曇天 10 あきつく
このまま進めてしまってよいものなのか? それとも立ち止まるべきなのか?
ふっ、女には不自由はしていない筈だった。幾人もの女を抱いてきた筈だった。
それなのに、牧野を前にすると俺は何も知らなかった日に、舞戻ってしまう。
美作さんの熱く蕩けそうなキスを受け、あたしはこの男(ひと)が好き。そう強く強く思う。
彼の戸惑いが伝わってくる。
女性には慣れている筈の美作さんなのに‥…
やっぱりあたしの事は女としてみれないのかな。哀しくなって涙が零れる。
「牧野どうした?」
あたしの涙を指で掬う。
「美作さんが好き...」
牧野が涙を一粒零す。真珠のような美しい涙を一粒零す。
俺は涙を指で掬い、牧野に問うた。
牧野の返事は思いもしなかった言葉で...
俺は牧野を見つめ、牧野が消えてしまわぬように抱きしめ、「愛してる」と何度も伝える。
強く深い口づけを落とし... 牧野と2人で夜を過ごす。
俺は少年のように、牧野の身体に溺れる。陶磁器のような白く輝く肌に、絡めとられ果てる。
今まで語ってきた愛は何だったのだろう?
心と身体が一つになった時の、絶頂感を初めて知る。俺は牧野の全てに溺れ、幾度も果てる。
夜の時間が終わりを告げる頃、幸福と安堵感と一緒に、牧野をすっぽりと胸の中に抱き眠りについた。
あたしの突然の告白に、少し驚いた顔をして、愛してるの言葉と共に深く強い口づけを落としてくれた美作さん。
愛する男に、抱かれる幸せを噛みしめる。
彼の身体からブルージーンズの香りが立ちこめる。
甘く爽やかな、なのに甘みと温かみのあるセクシーな香りに変容するブルージーンズ。
あたしは、彼の全てに狂わせられ、乱れる。そして幾度も幾度も彼を求める。
空が白み始める頃、彼に抱かれ眠りにつく。沢山の幸せと共に眠りにつく。
時計の針が正午を迎える頃、あたし達は眠りから覚める。
少しだけ気恥ずかしくて、慌てて目を逸らしたあたしの顎をもち、口づけを落とされ朝を迎える。
「つくしの事、また抱きたくなりそうだ」
つくしと呼ばれた事が?また抱きたいと言われた事が?
どっちだかわからないけど、嬉しくて嬉しくて、美作さんにしがみつく。
「ゴメン、ホントにたんま。じゃないと襲うぞ」
笑いながら、あたしの髪の毛を一撫でしてくれた。
襲って欲しいけど、なんてちょっぴり思ったのはナイショの話。
幾度となく、頭の中で呼んだ名前 つくし と 声にのせて呼んでみた。
俺にしがみつく、つくし。
ひんやりとした肌が俺の男を刺激する。揶揄(からか)い口調で誤摩化して、彼女の髪を撫でる。
10代の少年のように、暴走を始めようとする俺を止めるのに俺の理性はフル活動だ。
二人で見つめ合い口づけを交わし、笑い合うなんて出来なくて、野獣のように求め合う。
***
「そろそろ本当に起きなくっちゃね。ねっ美作さん」
「ねぇ、美作さんじゃなくて、ベットで呼んだみたいにあきらって呼んでよ」
耳まで真っ赤になって恥ずかしがるつくし。
下唇を噛みしめながら
「あ、あちらさん?あれあれ」
「ぷっ、どちらさん?」
「うーんもぉっ、意地悪。」
「今度はちゃんと言って?」
「あ、あ、あきらさん?」
「疑問系はなしで、さんも要らないよ」
「あっきら」
「ちょっと妖しいけど、まぁ合格」
ぷっ、見つめ合って大笑いしながら、今度こそベットから2人で飛び降りた。
「飯食おう!」
「うん。」
楽しく話しをしながら、2人並んで料理する。
いつまでもいつまでもこの幸せが続けば良いのにと、あたしは願う。
2人で迎えた2度目の朝は、あたし達の愛が始まった朝だった。
窓の外には、雲一つ無い真っ青な空が拡がっていた。
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