ずっとずっと 79
座の中心には、宝珠薫が見える‥…
どこに居ても、目立つ男だ。美しき王者って奴か‥…
そういやぁー 宝珠の坊ちゃんが愛するお相手とやらを初披露するとか何とか、ババァとグレンダが言ってったけな。さぞや、立派な家柄のお綺麗なお嬢さんなんだろうよっ
「司さんも早く薫様にご挨拶なさらなくては‥」
グレンダが俺の腕を引っ張り、そう言う。
俺は、愛しても、愛されてもいない女に腕を引かれる。
片や愛し、愛されってやつか‥…「ケッお幸せなこってぇ」 俺は自嘲的に小さく呟く‥…
人を掻き分け目的の場所へ辿り着く。辿り着いた先に待ち構えていたものは、絶望だった。
俺の希望が、絶望に変わった瞬間だった。
俺が見たのは
宝珠と身体を寄せ合い笑い合う女‥…
俺の俺だけの女‥…俺の魂。
それなのに、何故だ何故お前が宝珠の隣に居るんだ。
今すぐにでも駆け出して、つくしの腕をとり問い詰めたい衝動にかられる‥…
俺は、肩を叩かれ後ろを振り返る‥… 類が立っていた。
「司、もう全てが遅いんだ。せめて牧野の幸せを願ってやれ」
そう小さく呟いて、去って行く。
これが、道明寺とつくしを天秤にかけて、道明寺を選んだ俺に対する罰なのか?
俺の欲する唯一の女‥… こんなに近くに居るのにも関わらず‥…
遠い遠い存在になってしまったお前‥…
お前はいつから俺を裏切っていたんだ?
なぁ、NYで語った俺への思いは全てが嘘だったのか?
ふっ、お前を捨てた俺が聞ける話しじゃねぇよな。
**
司君が、僕等の元に来るのが見える。幸いつくしは、気付いていない。
僕は、わざとつくしの耳許で、千尋さんがお見合い当日、盛大に桜子さんにプロポーズした話しをする。喜びながらそれを聞くつくし。「後で、桜子のことからかっちゃおうっと」満面な笑みで僕に微笑む。
司君の位置からは、会話は聞こえない。さぞ仲の良い愛し合う二人に見える事だろう。
司君は、別れてからのつくしを知らない。どれほどつくしが傷つき、自分を失ったかを知らない。司君は、きっとつくしが、いとも簡単に僕に乗り換えたと思うだろう。それとも君と別れる前からの関係だと思うかな? 苦しめ、もがけ‥…そしてズタズタに傷つき、つくしを諦めてくれ。切に願う僕‥…
僕は醜い‥… 人の不幸を願ってしまう僕は醜い‥…僕は瞼を閉じる。
だけど、彼女をつくしを手放さない為なら僕はいくらでも醜くなろう。
もしも彼女の心を全て手に入れられるのなら、魂を悪魔にでも売り渡す。
人は誰かを本当に愛した時、相手の幸せを願う‥…そんなのは偽善だ。
人は誰かを本当に愛した時、相手の全てを手に入れたいと願うのだ。
心も身体も‥…手に入れたいと願うのだ。
心が無理ならば、せめて身体を‥…身体だけでも、手に入れたいと願うのだ。
***
せめてものプライドで、俺は平静さを装いながら、グレンダの腰を抱き、つくしの瞳を見て‥…
「この度はおめでとうございます。。」そう挨拶をする。
「有り難うございます。道明寺さんもご婚約おめでとうございます」
つくしは、薄く笑いながら、祝いの言葉を口にする。
俺とつくしの全てを知っているであろう宝珠‥…
フッ、虫も殺さねぇ美しい顔をしながら、こいつはいけしゃあしゃあと口にしたのだ「成功を祈っていてくれ」と。
ジュエルグループから資本提携の話しも、プロジェクトのメンバーに誘われたのも、全ては、つくしを手放さない為に、道明寺財閥を、いいや俺を雁字搦めにする為だったのだと思い知る。
まんまと俺は、蜘蛛の巣に絡めとられたんだ。もがけばもがくほど抜け出せねぇ蜘蛛の巣に‥…
俺はどこで間違えた? なぁつくし教えてくれ。
俺はもう二度とお前を抱けねえのか?
刹那
お前は、俺をあざ笑うように、男にもたれ掛かる‥…
***
司が、婚約者と寄り添いながら、薫とあたしに挨拶をしてくる。「おめでとうございます」そうあたしに言ってくる。あたしの心は涙を流す。
あたしは、捨てられた女‥… せめて愛した男の、いいえ愛してる男の前では、惨めで居たくないとだけ願い、痩せ我慢をして祝辞を述べる。
腰に回した薫の手に力がこもる。
大丈夫。あたしはしっかり挨拶出来た。もうあたしは傷つかない。
あたしは、司に見せつけるように、薫にもたれ掛かかった‥…
あたしは狡い……姑息な女
***
2人が祝辞を述べ合う。
つくしの心がずたずたに引き裂かれる音がするようだ。
つくし、僕の元に降りてきて‥
僕が君の全てを受け入れるから‥
どこかにいくなら、傷ついて僕の元に降りてきて‥
腰に回した手に力が入る。
つくしが僕にもたれ掛かる‥… 仮初めの勝利感に酔う
僕等をTSUTSUIのメンバーが、呼んでいる。
僕は司君の目を見て
「就任式には、つくしとの婚約の儀も整いますので、是非グレンダ嬢と二人でお越し下さい。ではまたお会い出来るのを楽しみにしております。それではまた」
そう言い捨て、つくしを促しその場を後にする。
追い縋る男の視線は、 紅い花を咲かせたつくしの項に注がれるだろう‥…
苦しめ、もがけ、僕と同じように‥…
修羅の道に落ちて来い
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