ずっとずっと 111
やっぱり‥この2人は、今も愛し合っているんだ。
隠しても隠しても、零れ落ちる思い。
牧野も、司も後戻りなど出来ないのに、なぜ求め合ってしまうんだろう。
2人から、そっと目を離す。
窓から見える半月を見る。
牧野、あんたって何なんだろうね?
するりと、相手の懐に入っては、いつの間にかそいつにとって必要不可欠の人間になってんだもんな。
薫さんは、辛いだろうな。
掴まえた筈なのに、するりと手からすり抜けていく、愛おしい人を思い続けるのは。
牧野を好きって気持ちを手放せなどないから。辛くても辛くても、側にいて思い続けるのだろう。
牧野、あんた幸せになりたいって、言ったよね?
あんたが幸せで笑ってくれないと、俺も辛いよ。
ねぇ牧野、あんた幸せになんなよ。
あきらと2人で、司の側に行く。
男3人でグラスを傾ける。
**
カオちゃんと部屋に戻ったきり、2人とも居間に戻ってこない。
何か話し込んでいるのかな? このところ、やけに疲れ易い彼女。少し休んでいるのかな?
どちらにせよ、カオちゃんが居てくれれば安心だ。と判断する。
ノアとジョアと話した後に、丁度一人で立っていた司君に近づき話しかける‥
「司君、グレンダのご懐妊おめでとう。先日は、つくしがお邪魔させて頂いたようでありがとう。」
「あっ、いや‥こちらこそわざわざご挨拶頂きありがとうございます。」
道明寺司 美しい黒豹のような男。
彼を盗み見する。
この唇で何度つくしにキスをしたのだろう?
何度、愛を囁いたのだろう?
この腕に、何度つくしを抱きしめたのだろう?
この指で、何度つくしを逝かせたのだろう?
嫉妬で気が狂いそうになる。
「司君、僕はあなたに一度お礼を言わなくてはいけないと思っていたのですよ。」
我ながら、嫌な男だと思う。女々しい男だと思う。
だけど止められない。
司君が怪訝な表情で僕を見る。
「つくしを、彼女を手放してくれてありがとう。司君が、紙切れのようにつくしを捨て去ってくれたお陰だよ。」
そして止め刺す。
「司君、忘れないで下さいね。つくしを最初に手放したのは君だっていう事を。」
小さな頃から、美しい笑顔だと言われた笑顔を、向ける。
悠斗が、声をかけて来る。
3人で当たり障りのない会話をする。
ふと気が付いて、辺りを見回す。
つくしがまだ戻っていない。時計をみると30分以上が経過していた
様子を見に行こうと思った瞬間、片倉が
「薫様、恐れ入りますが、棗会長より、お電話が入っております。」
そう伝えて来る。
居間を出て、電話にでる。
新事業の話しで、お爺様と20分ほど話す形になっていた。
居間に戻り、つくしを探す。
つくしもカオちゃんも、まだ戻っていないようだ。
司君達と話していた、ノアが僕に声をかけてくる。
「薫、僕等は、そろそろお暇するよ。」
つくしとカオちゃんを呼びに行こうとすると
ジョアが
「あっ,呼びに行かなくていいよ。姫様2人は、色々お疲れで寝てるんじゃない?宜しく伝えといてよ。」
悠斗を残し、皆が帰るようだ。逸る心を抑え、見送る。
「あいつら、疲れたのかな?」
「そうかな?やっぱり、ちょっと覗いて来るよ。」
廊下を歩きながら。ふと庭を見ると、カオちゃんがベンチに腰掛け月夜を眺めている姿が見える。
10月も半ば過ぎている。もう夜風は冷たい。
つくしも月夜を見ているのかな? 冷えては身体の毒だ。
庭に出て声をかける。
「カオちゃん、もう夜風は冷たいよ。」
辺りを見回す
「あれ、つくしは?」
「えっ」
カオちゃんを残し,僕はつくしの部屋に走る。
つくしの部屋をノックする‥‥返事がない。
「片倉‥」
片倉を大声で呼ぶ。
「つくしがいない。」
「いつからでございましょう」
「解らない。だけど最後に見てから1時間は経ってる。」
「少しお待ち下さいませ。他のお部屋を確認して参ります。」
悠斗とカオちゃんが、心配げな顔で
「しぃが居ないって?」
「カオちゃん、つくしといつまで一緒にいたの?」
「ごめんなさい‥お部屋に戻って、少ししてから、私一人でお庭に出たの。」
全室見回っていた片倉が戻って来る。首をふり
「薫様、つくし様がお消えになられました。」
「SP達は?」
「ロビーで待機させております。」
「確認して」
「はっ、はい。」
「スマホの位置情報も一緒に確認して。」
ロビーには、つくしは通っていないと言う。
スマホの位置情報を確認すると、どうやら関西空港に向っているようだと解る。
僕は安堵して、全ての出入り口の前にSPを待機させるように命を出す。
あと30分ほどすれば、つくしが見つかったと連絡が入る事だろう。
大丈夫、大丈夫、じきに見つかる。
じきに僕の元に、お腹の子と共に、戻って来る。
大丈夫、大丈夫だ。安心しろ。
自分に言い聞かせる。
悠斗とカオちゃんが心配そうに佇んでいる。
「あっ、ごめん。2人は帰っていいよ。」
そう告げても帰ろうとしない。
カオちゃんが震えながら
「ルゥさん、ごめんなさい。ごめんなさい。」
謝っている。
「カオちゃん、違うよ。カオちゃんのせいじゃないよ。それに、すぐに見つかるから大丈夫だよ。」
カオちゃんの顔色が悪い。悠斗に言って連れて帰って貰う。
「見つかり次第、連絡を入れるから。
2人を見送り、連絡を待つ。
30分、1時間待っても連絡が入らない。
片倉が色々な所に連絡をとり、1時間の内で解った事は、2つ。
タクシーに乗り京都駅に向った事。
電源を切ったスマホが、特急はるか から見つかった事。
不安で心配で押しつぶされそうになる。
一睡もせずに朝を向える。
どこからも連絡は入らない。
朝を待って、お爺様達に報告を入れる。
筒井の邸に向う
「何故、すぐに連絡を寄越さんのじゃ」
大層、ご立腹の様子だ。
雪乃お婆様は、今にも倒れてしまいそうだ。
宝珠のお爺様、お婆様も筒井の邸に既に到着していた。
秘書達が、方々に連絡をとっている。
つくしの行方は見つからない。
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