ずっとずっと 103
僕を僕だけを、見つめてくれるようになったのだ。
僕は2人に感謝をし、アレンとグレンダと交際する事を容認する。
僕とつくし、2人の間に穏やかな時が過ぎていく。
週末になると、僕等の仲間が尋ねて来る。つくしは笑い、僕は幸せを感じる。
夜、彼女を抱く。
彼女の心も抱きしめられる幸せに僕は酔いしれる。 甘美な思い。
僕の世界に、燦々と光が降り注ぐ。
つくしと共に歩む。同じものを見て、感じて、触れて、他愛も無い事で笑い合う。
僕が幸せを感じるように、君も幸せを感じてくれていると信じられる。
翳りの無い幸せな時を過ごす。
司君とグレンダの結婚式に、2人で出席したのが6月の終わり‥
屈託ない君の笑顔に安堵した。
司君との事は、思い出として胸の奥に封じ込めてくれたんだと安堵した。
それから3月後、グレンダの懐妊を知る。
「薫、グレンダの所に遊びに行ってもいい?」
憂いのなくなった僕は、つくしの頼みに快諾をする。
**
あたしは、幸せになる為に、司への思いを封印する事に決めた。
司とグレンダの結婚式にも笑って出席する事が出来た。
グレンダの妊娠を知った時も、心からおめでとうと思えた。
違う。あたしはあの二人が慈しみ信頼しあっているけれど、愛ある結婚じゃないと知っていたから平常心で笑っていられたんだ。グレンダの妊娠だってそうだ。司と直接の営みでないと知っていたから、心からお祝い出来たんだ。
グレンダに、一度だけ司に会わせて貰う約束をした。
きちんと「さようなら」をする為に。
グレンダから、懐妊の連絡が入る。声が弾んでいるのが電話越しでもわかる。
道明寺の邸に伺う事を、薫に許しを得た。
昔と変わらない道明寺邸。懐かしさで心がいっぱいになる。
タマ先輩が、あたしを出迎えてくれる。
グレンダがニッコリ微笑んで‥
「司には了解済みなんだけど‥ お腹の中の子ね、司とアマンダの子供なの。」
この人は、澄ました顔をして、いつも爆弾発言を落とす天才だ。
あんぐり口を開けているあたしに‥
「うふふっ、だからね可愛くて可愛くてたまらないの。司には感謝しても仕切れない。」
愛おしそうにお腹を撫でるグレンダ。
グレンダは、最愛の人の子供を手に入れたのだ。
「ってな、ワケで、司は生物学的にこの子の父親だけど、自由の身だからね」
ウィンクをして微笑む。
「グレンダ‥ あたし、司とは今日を最後に、もう会わないつもりで来たの」
「何故?」
「もうこれ以上、薫を苦しめたくないの。」
「司は?司はどうなるの?」
「‥‥」
「それでいいの?」
「良いも悪いも、選んだのは自分自身だから。」
「つくし‥ごめんなさい」
「っん?なんでグレンダが謝るの?」
「私、あなたを利用してた。」
「あら、そんな些細な事だれでもしてる事よ。」
今日、改めて解った‥
司がつくしを求めて止まないわけが‥
彼女は、強いのだ。
柳のように、吹けば飛んでしまいそうな風情なのに、決して折れない。
司との縁談が決まった時に、私は全てを受け入れた。
勿論、つくしとの事も了解済みだった。
私にも愛する人がいる。ならば都合が良いと心から喜んだ。
だけど、もしもあの時、司との縁談を断ったら、司はつくしと幸せになれたのかもしれない。
アマンダとの愛を貫き、もしも逃亡していたなら‥
この時、私は初めて激しく後悔した。自分の勇気のなさに
一つの魂を、私とアマンダだけではなく、司とつくしの魂まで、離してしまったんだと。
アマンダは、道明寺との縁談が決まる前に、一緒に行こう。そう言ってくれた。
だけど、小さな頃から決められたレールの上を歩んで来た私にとって、これ以上、人生からはみ出て行動する事が怖かった。道ならぬ恋をして、それを貫く事が怖かった。
フッ、アマンダと会い続け、アマンダの子供を生もうとしている私が何を言う?って事かしら‥
だけど、怖かった。アマンダを激しく求めて止まないけれど、それと同時に地位を、名誉を捨て去り、偏見の眼差しの中で生きていくのが怖かった。
つくしの事だって、アマンダがつくしを好きなようには、感じていなかった。
アマンダと会うのに都合が良かったし、アマンダとの子供を、司に了解させるのに、好都合っていう感情が先に立っていた。
切り札を手に入れたと思っていたに過ぎない。
彼女のなにを私は見てきたのかしら?
強くてしなやか。そして嘘がない女性。
彼女の側は陽だまりのように温かい。
改めて、司を不憫に思う。彼は、何があってもつくしを見放しては行けなかったと‥
一度、手にしてしまった薫は、決して彼女を手放さないだろう。
いいえ、手放そうと思っても、手放せないだろう。
私は、つくしのために決心する。
「ねぇつくし、あなたの願い事はなに?」
グレンダが、あたしに願い事はなに?と問う。
願い事‥なんだろう?
いまのあたしには願い事など何もない。
あたしは、曖昧に笑う。
「じゃぁ、覚えておいて‥あなたが心の底から望む願いが出来た時、私は何に変えてもあなたを応援するって。」
邸の中が、騒がしくなる。
司?司が帰ってきたの?
グレンダが部屋を出て行く。
トントン、ノックの音がする。
あたしの鼓動が早くなる。
司が、愛する男(ひと)が立っている。
「つくし‥」
司に駆け寄り、抱きしめてもらいたい。
いいえ、手を伸ばして司を抱きしめたい。
あたしは自分を制し
「この度は、奥様のご懐妊、大変おめでとうございます。」
笑って挨拶をする。
司が守ろうと決意を固めた道明寺財閥を、あたしも守る。
「LussyJewellとの合併事業へのご参加、大変有り難うございます。宝珠共々大変感謝しております。末永く宜しくお願い致します。」
司は、言葉を出さずに、あたしを見つめる。あなたの瞳に悲しみがうつる。
あなたを拒絶した言葉を投げつけながら、
何かの歌のフレーズのように、あたしを憎んでもいいから、永遠に愛していてと願っている。
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