明日咲く花

花より男子の2次小説になります。

愛なんていらないから09 つかつく

「コーヒー持ってきてくれ」

一息つこうと、沖田にコーヒーを頼む。


ドアをノックする音に顔を上げれば____そこには牧野ではない別の女がコーヒーが載ったお盆を持って立っていた。沖田がそれを受け取り、俺の机に置く。


「おい、沖田、牧野は、どこ行った?」


「少し前に昼休憩に行きましたが」


「はっ? なんであいつ一人昼休憩だ」


「それは_____道明寺社長がランチミーティングがございません日は、休憩をお取りになられないと仰っていらっしゃったからかと」


「そういうことじゃないだろ。なんであいつ一人で勝手に休憩とってんだって聞いてるんだ」


「大変申し訳ございません。____ですが____なにぶん、秘書室のものは順番に昼休憩を取らせていただいておりますので」


「ほぉっ。で、沖田は、俺に不味いコーヒーで我慢しろというのか?」


「す、す、すみません。ですが………牧野さんだけ昼休憩無しというわけにはいきません」


「なんでだ」


「労働基準法に違反してしまいますので____それに、一番は牧野さん、お腹空かれるとですね」


「あぁ、あいつ腹空くと狂暴になるからな」

「そうなんです。そうなんです。ですので………牧野さんに昼抜きでとは言えません.。かと言って秘書室で食事を取ることもですね……」


「だったら、この部屋でなんか食わせればいいだろうが。なんでもいいから早く呼び戻して、コーヒー淹れさせろ。あっ、いや、待て そんなことすると、ダメか。牧野、昼飯はどこで食うって言ってた?」


「いつも社員食堂に行かれているかと________」


「いつも?」


「あっ、はい。社長が出掛けられている時は、課のものと社員食堂を利用していると言ってましたから」


「そうか」


言葉と共に、俺は立ち上がり部屋を出た。エレベーターに乗り込めば


「しゃ、社長どちらへ」


「あっ? 社員食堂とやらに行くに決まってるだろうよ」


「で、で、でしたら、36Fになります」

沖田の手がニュッと出て、36の数字を押した。頭の中に牧野が良く使うオノマトペが出てきて、思わず苦笑がこぼれた。





❋❋❋❋❋❋❋


「うわっ、本当に美味しそう」

あたしの目の前には、限定スペシャルランチが置かれている。ずっとずっとこの日を楽しみにしてきた。道明寺HDの社員食堂は、ここの社員食堂を利用したいがために道明寺HDに入社を決めたという社員がいるくらい美味しい。その中でもこの限定スペシャルランチは、お値段もいいが___何しろ美味しいので社員の中では争奪戦が繰り広げられるのだ。その数限定50食。今日はついてる。本当についてる。べっ甲フレームもとい今やあたしの上司となった沖田室長が五分早めに昼休憩をとっていいと言ってくれたのだ。無言の圧力?いいや、かけてない____はず? うん。かけてない。ここ数日、道明寺に付き添って、毎日残業続きだった。あいつ、帰る所は一緒だからとか言って、あたしを中々帰さず至る所に連れ回すのだ。帰るところ一緒でも、先に帰るのは別に構わなくないか? あたしだって、そこそこ友達付き合いだってあるのに。今までの何倍になるか解らないお給料も使い道がない。そう、使い道がないのだ。一度、生活費の諸々全てが道明寺持ちなので、申し訳なくて、半分お支払いしますと伝えたところ、途方もない金額を言われたので、苦笑いを浮かべて「今まで通りでお願いいたします」と頭を下げた。代わりにオフの日の食事をご馳走することにした。とは言え、普段あいつが食べるような高級な料理でなく、あたしの作る極々普通の家庭料理だが。食べる度に庶民の味ってやつだなやらなんやらブツブツ言ってるが、驚くほどに綺麗な箸使いで平らげている。しかも、時折人の分まで奪って食べる。

