ずっとずっと 104
俺の子供がようやっと出来たと、満面な顔でグレンダが笑う。
愛おしそうに、腹を撫でる。
実感が湧かねぇが、生物学的にガキが生まれる。道明寺の跡取りって奴だ。
ババァも、ボズウェルも、重役連中も、グレンダの妊娠を喜んでる。
でもよ、ボズウェルの親父殿、あんたの娘の腹の中の子は、俺のガキだが、あんたの娘のガキじゃねぇぞ。
まぁっ、グレンダが生むんだから、グレンダの子じゃねぇなんて疑わねぇよな。
ははっ、あいつも考えたもんだよな。
最愛の奴と添い遂げられねぇなら、最愛の奴の子供を育てる。
ククッ、俺様が、あいつに良いように使われたってワケだよな?
”Mi vida loca”
どうせ狂ってるなら思う存分楽しもうってか。
グレンダも、俺もどっかで、狂っちまってんだろうな。
何に狂ってるかもわかんねぇぐれぇ、狂っちまってんだろうな。
腹の子を愛おしそうに撫でながら
「明日、つくしがこちらに来るって。司はどうする?」
つくしが来る‥ 俺の愛おしい女。
世界一幸せにしようと心に決めてた筈なのに‥
俺は、あいつを捨てた。一番ひでぇやり方で。
俺とグレンダの結婚式の時、あいつは宝珠と共にやって来た。
あん時の俺、ずっとあいつを見そうになってたよな。グレンダに何度足を踏まれた事か。
アレンが演奏した瞬間、グレンダが見惚れるのを待った。足踏む用意をしてな。
グレンダの視線は、すげぇ自然でやんの。
でもよぉ、その瞬間あいつ等の今までの葛藤っつーのか?それが何となく見えた気がした。
ただ好きになった相手が、同性ってだけで、全て手放さなきゃいけねぇなんてな……
なんも持たずに生まれてりゃ、良かったのにな。
いっそ、魂だけになれれば、いいのかもな。
つらつらと考えていると、運転手から声がかかる。
「司様、お着きになられましたが」
慌てて、車を降りる。
逸る気持ちを抑え、グレンダの部屋をノックした。
つくしが振り向く。
腕を引っ張り、抱きしめてしまいたい。
あいつが、笑って俺に言う、
「この度は、奥様のご懐妊、大変おめでとうございます。」
よそ行きの顔で言葉を続ける‥
「LussyJewellとの合併事業へのご参加、大変有り難うございます。宝珠共々大変感謝しております。末永く宜しくお願い致します。」
なぁ、なんでそんな悲しそうな顔して、笑うんだ?
「なぁ‥つくし」
司があたしの名を呼ぶ。なんて心地が良いのだろう。
あぁ、あなたが好き。
もう一度抱きしめられて、キスをされたい‥
だけど、あたしはあたしを律して答える
「なんでしょうか?」
「色々悪かった‥」
ねぇ司、それは何に対する謝罪なの?
悪かったの後に、なんて言葉は繋がるの?
ねぇ‥教えて
気持ちとは裏腹な言葉を返す
「謝られるような事は、何もないと思います。」
司の片頬が、歪んで笑って、言葉を続ける
「つくし‥お前を幸せに出来ずに申し訳なかった。」
あたしは奥歯を噛みしめる。泣かないように‥
ここで泣いたら、あたしはあんたに縋ってしまうから。
あんたを愛してる、捨てないで と泣いて縋ってしまうから。
司の香りが、あたしの鼻腔を刺激する。
その瞬間、薫に縋って抱かれた自分を思い出す。
あたしは、司を愛する自由を自ら手放したんだと。
「どうぞ、気になさらないで下さい。」
司の視線と絡み合う。
ドアをノックする音がする。グレンダが慌てた様子で入ってくる
「つくし、片倉があなたを迎えに来てる。」
「そう‥」
司の目を真っ直ぐに見つめ
「楽しかった日々を有り難うございました。もう2人きりでお会いする事はないと思います。」
司は、何も答えない。
あたしは、部屋を出て片倉さんの元へ向う。
余計な事を詮索されないように、全ての思いを封じ込め、微笑みという戦闘服を着る。
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