禁花~愛しいあなた~07
シタイ
シタイ
シタイ
シタイ
シタイ
あたしの頭の中は、その言葉だけが渦となってグルグルグルグルと回っている。
でも_____本当は、ただただ会いたいだけだ。
会いたいと言えないあたしは、
会いたいという言葉の代わりに、抱いてと口にして
会いたいという言葉の代わりに、愛液を滴らし
会いたいという言葉の代わりに、よがり声をあげている。
総二郎と偶然何度か会ったことのあるカフェでそんなことを考えていた。こんなことを考えているあたしは、かなりいっちゃってるなんて思って、フッと小さく笑ってしまった。
次の瞬間
「牧野さん____ですよね?」
頭上から声を掛けられ、ゆっくりと見上げれば、見覚えがあるようなないような女性が立っていた。一瞬、総二郎関係の女性かと身構えた。
「突然すみません。私、あの、平です。平真理子です。覚えていらっしゃらないかもしれませんが_____」
「ぁっ____平さんって、もしかして暮林さんのところでお会いした?」
「そうです。その平です。その節は、本当に申し訳ございませんでした」
彼女は、謝罪を口にしながら大きく頭を下げた。以前会ったときは、よく手入れされているだろう艶やかなロングヘアを華やかな巻き髪にしていたのだが、目の前にいる彼女は、バッサリとショートヘアになっていた。
「髪、お切りになったんですね。良く似合ってらっしゃいますね」
あたしが場違いな返答をすれば、彼女は自分の髪に手を触れながら
「あっ、はい。仕事が忙しくて、髪を手入れしてる時間寝てたくて」
「ぅふっ、それ解ります。でも知ってます? 長い髪の毛って結ぶ事が出来るので、便利なんですよ」
「あっ、はい。知ってます。長いままにするか、切るか迷いました。
あのぉ、牧野さん_____少しだけお話いいですか?」
彼女の言葉に、あたしの前の席を彼女に勧める。彼女は、席に座ったあと、もう一度頭を下げる。
「本当に申し訳ございませんでした。私のせいで私のせいで」
あたしは、腕を伸ばし謝る彼女の行動を制した。
「違うの。平さん、あなたのお陰で、私間違わなくて済んだの」
「えっ?」
平さんは、不思議そうな顔であたしの顔を見上げる。あたしは、平さんのお陰で間違った結婚をしなくて済んだのだと話をした。全てを聞き終えたあと
「それでも____あの当時の私の行動は間違っていました。ごめんなさい」
「じゃ、私は、平さん、間違った行動してくれてありがとうだね」
二人揃って頭を下げあってから、目を見合わせ笑いあった。
平さんは、あの後、彼から接触禁止を言い渡され、お兄さんには全てお前のせいだと叱られ、ご両親からは、余計なことをしでかさないためにと見合いを用意して来た。居づらくなって、逃げるように東京に出てきたのだと語った。
「なので、当然、仕送りなんて期待できなくて、最初は貯金でまかなってたんですけど。そうも行かなくなって、父の会社でお茶汲みしかしたことなかった私が、初めてちゃんと働き出したんです。最初は、もう嫌になっちゃうくらい失敗ばっかりで何度も辞めようと思ったんですけど、かと言って実家に戻りたくは無いんで、生活するためには働くしかなくて……でも、段々と一生懸命働くのが楽しくなって来たんです。働くことが楽しくなっていくと同時に、それまでみたいにマウント争いをする関係でない関係を築ける友人が出来たんです。
幸せだって感じ初めて、その時初めて淳君と牧野さんに凄く悪いことをしたって気が付いたんです。今更謝ったって遅いとは思ってたんですが、淳君には兄を通して謝罪を伝えました。淳君は今更だと言った後に、それでも私の謝罪を受け入れてくれて、一度会ってくれました。その際に淳君がお父様のお仕事関係のお嬢さんと結婚することになったので、今度はくれぐれも邪魔をしないようにと、今度同じことをしたら法的措置も考えるからと念を押されました。
その際に、牧野さんの行方を聞いたんですけど、解らないって。解っていても、教えないって。それにそれは自己満足じゃないのか?態々会っても嫌な気分にさせてしまうだけなんじゃないのかって。本当にそうだなって納得してたんです。