「サッちゃん、つくしちゃん、海外事業部の人達が一緒でも良いですか?って言ってるんだけどいいかな?」

秘書室の和み女子桑原弥生さんこと桑っちゃんが小首を傾げ何やら聞いてくる。小動物を思わせる可愛さを持っている。小動物と言えば、タマちゃんって、一体なんの生き物なんだろう。思わず呟くくらいなんだから、余程可愛がってるんだろうな。あっ、でも、蛇とかカエル系は嫌だな。コモンマーモセッとかだったらいいなー。頭の中でいろんな生き物がクルクルと回る。桑っちゃんが

「つくしちゃんも いいかな?」

なんだったけ?一緒がなんとかとか言ってたよね。でも、サッちゃんが特大な笑顔で頷いてたから、悪いことじゃないよね

「あっ うん。もちろん」


「じゃぁ、OKだって連絡するね」

「あぁ、もっと早く言ってくれれば、化粧直ししてきたのに」

「ゴメンね。サッちゃん。甲島君突然言うからさ」


「嘘ウソ。海外事業部、忙しいもんね。 それより、甲島君が来るって言う事は、もしや浮田さんもくるってこと?」

「そぉなのぉ。もう甲島様様なの」

「あっ、つくしちゃん、あのね浮田さんって言うのは、道明寺HD神セブンのうちの一人なのよ。イケメンで仕事も出来てってやつね。まぁ浮田さんファンクラブっていうのも存在するからさ、受付嬢チームに睨まれちゃうかもね。うふふっ まぁその時はは、沖田室長の様子でもちょっと教えればいいかな」


「沖田室長?」


「そそ、専務で霞みがちだけど、沖田室長もイケメン有能でしょ。なんと殿堂いりのイケメンセブンなのよ。まぁぶっちぎりは専務だけど、もうそこは別格だからね」

「へぇー」

サッちゃんの流れるような説明に思わず感心して頷いた。

「ちなみに、我が社はオフィスラブ推進だから」

桑っちゃんの言葉に、サッちゃんはニンマリ笑った。

と、同時に

「失礼しまーす」

と声がして、トレーを持った男性3名がテーブルにつき自己紹介を始めた。桑っちゃんの同期の甲島君は、ムードメーカー。その横に座っているのが向井さん。見かけは脳筋一直線って感じなんだけど、なんと帰国子女で英語はベラベラ。ついでにフランス語イタリア語ポルトガル語中国語に韓国語まで出来ちゃうらしい。ほんの少しだけですけどって言うけど、普段の会話で通訳はいらないらしい。「あっ でも契約の時は、英語以外は通訳必要かな」と来たもんだ。浮田さんは、なるほど。と、思わず手を叩きたくなる感じの爽やかイケメンだ。ってか、このイケメン……顔だけじゃなく人当たりもピカイチでいいんじゃない? あっ、でも沖田室長も人当たりはいいか。でもでもイケメンボスの道明寺はどうよ? うーーーん 太々しいよね。まぁでも、顔と仕事は悔しいことにぶっち切りか。

それにしても、浮田さんは流石の神セブン。他の席の女子社員の浮田さんを見る目が熱い!

流石、海外事業部。エリート部署だけあって、ずば抜けて話力が高い。サッちゃんも桑っちゃんも、流石の聞き上手で話し上手だ。サッちゃんが前に教えてくれたのだけど、秘書課女子と海外事業部男子の婚姻率は高いらしい。なので交流も盛んなのだとか。

入り口の方が何やら騒がしくて、何だろうとみていたら

「牧野さんも来れる?」

いつの間にかBBQの話になっていたようで、浮田さんに誘われた。

「いつですか?」


「来週か、都合悪ければ再来週の土曜日はどうかな?」

ここしばらくは道明寺の出張はないはずだ。だとすると家賃代わりの食事を作るくらいしか用事はない。まぁ毎回休みの度に作らなくてもいいかと思いながら、一応他の予定を確認するのにスマホのスケジュールを見るのに下を向いた。

気のせいか? 周りのざわめきが大きく聞こえる。


「来週、だいじょ……」

顔を上げ、返事をしようとしたら、なぜか目の前に青筋立てた道明寺が居た。

なんで社食に道明寺? ってか、すごい怒ってない? 

あたし、只今
蛇に睨まれた蛙……だ。





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト



0 Comments

Add your comment