ずっとずっと 87
一昨日から、パパやママ、進が九州から上京し、筒井の邸にお世話になっている。
場違いだからと、婚約発表のパーティーの出席を必死で断るパパやママを、薫が必死に説得してくれた。片倉さんが、パパやママに付き添ってくれる事になった。衣装も全て、筒井の邸で用意がされている。
全身エステを受け、プロにヘアーメイクを施されたママは
「ねぇ、つくし、ママちょっと綺麗じゃない?」
なんて、悦に入りながら、可愛らしく笑う。
雪乃さんも、亜矢さんも、あたしの家族を、身内として大切に扱ってくれている。
「進君は、大学病院で働くのかしら?」
「はぁ、まだなんとも」
「アメリカで最先端医療を勉強するのも視野に入れてみたらいかがかしら?ジュエルの病院も向こうにあるから、力になれてよ。ねぇ、しぃちゃん。」
雪乃さんが盛んに勧めて
「お婆様、進君の考えが一番ですから。」
薫がたしなめると、
「家族の少ない私達に、可愛い家族ができたんですもの。そりゃあ一生懸命になるわ。私達で出来る事ならいくらでも、力になりたいの」
そんな風におしゃって下さる。
「進君、祖母はこうと言い出したらきかない性格だから、進君さえ良ければ、将来的に、アメリカ留学も考えてみてよ。」
心臓外科医になりたい進にとっては、臨床経験を積めるアメリカへの留学は願ってもない、申し出だろう。
「薫さんの周りの人は皆、俺等に良くしてくれるんだね。姉ちゃんは、薫さんに本当に愛されてるんだね。俺、安心したよ。姉ちゃん、幸せになってよ!」
そう言いながら微笑む。いつの間に、彼はこんなに大人になったのだろう?
いつもあたしの周りを、「姉ちゃん、姉ちゃん」と呼んで付いて回っていた、可愛い弟。
いつの間にか、背丈も心もあたしより大きく成長している気がして、頼もしくなる。
「うん。ありがとうね。」
あたしは、にっこり微笑んだ。
俺は、姉ちゃんと、道明寺さんの恋をずっと見てきた。
すっげぇ辛い事が、何度もあって何度もこんな辛い恋なんて、姉ちゃん辞めちゃえって思ってた。
どうせなら、類さんとくっつけば良いのになぁーなんて、勝手に考えてた時もある。
そんでも、姉ちゃんは、道明寺さんが好きで好きで、一緒にいる姿が姉ちゃんそのまんまで。俺は、こっそり近所の神社に2人の恋を応援したんだ。
一斉に、婚約報道が流れた時はビックリした。
何度かけても電話は繋がんないわ。繋がっても正月は帰って来ないって言うわで、本当に心配だった。
道明寺さんの婚約パーティーの翌日、父さんの所に宝珠を名乗る人達がやって来て,あれよあれと言う間に、姉ちゃんが婚約する事になった事を教えられた。
数日後、姉ちゃんに会いに京都に行った父さん、母さんが嬉しそうに帰ってきたんだったけな~。「進、つくしの結婚が決まったよ」って。
俺は、少しだけ姉ちゃんに、失望したんだ。姉ちゃんなら何があっても道明寺さんを諦めないだろうって思ってたから。道明寺さんも何があっても姉ちゃんを諦めないって思ってたから。
だけど、実際に薫さんに会って、この男性(ひと)なら、姉ちゃんは幸せになれるって思ったよ。
薫さんの周りの人達みんなが、姉ちゃんを欲してくれる。喜んで、姉ちゃんを迎え入れようとしてくれている。
どうか、どうか、俺の大事な姉ちゃんを幸せにしてやって下さい。
***
つくし達を乗せた車が、会場となる豪華客船に向う。
LUCYとジェエルの経営統合の発表とあって、錚々たるメンバーが集結してくる。
マスコミには一斉に、LucyJewell の代表、宝珠薫のインタビューと文章が送られている。この船上内でのパーティーの様子に関しては、マスコミは、シャットアウトになる。
世界中の要人が一同に介するため、船乗組員、SPは綿密な基準のもと選ばれているのだ。また、ここに参加すると言う事が、経済界において何を意味するのか‥知らぬものはいないだろう。
今回の会場は、”Déesse de la lumière ” 光の女神と名付けられた LucyJewell社の処女航海クルーズでもあった。
この船を、客人の多さを目の当たりにした瞬間が、
つくしが、自分の婚約者の立場を初めてきちんと理解した瞬間でもあったのかもしれない。
そして、彼に歯向かうのは、愚かな事だとこの場に呼ばれた人間は理解するだろう。
薫は、絶対王者なのだから。
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