禁花~愛しいあなた~08
ほっと一息吐いた瞬間____愛おしい女の顔がみたくなった。電話をかけて誘おうと考えたが、こんな昼間から会ってくれる筈がない。手酷く拒絶される自分を想像して、胸を一突きされるような痛みを感じた。でも___つくしに会いたくて会いたくてたまらない。こんな日は、いつも一縷の望みをかけてつくしがよく行くカフェに行く。
つくしがよく行くって言っても_____いまや、俺の方が常連になっていたりするんだけどな。
滑稽だな。 そう思う。
女々しいな。もっともだ。
カッコ悪いな。上等だ。
「ハァッ―――会いてぇな
とりあえず、時間もあることだし茶でも飲みに行くか……」
屋敷を出る瞬間_____若宗匠とどこかで焦った声が聞こえた気がしたが、まぁ気のせいだろうと言う事にして、車を走らせた。
仕方ない。恋する男だ。
店のドアを開ければ_____そこには愛する女が泣いていた。
どうした? 俺は慌てて、つくしの元に駆け付ける。つくしの前に見知らぬ女が座ってる。この女がお前に何かしたのか? 俺は見知らぬ女を睨みつける。
「ヒィッ ヒィッ ご、ご、ごめんなさい。私、私、お二人の邪魔なんてしてませんから」
やっぱりこいつが何かしたのか____俺の中に信じられないほどの怒りがわいてくる。
「いやいや、いや、私、私、本当に邪魔なんてしません。もう帰りますから。ま、牧野さん、じゃぁすみません。また」
「えっ?平さんいきなり何言ってるの?って、どうしたの?」
「用事。用事思い出したんで___
そ、それに、私、まだ命惜しいので___」
「えっ?命惜しいって?」
「今晩のテレビです。テレビ。じゃ、私、忙しいので___牧野さん、今日はお話出来て本当に良かったです。ありがとうございました。あっ、コレ私の代金です」
見知らぬ女は、慌てふためいて様子でテーブルの上に千円札を一枚置いて出て行こうとした。
「平さん、お釣り、お釣り」
「丁度です。丁度。じゃ、本当にお邪魔しました」
俺は、見知らぬ女が出て行った席に座り、つくしの顔を見る
「その顔、どうした? 泣いたのか?」
つくしは、目元を指で拭いているのにも関わらず
「あっ、ううん違う。違う」
泣いてないと主張する。頬が微かに赤い。もしかして、あの女に叩かれたのか?
「頬赤くなってるけど平気か?」
俺の言葉に、つくしは俯いた。
俯くなんて平気じゃないじゃないか。もしかして原因は俺か?木の芽時になるとおかしなのが出てくるっていうけど、やっぱりあの女がなにかしたのか?
「なぁ大丈夫か? こっち見せてみろ」
「あっ、いや、ここお店の中だから___ちょ、ちょっと、近いって言うか。破壊力満点って言うか。とにかく、ここお店の中だから」
「じゃ、車直ぐ近くに止めてあるから出よう」
つくしの手を取り一緒に表に出た。
車の中でつくしの顔を見る。
「ちゃんと見せてみろ」
「えっ、だから、平気だって」
「だってお前、かなり赤いぞ」
「そ、それは_____」
「あの女に叩かれたのか? なぁ大丈夫か」
「あぁ、もう人の話聞け。これは恥ずかしくて赤くなっただけ。ずっと赤いのも、総二郎の位置が近いから」
「えっ?」
「あぁもう、平さんが、総二郎があたしと会ってる時幸せそうな顔してるって___だから、もしかして総二郎ってあたしの事好きなんだって思って、そしたら嬉しくって、でも、どうしていいかわかんなくて涙が出たの。泣いてたら総二郎が来て、あんまりタイムリー過ぎてどうしていいかわかんないし、恥ずかしいしで赤くなってるだけ」
これ、告白か?
なぁ俺、いま白昼夢見てるのか?
なぁ、俺、死ぬのか?
