ハート石伝説 前編 総つく
何の気はなしに漏れ聞こえた会話
「ねぇねぇ、ハート石伝説って知ってる?」
「うん。なになに?」
「‥へぇっーーー まじか」
「ホントらしいよぉー」
「えぇーー もっと早く聞きたかったなぁ~そしたら竹井君との恋も実ってたかもぉー」
「くふっ、それはどうかわかんないよー」
大きな笑い声と共に、女子高生が過ぎ去って行ってく。
ハート石伝説?
お城にハート? あら 面白そう。
恋の成就? あら 素敵。
***
見目麗しい男が一人、空港に降り立つ。
美しく妖艶。その言葉がこれほど似合う男もいるものだろうか?
平成のたらし‥ いやいや、平成の色男。
だがしかし‥ この男何やら機嫌が悪いのか?ブツブツブツブツ文句を言っている
「はぁっー、初釜も一段落ついてやっとこ、時間が取れる筈なのに、打ち合わせだ?下見だ?はぁっーマジわかんねぇ」まだまだ、ぶつぶつぶつぶつ 続きそうなので‥
時間をちょいと遡ってみましょうかね。
「総二郎さん、総二郎さん」
家元夫人が、総二郎を呼ぶ声が邸の中をこだまする。
かぁっー あの人が俺をああやって呼ぶ時は、大概があまり歓迎出来ねぇ用事だ。今度はなんだ?ったく、これから俺は、ちょっくら可愛い子ちゃんを誘って、男としての俺をだなっ‥ ここは、いっちょバックレルか?
「若宗匠、若宗匠」
弟子の杉田までもが、俺を捜し出したようだ。
しゃあねぇ‥出掛けるのは、話しを聞いてからにすっか。
で、今に至る。総二郎。
「はぁっー やっぱ聞かなきゃよかった。ようやっと羽を伸ばせると思ったのに、昨日の今日でコレかよ。ったく参るよなぁー」
一瞬、そう一瞬 嗅ぎ慣れた香りが鼻腔をくすぐる。
抹茶の匂いと共に,清涼感のある香りがする。伽羅と桂皮を併せた香り‥…
フッ、こんな所にいるワケねぇーのにな。俺も焼きが回ったな。
一時期止めてた女遊びを、復活させようとした原因。
俺の惚れてる、でもどうにもなんねぇー女の香り‥
物思いに耽ってる俺の肩を叩く奴‥
「西門さん、西門さん、西門さん、に・し・かどーーーーー」
えっ、な、なんでお前がココにいんだ?
「ま、ま、牧野? なんでお前ココにいんだ?」
「あん?なんでって?仕事に決まってるでしょうが。西門さんこそ、なんでココにいるの?ってか、もしかして同じ飛行機だった?」
な、な、なんなんだこの展開は?
ってか、なんだお前のその明るさは‥
まぁ、俺の事なんて所詮そんなもんにしか考えてねぇって事か。
「に、しても久しぶりだねぇ~ あたしも校了やらなんやらで、忙しくなちゃったし、西門さんも年末年始は忙しいもんね~」
忙しいだけが、理由じゃねぇだろうよ。
かぁっー こいつばっかりはっ ったくよぉー
「あぁー、目の回る忙しさだったぜ。」
「だよねぇー」
くくっ、男の純情、踏みにじっておいて「だよねぇー」かよ
やっぱ牧野だよな。
「ったく、うちのデスクも鬼だね。鬼。一昨日まで徹夜、徹夜でさぁー一日休んだだけで、佐賀に行けだよぉ~」
「一日休めりゃ、いいだろうよ。俺なんか休みなしで、佐賀に行けだぞ」
「ククッ いい気味じゃん」
「ハァッ?ったくよぉー」
ハァッーじゃないよ。ハァッーじゃ。ホントいい気味なんだから。
だって、そうでしょうが? 毎週のようにあっていたのに、いきなり音沙汰なし。
あたしが送った、誕生日プレゼントにも、「サンキュー」の一言だけ‥
挙げ句の果てに、あたしの誕生日にはシカトだよ、シカト。
ハァッーは、こっちだよ。こっち。
「ってか、お前、稽古は来てんのか?稽古は?」
「うん。アレ?12月の終わり稽古は、西門さんが忙しいとかで、恭介さんがお稽古つけてくれたけど、聞いてない?」
恭介が稽古?あん?聞いてねぇぞ。チッ、あいつは油断出来ねぇんだよな。
「聞いてねぇ。」
「そっかぁ、初釜はね、京都の有楽さんの方で寄らせて頂いたよ。」
有楽‥ アイツーーー
「お前、俺の内弟子だろうが?あんで恭介が終い稽古で、初釜が有楽だよ。」
あぁっー? 終い稽古も何も、音沙汰なしだったのは、あんだでしょうが。
初釜だって、有楽さんから連絡来て行っただけだよ。
文句の一つでも言おうかと思ったけど‥何だか大人げない気がしてやめてみた。
「「ところで‥」」
声が重なり合って、お互いにどうぞどうぞと目でやり取りして
「お前、今日の予定はどこだ?」
「うん?これから佐賀城に行くの」
「あっ?佐賀城?佐賀城って佐賀城か?」
「うん。」
「俺も佐賀城だわ」
「へぇー、もしかして野点の打ち合わせ?」
「お前、良く知ってんな」
「うふふっ。実はね、うちの雑誌で4月号から、伝統文化の特集くむんだ。で、お茶を習っているあたしめに白羽の矢が立ったのよぉー。な、な、なんとですね~、特集のサブチーフだよ。サブチーフ。」
嬉しそうに、報告する牧野。
「そっか、良かったな」
「うん。でね、佐賀城の野点の特集組むのに、今回打ち合わせって事で来たのよ。」
「「あっ」」
って事は、行き先は一緒で、そんでもって打ち合わせにコイツも入るって事か。
なら、悪くはねぇー話しだな。
フッ,俺もかなり未練がましい奴だな。
「ねぇねぇ、もしかして3月の野点、西門さんが振る舞うの?」
「あぁ、その打ち合わせだ。」
「おぉーーぉ お師匠様。何卒宜しくお願い致します。」
「あははっ、良かろう。」
俺等を乗せたハイヤーが佐賀城に着く。
ハート石伝説 続きは 明朝6時更新予定♪
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