実は、ここのカフェで以前にも何度か牧野さんをお見掛けしてたんです。あっ、最初は槙野さんってわからなくて……うんと、そう、私がここのカフェによく来るようになったのは、ここのカフェに、時折りメチャクチャ美形な男性が来るって職場の友達が教えてくれたからなんです。一見の価値ありだって言われて、物は試しと来てみたら、値段は手頃だし、美味しいし、職場にも近いんでよく通うようになって……何度目かの時に件の男性を見て、稀に見る美形な方で、うわっコレは目の保養だって、感心してガン見しちゃいました。
美形さん、ドアが開くたびに何かを確認するかのようにドアの方を見ては、落胆した表情を浮かべるんです。他には一切目もくれないのに……小一時間居て帰ってく。その日だけじゃなくそんなのを何度か見ることがあって。ある日、美形さんがものすごくいい笑顔で話してるのが目に入って、美形の笑顔破壊力あるなーなんて感心しながら、よっぽど愛おしく思っているお相手となんだろうなと好奇心に駆られて盗み見したら、牧野さんなんで驚きました。
それからも何度かお見かけしたんですけど、あの美形さんの幸せな時間を邪魔しちゃいけないし、それよりなにより今更余計な事で声はかけちゃいけないと思って自粛してたんです。
今日は珍しく牧野さんがお一人だったんで、それになんだかとても幸せそうに思い出し笑いしてたんで、衝動的にお声かけてしまったんです。
あぁ、やっぱり私って、考えなしで自分勝手ですよね。ごめんなさい
あっ、美形さんと今日も待ち合わせでした? あっ、そうですよね。本当にごめんなさい」
そう言いながら、平さんは慌てて立ちあがろうとした。あたしは首を振り
「いつも偶然なの。偶然を装って私がここに来ることはあっても待ち合わせしたことなんてないの」
「えっ?」
ねぇ、平さん、本当に「総二郎が、あたしを愛おしそうに見てる?」
平さんを縋るように見つめてた。平さんは、ほんの少し呆けた顔をしたあと顔を上下に動かした。
愛を求めないと決めていたのに______あたしの心が喜びで染まっていく。

ありがとうございます
シタイ
シタイ
シタイ
シタイ
あたしの頭の中は、その言葉だけが渦となってグルグルグルグルと回っている。
でも_____本当は、ただただ会いたいだけだ。
会いたいと言えないあたしは、
会いたいという言葉の代わりに、抱いてと口にして
会いたいという言葉の代わりに、愛液を滴らし
会いたいという言葉の代わりに、よがり声をあげている。
総二郎と偶然何度か会ったことのあるカフェでそんなことを考えていた。こんなことを考えているあたしは、かなりいっちゃってるなんて思って、フッと小さく笑ってしまった。
次の瞬間
「牧野さん____ですよね?」
頭上から声を掛けられ、ゆっくりと見上げれば、見覚えがあるようなないような女性が立っていた。一瞬、総二郎関係の女性かと身構えた。
「突然すみません。私、あの、平です。平真理子です。覚えていらっしゃらないかもしれませんが_____」
「ぁっ____平さんって、もしかして暮林さんのところでお会いした?」
「そうです。その平です。その節は、本当に申し訳ございませんでした」
彼女は、謝罪を口にしながら大きく頭を下げた。以前会ったときは、よく手入れされているだろう艶やかなロングヘアを華やかな巻き髪にしていたのだが、目の前にいる彼女は、バッサリとショートヘアになっていた。
「髪、お切りになったんですね。良く似合ってらっしゃいますね」
あたしが場違いな返答をすれば、彼女は自分の髪に手を触れながら
「あっ、はい。仕事が忙しくて、髪を手入れしてる時間寝てたくて」
「ぅふっ、それ解ります。でも知ってます? 長い髪の毛って結ぶ事が出来るので、便利なんですよ」
「あっ、はい。知ってます。長いままにするか、切るか迷いました。
あのぉ、牧野さん_____少しだけお話いいですか?」
彼女の言葉に、あたしの前の席を彼女に勧める。彼女は、席に座ったあと、もう一度頭を下げる。
「本当に申し訳ございませんでした。私のせいで私のせいで」
あたしは、腕を伸ばし謝る彼女の行動を制した。
「違うの。平さん、あなたのお陰で、私間違わなくて済んだの」
「えっ?」
