ずっとずっと 80
手を伸ばせば届く距離‥…俺は、拳を握り締め、時が過ぎるのを待つ。
刹那
つくしの項に紅く咲くキスマークを見つける。違う男の付けた所有の証。お前はあの男に抱かれたのか?俺は心の中で、淫売女、尻軽女、お前はまるで娼婦だと目一杯の悪態を吐く。
どんなに罵ろうとも、俺は知っている。
お前の身体が誰のものでも無かった事を。
俺の中でだけ咲き乱れ花を咲かせていた事を。
俺は知っている‥…
俺の心を照らしていた太陽は沈んだ‥…
残されたのは、真っ暗闇の中、木偶(でく)として生きていくことだけだ。
それぞれの心に様々な思いを残し、宴は終わりを告げる。
**
俺は、乱暴に女を抱く‥…
つくしと違う女。
肌の色も、髪の色も、ベットの上で乱れ狂う姿態も 全てが別物の女。
抱かれた後に、女が口にする
「司さんは、可哀想な男なのね‥…」
「お前はどうなんだ?」
俺が聞き返す。
「私もそう。全てを諦めて生きてきたわ‥…愛する人との未来もすべて」
女の顔を初めてまじまじと見る。木偶は俺だけじゃないって事かと‥…
女が初めて俺に向って本物の微笑みを向け、話し始める‥…
愛する人がいるの。生涯その人だけを想っていくと心に決めているのと。いつか身も心も自由になれる日が来たらその人の元に私は行くの。
俺の目を真っ直ぐに見つめ話すグレンダを、俺は初めて美しいと感じた。
「お前はそれでいいのか?今すぐ飛んで行きてぇと思わないのか?」
「飛んで行ければ、もう既に飛んで行ってるわ‥…司さんだってそうではないの?」
「あぁーそうだな」
グレンダが俺に提案を持ちかける。どうせ私達に課せられた義務ならば、なるたけ早く、子供を作りましょうと。子供が出来たら性交渉はそこでお終い。子育て以外は、お互いにお互いを干渉しない家庭を築きましょうと。
「好きでもねぇ男に抱かれてお前は平気なのか?」
「うふっ、本当は死ぬほど嫌よ。でも、あなたとなら大丈夫だわ。」
少し間を置き、グレンダがポツリポツリと話す。
「それにね、あの人でないのなら、誰に抱かれても一緒なの‥…あなたは淋しさを抱えてる。だったら私は他の誰かではなく、司さんあなたがいいわ。」
つくしでないのなら、誰でも同じ。だったら相手にも、愛する奴がいる方がいい。フッ確かにな。
俺等は、二人で笑い合う。
魑魅魍魎の世の中を生きる仲間として、同志として笑い合う。
グレンダは、俺を男として一生愛する事はねぇ。
俺は、グレンダを女として一生愛する事はねぇ。
だからこそ成り立つ、俺達の愛。同志としての愛。
愛は一つじゃねぇ事を、俺は知る。
***
「ねぇつくし、どうせなら嵐山の別邸にお招きしよう。別邸ならゆっくりして貰えるからね。」
薫の提案でペントハウスではなく
滋さんとナダー、桜子と千尋さん、悠斗とかおるちゃんの6人を嵐山の別邸にお招きする。
冬だと言うのに、色とりどりの花が咲き乱れている嵐山の別邸
薫が、あたしの髪を撫でながら
「僕たちが出会った季節がもうじきくるね。その頃には正式に僕の婚約者だね。」
ナダーが笑いながら嬉しそうに
「今日のお披露目で、つくしは、もう正式な婚約者として扱われているよ。ブルーダイヤは宝珠の妻の証だろ?」
「綺麗だったねぇーブルーダイヤ。つくしに良く似合ってたね。ねっナダー」
「今日の滋も、とっても綺麗だよ」
見つめ合う二人に。見つめるみんなの顔は笑顔でいっぱいだ。
かおるちゃんと、滋さん、桜子の3人は、すぐに意気投合して和気あいあいと話しに花を咲かせている。
悠斗達が嬉しそうに幸せそうに、愛する女性(ひと)を、眺めている。
薫が、あたしを見つめ何か小さく呟いた‥…
「つくし‥…ゴメン。」
「っん?何がゴメンなの?」
「うーーん。実は、つくしがとっておいたアップルパイ食べちゃったから。ゴメン」
「えぇっ〜 favoriteのアップルパイ?えぇ〜楽しみにしてたのにぃ」
「明日、帰りに買って帰ろうか?」
「うん。それなら許す」
薫が嬉しそうに微笑んでくれて、あたしは安心する。
**
今夜2人きりになったら、つくしを壊してしまいそうで‥…皆に泊まって貰える嵐山の別邸に招待する事にした。
嵐山の別邸は、つくしと再び巡り逢えた想い出がつまった場所。桜舞い散るあの日‥…あの時から僕は、僕の人生を生きている。作り物でない僕の人生を。
つくしを愛し、心が痛い。苦しい。辛い。哀しい。だけどだけど、それ以上に、幸せなんだ。彼女が居なければ僕は生きていけないんだ。
僕は、つくしに呟く‥
「つくし、愛してゴメン」と。
僕が愛さなければ、きっとお爺様もお婆様も君の力になって司君を救ってあげただろう。
僕が愛さなければ、君は司君の側に微笑んで居られただろう。
つくし‥…君を愛してしまった僕を許して。
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