダイヤが見られるのね。」
「えぇそうなるわね。楽しみよね。」
「とっても。亜矢様も雪乃様もお喜びのご様子が目に浮かぶわね」
*
司が一歩前に踏み出そうとしている‥… 止めなくては、止めなくてはいけない
グレンダが司を呼ぶ声がして、司が踵を返し、グレンダの元に行く。
次の瞬間、
道明寺財閥に、JEWELLグループが手を差し伸べて下さった本当の理由を、私は悟る。
La Veriteの2次会員に亜矢様がお祝いだと推薦して下さったのも、道明寺に釘を刺すため。
牧野つくしには、手を出すな。その警告のため。
あの娘が、筒井の秘蔵っ子‥… La Veriteに入ってから幾度となく聞いた話しを思い出す。
とても切れ者のお嬢さんがいる。TSUTSUIのセミナーに参加は勿論の事、TSUTSUIに関わる人々がこぞって彼女を慕い可愛がっている。薫様がそのお嬢さんに、恋をして両家も諸手をあげて大賛成している。これで筒井も宝珠も安泰だ。
幾度となく、漏れ聞く話。
彼女にそんな魅力や、才能があったなんてと‥…私は愕然とする。
そして、私は理解する。私のこれからの役割を‥…
司がその禁を犯さない限り、道明寺財閥は安泰でいられる。同時に司が禁を犯せば、道明寺財閥は跡形もなく潰されるという事を理解する。
***
「薫様‥…」
司君がつくしに気付いた事を、片倉にそっと耳打ちをされる。
幸いな事に、道明寺会長も同行していたらしい。
聡い彼女の事だ全てを理解しただろう。
それでも僕の心は、激しく乱れる。彼とつくしが会う事など解っていた筈なのに、覚悟していた筈なのに、いいやこの機会をわざわざ作ったのは僕なのに‥…
内心の動揺を隠し何気なさを装い、僕はつくしの元に向かう。
TSUTSUIの徒党が多いこのパーティー、皆一様につくしの着けているブルーダイヤの意味を理解しているだろう。宝珠の長が認めた、宝珠の後継ぎの伴侶になる女だと。
INVITATIONは、もう既に手元に届いている。
つくしを蔑(ないがし)ろに扱う事は、即ち宝珠を筒井を蔑ろにする事。
つくしを奪う人間は、敵だという事。
彼女の元に戻り、微妙な変化を感じる。
愛するものを欲する、美しい表情(かお)をしている。
何故?あんなにも無惨に捨てられ、壊れそうになったにもかかわらず君はあの男を求める?
何故……僕ではなくあの男を求める。君は僕の妻になる女性なのにも関わらず。
僕の心を千々にする、君の表情。君に寄り添って生きていければ、それで良いと決意したばかりなのに……君の表情を一瞬で変えてしまった男の存在に、僕の決意は揺らぐ。彼女の全てを手に入れたいと。
つくしお願いだ。僕を独りにしないで。
つくしお願いだ。僕を愛して、僕だけを愛して。
僕は何気なさを装い、君の腰を抱く。君が一瞬、そう一瞬……戸惑いをみせた。
君との間に築き上げたものが、たった一瞬、彼に会っただけで崩れさるの?違うよね?
僕の心に黒い滓(おり)がたまる。
君を愛し、昏い闇に堕ちていく僕の心。
初めて人を妬ましいと思った。いや、初めて人を憎んだ。
僕が憎んでいるのは、司君? それともつくし?
つくしに出逢い僕の感情は、開花する。
恋する幸せ。慈しみ愛する庇護欲。狂おしく愛する心。征服欲。所有欲。
彼女の側にいれて、こんなにも幸せなのに‥… 苦しくて苦しくて堪らない。
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