「これ、俺の都合の良い夢じゃないよな? つくし____俺の事愛してくれるのか?」
「………………」
俺の問いに見事に黙るつくし。
「夢でさえ無言ってやつか____」
つい愚痴が突いて出たら
「ハァッーもう、訳の分かんないことばっかり言って、総二郎って馬鹿なんじゃないの?」
「お前が俺の事愛してくれるなら、馬鹿でもなんでもいい。もしも、もしもだ、俺の勘違いじゃなくてお前が俺の事を愛してるなら、いや、ちょっとでも、好きだって思ってくれてるなら、一生側にいてくれ」
「えっ?」
「____ダメか?」
「ダメかって、だって、だって、あたしは総二郎にとって禁花なんだよ。いいとか悪いとかじゃなくて、そぐわないんだよ。_____総二郎とあたしじゃ住んでる世界が違いすぎるから無理なんだよ。だから愛さないってあたし決めてたんだよ。ずっとずっと総二郎のそばに居たかったから」
つくしは、車のドアを開け出ていった。
追いかけて来ないでと言い残して_____
「住んでる世界ってなんだよ
それに、きんか…………きんかってなんだよ」
そう口にして、茶道での禁花の事だと気が付いた。悲しくなった。愛おしくて愛おしくてたまらない女に、そぐわないなんて思わせていたことが。
俺が滑稽なのも、女々しいのも、それはそれで構わない。
だが、自分の愛する女にあんな顔をさせるのは駄目だ_____
その日から、何度連絡しても全て無視された。
アイタイ
アイタイ
アイタイ
アイタイ
アイタイ
狂おしいほどにつくしに会いたくてたまらない。

ありがとうございます
つくしがよく行くって言っても_____いまや、俺の方が常連になっていたりするんだけどな。
滑稽だな。 そう思う。
女々しいな。もっともだ。
カッコ悪いな。上等だ。
「ハァッ―――会いてぇな
とりあえず、時間もあることだし茶でも飲みに行くか……」
屋敷を出る瞬間_____若宗匠とどこかで焦った声が聞こえた気がしたが、まぁ気のせいだろうと言う事にして、車を走らせた。
仕方ない。恋する男だ。
店のドアを開ければ_____そこには愛する女が泣いていた。
どうした? 俺は慌てて、つくしの元に駆け付ける。つくしの前に見知らぬ女が座ってる。この女がお前に何かしたのか? 俺は見知らぬ女を睨みつける。
「ヒィッ ヒィッ ご、ご、ごめんなさい。私、私、お二人の邪魔なんてしてませんから」
やっぱりこいつが何かしたのか____俺の中に信じられないほどの怒りがわいてくる。
「いやいや、いや、私、私、本当に邪魔なんてしません。もう帰りますから。ま、牧野さん、じゃぁすみません。また」
「えっ?平さんいきなり何言ってるの?って、どうしたの?」
「用事。用事思い出したんで___
そ、それに、私、まだ命惜しいので___」
「えっ?命惜しいって?」
「今晩のテレビです。テレビ。じゃ、私、忙しいので___牧野さん、今日はお話出来て本当に良かったです。ありがとうございました。あっ、コレ私の代金です」
見知らぬ女は、慌てふためいて様子でテーブルの上に千円札を一枚置いて出て行こうとした。
「平さん、お釣り、お釣り」
「丁度です。丁度。じゃ、本当にお邪魔しました」
俺は、見知らぬ女が出て行った席に座り、つくしの顔を見る
「その顔、どうした? 泣いたのか?」
つくしは、目元を指で拭いているのにも関わらず
「あっ、ううん違う。違う」
泣いてないと主張する。頬が微かに赤い。もしかして、あの女に叩かれたのか?
「頬赤くなってるけど平気か?」
俺の言葉に、つくしは俯いた。
俯くなんて平気じゃないじゃないか。もしかして原因は俺か?木の芽時になるとおかしなのが出てくるっていうけど、やっぱりあの女がなにかしたのか?
「なぁ大丈夫か? こっち見せてみろ」
「あっ、いや、ここお店の中だから___ちょ、ちょっと、近いって言うか。破壊力満点って言うか。とにかく、ここお店の中だから」
「じゃ、車直ぐ近くに止めてあるから出よう」
つくしの手を取り一緒に表に出た。
車の中でつくしの顔を見る。
「ちゃんと見せてみろ」
「えっ、だから、平気だって」
「だってお前、かなり赤いぞ」
「そ、それは_____」
「あの女に叩かれたのか? なぁ大丈夫か」
「あぁ、もう人の話聞け。これは恥ずかしくて赤くなっただけ。ずっと赤いのも、総二郎の位置が近いから」
「えっ?」
「あぁもう、平さんが、総二郎があたしと会ってる時幸せそうな顔してるって___だから、もしかして総二郎ってあたしの事好きなんだって思って、そしたら嬉しくって、でも、どうしていいかわかんなくて涙が出たの。泣いてたら総二郎が来て、あんまりタイムリー過ぎてどうしていいかわかんないし、恥ずかしいしで赤くなってるだけ」
これ、告白か?
なぁ俺、いま白昼夢見てるのか?
なぁ、俺、死ぬのか?
「これ、俺の都合の良い夢じゃないよな? つくし____俺の事愛してくれるのか?」
「………………」
俺の問いに見事に黙るつくし。
「夢でさえ無言ってやつか____」
つい愚痴が突いて出たら
「ハァッーもう、訳の分かんないことばっかり言って、総二郎って馬鹿なんじゃないの?」
「お前が俺の事愛してくれるなら、馬鹿でもなんでもいい。もしも、もしもだ、俺の勘違いじゃなくてお前が俺の事を愛してるなら、いや、ちょっとでも、好きだって思ってくれてるなら、一生側にいてくれ」
「えっ?」
「____ダメか?」
「ダメかって、だって、だって、あたしは総二郎にとって禁花なんだよ。いいとか悪いとかじゃなくて、そぐわないんだよ。_____総二郎とあたしじゃ住んでる世界が違いすぎるから無理なんだよ。だから愛さないってあたし決めてたんだよ。ずっとずっと総二郎のそばに居たかったから」
つくしは、車のドアを開け出ていった。
追いかけて来ないでと言い残して_____
「住んでる世界ってなんだよ
それに、きんか…………きんかってなんだよ」
そう口にして、茶道での禁花の事だと気が付いた。悲しくなった。愛おしくて愛おしくてたまらない女に、そぐわないなんて思わせていたことが。
俺が滑稽なのも、女々しいのも、それはそれで構わない。
だが、自分の愛する女にあんな顔をさせるのは駄目だ_____
その日から、何度連絡しても全て無視された。
アイタイ
アイタイ
アイタイ
アイタイ
アイタイ
狂おしいほどにつくしに会いたくてたまらない。
ありがとうございます
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