ずっとずっと 101
私達は貴女が、ただただ大好きなだけ。なのに私達は、あなたをこんなにも傷つけている。
ねぇしぃちゃん、私達はあなたを手放なさなきゃいけない?
手放してあげる事が、あなたに対する愛なのかもしれない。
だけどごめんなさい。
一旦、動きだしてしまった流れを、変えることなんて、無理なこと。
薫が、雪乃ちゃんが、いいえ筒井に宝珠に関わる全ての人間が、そんな事を許す訳がない。
彼等は知っているのだ。しぃちゃんを失えば、彼等自身の長を失う事になる事を。それは筒井の宝珠の崩壊を意味する。そして彼等自身の衰退をも意味するのだから。
それならば、せめて束の間の自由だけは、しぃちゃんに与えてあげたい‥
ドアの外には、片倉が目を光らせている。もうじき、薫の命令を受け、SPもやって来るだろう。
アレンの演奏会でグレンダに会う事を楽しみにしていた、しぃちゃん……
薫は、本当に行かせないつもりなのだろうか?
名簿を確認しても
普段、穏やかな薫が見せた激情。薫としぃちゃんに、一体何があったのだろう。薫は何をそんなにも恐れているのだろうか?
しぃちゃんが落ち着きを取り戻したのを確認して、部屋を出て片倉に告げる。
「しぃちゃんと、出かけて参ります。。」
「奥様、勝手な事をされては困ります。薫様は、邸の中につくし様を押し止めておくようにおっしゃっておりました。」
「今日、出掛ける事は最初から決まっていた事です」
「例え、奥様のご指示でも、つくし様を表に出す事は出来ません。」
「わかりました。表に出さなければ宜しいのですね?」
「お解り頂けて嬉しゅうございます。」
ならばと‥ グレンダに連絡を入れた。
この時の私は、片倉のあまりにも融通の効かない態度に腹を立てていたのだ‥‥
***
「薫様にご連絡を入れさせて頂きます。」
「あら、しぃちゃんを邸から出さなければ文句はないのでしょ?」
美しく整った片眉を上げ、冷たく言い放ち笑う。
片倉さんが、苦虫を噛みしめたような顔をして部屋から出て行く。
幻想的な音色をアレンが奏でる‥‥
亜矢さんが、アレンの演奏会を、筒井の邸でやるようにグレンダに掛け合って下さったのだ。
TSUTSUIに関係する人間は勿論の事、出席者の皆は逆に大喜びで筒井の邸に来て下さった。
亜矢さんは、直前まで静寂を守り、一気に用意をなさった。
始まってしまっては、薫に止める事は愚か、口を出す事は出来ないだろう。
「グレンダと共に、ホスト役をして頂戴ね。先ずはアレンの音楽をしっかり楽しむのよ。」
亜矢さんは、優しく微笑み、そう囁くと部屋を出て行く。
ゲストの方と共に、アレンの演奏を堪能する。
アレンの演奏が終わり、会食に移る。
贅を凝らした筒井の邸の広間に、感嘆の声が上がる。
亜矢さんが現れ
「突然に、会場を変更してしまってゴメンなさいね。お詫びと言っては何なのだけど、シャトー・ディケムのヴィンテージワインを楽しんで頂戴ね」
ニッコリと微笑まれ、貴腐ワインを皆に振る舞う。
グレンダとアレンが大層喜んでいる。
会食が終わり、グレンダとアレンを残し皆さんがお帰りになる。
亜矢さんの勧めもあって、グレンダとアレンには筒井の邸に泊まって頂く事になったのだ。
筒井の邸のあたしの部屋で、3人で話しをする。
「ねぇ、突然筒井の邸に変更なんて、何かあったの?」
あたしは、今日あった事を2人に話す。2人は黙って話しを聞いてくれた後に
「薫さんを警戒させちゃったのね‥これからは気をつけないといけないわね」
気をつける? 何を?
きょとんとした顔をしてそう聞くと
「司と会いたくないの?」
グレンダが唐突にそう聞いてくる。
あたしは、目を見張る
会ってはいけない。会いたいと思ってはいけないと思っているのに
口をついて出た言葉は 「会えるの?」だった。
グレンダがニコリと笑って
「会えるわ。と言うよりも会わせてあげる。うふっ司もこの頃、きちんと言う事を聞いてお利口さんだから、そろそろご褒美をあげなくっちゃね」
アレンが笑って
「司も少しはお利口ちゃんになったの?」
「えぇ、この所とっても評判が宜しいのよ。」
グレンダが、司の近況を教えてくれる。
「ただね‥可哀想な事に、疲れ切らないと中々寝付かれないみたいね。」
「お酒の量は?煙草の量は?」
「浴びるように飲むという事は、無くなったから安心して頂戴。」
「薫とはいつからなの?」
アレンが聞く。
あたしは、薫との事をアレンとグレンダに話した。
「つくしも女だったってワケね。」
「薫とのセックスは魅力的?」
あけすけに聞いてくる二人‥
アレンが、グレンダに聞く
「司は、グレンダを抱くの?」
「うふふっ、司とは最初の1度だけよ。子づくりの為には頑張って貰わなくてはイケナイのだけど、ダメみたいよ。」
「あら、それではどうするの?」
「マチスの病院でお願いしようと思ってる。あそこなら口も堅いでしょ?」
「そうね。」
「あ、あの‥」
「あっ、ごめんなさい。今はつくしに質問していたんだったわね。で、どうなの?」
「あっ、そういう事ではなくて‥病院って?」
「子作りのためにね。跡継ぎを作るって、私達の重大任務でもあるからね。」
そうか‥ 司とグレンダは夫婦になるんだもんね。
でも、病院って?
「ベットは一緒なんだけど、司、私じゃダメみたいよ。まぁ、私にも丁度良いのだけどね」
グレンダがアレンを見つめながら、そう言う。
「司も大概失礼ね。グレンダはこんなにも魅力的なのにね」
アレンが、愛おしそうにグレンダの髪を撫でる。
あたしは、官能的な2人にクラクラしそうになる。
「で、薫とのセックスはどうなの?」
「あの指、上手そうよね〜」
「案外タフそうだしね」
「で、どうなの?」
あまりにも遠慮のない2人の会話‥
卑猥な事を聞かれている感覚がないくらいに、美しく微笑みを浮かべながらアレンが、グレンダが聞いてくる。
薫とのセックス?
「薫とのセックスは、麻薬のよう‥」
あたしは、ポツリと口にしていた。
その時、全てが解った
あぁ、そうか‥ あたしは、薫を裏切り続けていたんだと。
身体は、貪欲に薫を求め、それなのに心は司を求めている。
もう幾度抱かれたか解らない程に、この身は、薫に抱かれたと言うのに‥
ただただ、快楽を求めるだけに抱かれているに過ぎなかったんだと。
薫が怒るのも、あたしを束縛しようとするのも、仕方がないと言う事に気が付いてしまった。
丁度その時
トントントンッ
ドアを叩く音がして、声がかかる。
「つくし様、薫様がお戻りになられました。」
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