禁花〜愛しいあなた〜06
総二郎の腕があたしの背中に回される。あたしは、すっぽりと総二郎の腕の中に抱かれる。このまま時が止まってしまえばいいのに_____そんなベタなことを考えた自分が可笑しくなってくすりと笑えば
「うんっ? どうした」
「うふふっ、どうもしないよ」
「どうもしなくないだろうよ。なぁ、もう一回したいとかじゃないのか」
「あははっ、流石に、もう今日は勘弁。明日クライアントの所に朝から行かなくちゃいけないからさ」
この優しい腕の中から、出られなくなってしまう前に、あたしは総二郎の腕の中からするりと抜け出し、ベッドを降りた。
「飯食ってくか?」
背後から声を掛けられて嬉しさに顔がにやついた。
でも_____愛は求めない。そう決めている。
「家帰って明日の資料まとめる」
ぶっきらぼうにそう言いながら、服を着た。
「送ってく」
「えっ、いいよ。ここらへんだとすぐタクシー捕まえられるし」
話しながら、玄関に向かった。慌てて服を着始めた総二郎を尻目に、後ろ手でバイバイと手を振って玄関から飛び出した。あたしの後ろ姿に向かって、着いたら連絡しろって声を掛けて来る。まぁ、帰宅途中に何かあったら目覚めが悪いもんね。
大きなため息と共にエレベーターの壁面にもたれかかかり
「ハァッーー 反則だよ反則。
総二郎があたしに優しくするのはベッドの中だけにして_____じゃないとあたしは夢を見ちゃうじゃん」
そう呟いた。
時折り総二郎は、あたしが錯覚しそうな眼差しをあたしに投げかけてくる。
愛されてるのかもしれない。そう思うと血湧き肉躍る________でもそれは、総二郎とあたしの間では破滅を意味する。
何かに負ける恋ならば、恋などしない方がいい。
振り向きもせず、後ろ手で手を振り、つくしが出ていく。
「ハァッー」
幸せがいくつも逃げていきそうな大きなため息を一つついてから、窓辺に立ち眼下を見下ろした。この位置から見えるわけないのにも関わらず、帰っていくつくしを見送った。
「ハァッー」
こんな夜更けに自宅まで送らせてくれよ。ともう一つため息を吐いた。
我ながら女々しいと思うが、本気で恋した男は大概が女々しいもんだ……多分。
女々しい俺は、愛を求めないと言いつつ_______つくしからの愛を求めている。
「ハァッー」
出口のない自分の思いにため息を吐く。
「いっそ、ガキでもつくっちまうか?」
現実性のないことを呟いて、もう一度小さくため息を溢した。万に一つでも間違いがあってはいけないと、つくしはピルを飲んでいる。
「既成事実作るなら、あの旅行の時がチャンスだったんだよな」
姑息だ。女々しくて姑息。そんな自分がたまらなく嫌になるが、ほんの少し、ほんの少しだけ、こんな自分も悪くないんじゃないかって思ってる。
人生に愛など必要など有りはしないと思っていた俺が……愛を手に入れたくてもがいているのだから。
「ハァッー」
悪くはないが……送るのさえ拒絶されたこんな夜は、やるせなさが襲う。
もしももしもだ________タクシーが捕まらずに、一杯飲んでこうとなったつくしが、昔の俺みたいな男に会ったら_____その男の方が俺よりもつくしを悦ばせることに長けていたら?
いやいや、俺は首を振る。つくしの淫らな美しさを最大限に引き出せることが出来るのは俺だけだと。
いつの間にか組んだ両手に力が入っていた。
「ハァッー」
まだ起こってもいない事を想像して、過去最大のため息を吐いた瞬間________
ピロリン♪
つくしからの家に着いたメッセージが入った。
「ふぅっーーーー」
安堵のため息が自然と出た。
女々しくてなんぼのもんじゃ

ありがとうございます
「うんっ? どうした」
「うふふっ、どうもしないよ」
「どうもしなくないだろうよ。なぁ、もう一回したいとかじゃないのか」
「あははっ、流石に、もう今日は勘弁。明日クライアントの所に朝から行かなくちゃいけないからさ」
この優しい腕の中から、出られなくなってしまう前に、あたしは総二郎の腕の中からするりと抜け出し、ベッドを降りた。
「飯食ってくか?」
背後から声を掛けられて嬉しさに顔がにやついた。
でも_____愛は求めない。そう決めている。
「家帰って明日の資料まとめる」
ぶっきらぼうにそう言いながら、服を着た。
「送ってく」
「えっ、いいよ。ここらへんだとすぐタクシー捕まえられるし」
話しながら、玄関に向かった。慌てて服を着始めた総二郎を尻目に、後ろ手でバイバイと手を振って玄関から飛び出した。あたしの後ろ姿に向かって、着いたら連絡しろって声を掛けて来る。まぁ、帰宅途中に何かあったら目覚めが悪いもんね。
大きなため息と共にエレベーターの壁面にもたれかかかり
「ハァッーー 反則だよ反則。
総二郎があたしに優しくするのはベッドの中だけにして_____じゃないとあたしは夢を見ちゃうじゃん」
そう呟いた。
時折り総二郎は、あたしが錯覚しそうな眼差しをあたしに投げかけてくる。
愛されてるのかもしれない。そう思うと血湧き肉躍る________でもそれは、総二郎とあたしの間では破滅を意味する。
何かに負ける恋ならば、恋などしない方がいい。
振り向きもせず、後ろ手で手を振り、つくしが出ていく。
「ハァッー」
幸せがいくつも逃げていきそうな大きなため息を一つついてから、窓辺に立ち眼下を見下ろした。この位置から見えるわけないのにも関わらず、帰っていくつくしを見送った。
「ハァッー」
こんな夜更けに自宅まで送らせてくれよ。ともう一つため息を吐いた。
我ながら女々しいと思うが、本気で恋した男は大概が女々しいもんだ……多分。
女々しい俺は、愛を求めないと言いつつ_______つくしからの愛を求めている。
「ハァッー」
出口のない自分の思いにため息を吐く。
「いっそ、ガキでもつくっちまうか?」
現実性のないことを呟いて、もう一度小さくため息を溢した。万に一つでも間違いがあってはいけないと、つくしはピルを飲んでいる。
「既成事実作るなら、あの旅行の時がチャンスだったんだよな」
姑息だ。女々しくて姑息。そんな自分がたまらなく嫌になるが、ほんの少し、ほんの少しだけ、こんな自分も悪くないんじゃないかって思ってる。
人生に愛など必要など有りはしないと思っていた俺が……愛を手に入れたくてもがいているのだから。
「ハァッー」
悪くはないが……送るのさえ拒絶されたこんな夜は、やるせなさが襲う。
もしももしもだ________タクシーが捕まらずに、一杯飲んでこうとなったつくしが、昔の俺みたいな男に会ったら_____その男の方が俺よりもつくしを悦ばせることに長けていたら?
いやいや、俺は首を振る。つくしの淫らな美しさを最大限に引き出せることが出来るのは俺だけだと。
いつの間にか組んだ両手に力が入っていた。
「ハァッー」
まだ起こってもいない事を想像して、過去最大のため息を吐いた瞬間________
ピロリン♪
つくしからの家に着いたメッセージが入った。
「ふぅっーーーー」
安堵のため息が自然と出た。
女々しくてなんぼのもんじゃ
ありがとうございます
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