平さんは、不思議そうな顔であたしの顔を見上げる。あたしは、平さんのお陰で間違った結婚をしなくて済んだのだと話をした。全てを聞き終えたあと
「それでも____あの当時の私の行動は間違っていました。ごめんなさい」
「じゃ、私は、平さん、間違った行動してくれてありがとうだね」
二人揃って頭を下げあってから、目を見合わせ笑いあった。
平さんは、あの後、彼から接触禁止を言い渡され、お兄さんには全てお前のせいだと叱られ、ご両親からは、余計なことをしでかさないためにと見合いを用意して来た。居づらくなって、逃げるように東京に出てきたのだと語った。
「なので、当然、仕送りなんて期待できなくて、最初は貯金でまかなってたんですけど。そうも行かなくなって、父の会社でお茶汲みしかしたことなかった私が、初めてちゃんと働き出したんです。最初は、もう嫌になっちゃうくらい失敗ばっかりで何度も辞めようと思ったんですけど、かと言って実家に戻りたくは無いんで、生活するためには働くしかなくて……でも、段々と一生懸命働くのが楽しくなって来たんです。働くことが楽しくなっていくと同時に、それまでみたいにマウント争いをする関係でない関係を築ける友人が出来たんです。
幸せだって感じ初めて、その時初めて淳君と牧野さんに凄く悪いことをしたって気が付いたんです。今更謝ったって遅いとは思ってたんですが、淳君には兄を通して謝罪を伝えました。淳君は今更だと言った後に、それでも私の謝罪を受け入れてくれて、一度会ってくれました。その際に淳君がお父様のお仕事関係のお嬢さんと結婚することになったので、今度はくれぐれも邪魔をしないようにと、今度同じことをしたら法的措置も考えるからと念を押されました。
その際に、牧野さんの行方を聞いたんですけど、解らないって。解っていても、教えないって。それにそれは自己満足じゃないのか?態々会っても嫌な気分にさせてしまうだけなんじゃないのかって。本当にそうだなって納得してたんです。
実は、ここのカフェで以前にも何度か牧野さんをお見掛けしてたんです。あっ、最初は槙野さんってわからなくて……うんと、そう、私がここのカフェによく来るようになったのは、ここのカフェに、時折りメチャクチャ美形な男性が来るって職場の友達が教えてくれたからなんです。一見の価値ありだって言われて、物は試しと来てみたら、値段は手頃だし、美味しいし、職場にも近いんでよく通うようになって……何度目かの時に件の男性を見て、稀に見る美形な方で、うわっコレは目の保養だって、感心してガン見しちゃいました。
美形さん、ドアが開くたびに何かを確認するかのようにドアの方を見ては、落胆した表情を浮かべるんです。他には一切目もくれないのに……小一時間居て帰ってく。その日だけじゃなくそんなのを何度か見ることがあって。ある日、美形さんがものすごくいい笑顔で話してるのが目に入って、美形の笑顔破壊力あるなーなんて感心しながら、よっぽど愛おしく思っているお相手となんだろうなと好奇心に駆られて盗み見したら、牧野さんなんで驚きました。
それからも何度かお見かけしたんですけど、あの美形さんの幸せな時間を邪魔しちゃいけないし、それよりなにより今更余計な事で声はかけちゃいけないと思って自粛してたんです。
今日は珍しく牧野さんがお一人だったんで、それになんだかとても幸せそうに思い出し笑いしてたんで、衝動的にお声かけてしまったんです。
あぁ、やっぱり私って、考えなしで自分勝手ですよね。ごめんなさい
あっ、美形さんと今日も待ち合わせでした? あっ、そうですよね。本当にごめんなさい」
そう言いながら、平さんは慌てて立ちあがろうとした。あたしは首を振り
「いつも偶然なの。偶然を装って私がここに来ることはあっても待ち合わせしたことなんてないの」
「えっ?」
ねぇ、平さん、本当に「総二郎が、あたしを愛おしそうに見てる?」
平さんを縋るように見つめてた。平さんは、ほんの少し呆けた顔をしたあと顔を上下に動かした。
愛を求めないと決めていたのに______あたしの心が喜びで染まっていく。
ありがとうございます
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