ずっとずっと 88
ジュエルとLUCYの経営統合と共に、LucyJewellの代表として 宝珠薫が紹介される。
自信に漲り、王者の風格を漂わせた美しい男。薫の登場に、皆が詠嘆の声をもらす。
TSUTSUIの者達は、新しい帝国の王の誕生に心から喜びの声をあげる。
美しく若き王者。宝珠薫。
薫が率いる、LucyJewellの誕生によって、自分達の立場がより盤石なものになるのだ。
伊織と由那の死によって、暗雲立ちこめていたジュエルグループとLUCYに新たな風を呼び、絶対王者を誕生させた存在を彼等は既にしっている。
筒井栄が、可愛がり大事に大事に育て上げた少女。
彼女の存在によって、薫が王者として目覚めた事を彼等は知っている。
桜色の美しいドレスを身に纏い、レッドダイヤモンドを胸に輝かせた少女。星野つくし。
薫が愛おしそうな眼差しをつくしに向け、手招きをする。
あの美しい男からあんな眼差しを向けられたいと、会場内で溜め息がもれる。
一斉に皆の視線がつくしに向けられる。感謝と羨望の眼差しが‥
その眼差しの中に、悪意はない‥
なぜ? 彼等は知っているから。
TSUTSUIセミナーに選ばれた彼女の実力を。
美しき王者に相応しい、魅力多き少女だと彼等は知っているから。
彼女を蔑む事は、自分の身を滅ぼす事だと知っているから。
皆が、薫とつくしの婚約を祝う。
険しい顔の男が一人‥
「司、もっとニコヤカに笑って‥」
女が耳許で囁く
「あぁ。」
女が、男の足を踏む。
「ちょっ、お前」
「私の腰に手を回して、ニコヤカに笑って」
女に言われたままに行動する。
女が‥グレンダが、俺の身体に密着していくる。
俺は、わざとグレンダの耳許に唇をつけ囁く
「このペテン女」
グレンダは、にこやかに微笑みながら
「司さん、愛の囁きは、お邸に戻ってからにして頂戴な」
戯言を言い返す。
前から、筒井会長夫妻が歩いてくる‥
狸親父‥俺は心の中で毒付きながら、グレンダと共ににこやかに、挨拶を交わす。
筒井の爺さん達が立ち去ると
グレンダが小さな小さな声で囁く
「良く出来ました。ほらっ、次はお義母様よ」
ニコリと笑う。
ババァが現れ、俺等に声をかける。
俺等が仲睦まじそうに話しているのを見て安堵し、二言三言話して、他の場所に移動する。
ヴァイオリンの演奏が始まる。美しい調べが会場内に響き渡る。
祝いの調べ。
ヴァイオリンの演奏が終わり、ピアノ演奏に変わる。
「風にあたりましょうか?」
グレンダが俺に言う
「あぁ」
この船の名物 光の森 で、夜風にあたる‥
月が空に浮かんでいる‥
こんな美しい月夜を、俺は知っている。
愛しい女と眺めた月夜の晩を‥
刹那‥
俺の愛おしい女が現れる‥
俺と女の2人きり。時間が止まる
**
サロンコンサートの演奏を気に入った亜矢さんが、アレンを呼んで下さった。
薫が、あたしの元を離れたちょうどその時、演奏を終えたアレンがあたしの元にやってくるのが見えた。
「アレン」
「つくし」
あたしとアレンは再会を喜ぶ。
アレンの顔を見ると、少し青白い顔をしている。
「どうしたの?」
「可笑しいことに、此処が船だと意識した瞬間に、少し船酔いしたみたい。」
「ふふっ、たしかに船の上ですもんね。あっ、森があるのよ。行ってみる?」
あたしはアレンに聞く。
「一緒に来てくれるの?」
アレンが可愛らしくあたしに聞いてくる。
心なしか先ほどよりも顔色が良くないようだ。
「もちろんよ。」
薫に声をかけようかどうしようか迷ったが…
アレンの蒼白い顔が心配になって、声を掛けずにその場を跡にしてしまった‥
月夜の光が、輝いている。夜風が冷たい風を運んでくる。
こんな月夜を、あたしはあいつと見た事がある。
美しい月夜を‥
幸せだったあの月夜を思い出した瞬間‥
目の前に、あいつが現れる。
アレンが、いつの間にか姿を消し
司とあたしの2人きり。
あたしは、全てを忘れた。
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