ずっとずっと 98
心は、司を求めているのに、身体は熱く強く薫を求める。
一度知ってしまった、ぬくもりを快楽を手放せない。
猾い女。
一体何時から、あたしはこんな風になってしまったの?
高校生のあたしは、もっと強かったよね?
雑草のつくしじゃなかったの? そう自問自答する。
薫を求め、あたしの身体は疼くのに、心は司を求め疼いてる。
本当は、司に抱かれたい。
叶わぬ夢だから、あたしは薫に抱かれる。
いつか天罰が下る気がする。
ううん。こんな女には天罰を与えて下さいと。あたしは願う。
薫は、あたしだけを愛し、あたしだけを見てくれる。
あたしの幸せは、きっと此処にある。
アタシヲ スクッテクレタヒト
アタシヲ ヒトリニシナイトチカッテクレタヒト
それなのに‥ あたしの心は、薫を裏切り、あいつを思って涙を流す。
薫が寝入ったのを確認して、ベットから抜け出す。
月を見て、アレンの曲を聴きながら、あいつを思う。あたしだけの時間。
カチリッ
ドアが開く音がして、後ろを振り向くと薫が立っている。
薫があたしを強く抱きしめ、口づけをする。
あたしの素肌が、月夜に照らし出される。あたしは漂う。
***
「片倉は嫌ってどういう事?」
「嫌ってワケじゃないけど‥‥」
「片倉をつけないなら、今日のアレンの演奏会には行かせられないよ。」
「薫も今日のメンバーは知っているでしょ? 女性ばかりのメンバーなのよ?そこに男性が来るなんて無粋でしかないわ。」
薫が眉を顰めている。
「ホテルの外には絶対に出ないから。お願いします。」
「約束出来るの?今度、約束を破るような事があったら、一人でどこにも行かせられないよ?それでもいいの?」
「絶対に、絶対に守るから‥お願い。」
「後で連絡を入れるから、もう少し考えさせて」
そう言い残し、薫が出掛けて行く。
朝から言い争いをしてしまった。
「はぁっ〜」
今日、何度目の溜め息をついた事だろう。
もっと、きちんと話せば薫も怒らなかっただろうに‥‥
「まだ怒ってるよね?」
流れる雲を見ながら、どうしてもっと薫の心を思いやれないのだろうと後悔する。
♪♬♪♬♪
薫からメールが届く。
朝は、強く言い過ぎた。ゴメン。
会場の中には、誰もつけないから気にしないで楽しんで来て。
短い文章の中に,薫の精一杯を感じながらも、片倉さんが付いて来ない事にホッとする。
あの人は、苦手だ。
司を思っている気持ちが、もしも片倉さんにバレたら‥そう思うと,空恐ろしくなる。
あはっ、司を思う気持ち? そんな事がバレたら、片倉さんだけじゃない‥
あたしを取り巻く全てのもの全てが、司を窮地に追い込む事になるだろう。
そして、それを助けられるのは、薫だけ‥ あたしは薫から逃げれない。
ははっ 良く出来たコントみたいな結末が想像出来て笑い出したくなる。
極々一般的な家に生まれたあたし。柵からもっとも遠い所にいた筈なのに、
気が付いたら、いつの間にか雁字搦めの人生を歩み出している。
あたしは、いつ選び間違えたの?
そんな事、今更考えた所で、どうにかなるわけでもないのにね。
窓の外を鳥が飛ぶ。大空に向って鳥が飛ぶ。
あたしは,窓の外を眺めながら、大きく背伸びをした。
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