ずっとずっと 113
アレ? ココどこだっけ?
あぁ、そうか、ここは‥
「つくしちゃん起きた?」
インディゴちゃんが、あたしにそう声をかける。
「あっ、おはよう」
「おはよぉー」
***
大江で目が覚めたあたしは、宮津まであと15分。寝過ごさないようにしなくっちゃと頑張ったのにも関わらず、寝入ってしまったようで‥
「ねぇ、ねぇ、終点だよ。ぅんと、つくしちゃんだったよね?ねぇ、ねぇ起きて」
そう言って、あたしを起こしてくれたのが、インディゴちゃん。
駅に降り立ち、天橋立に行こうとしたら、もうすでに天橋立行きの最終列車は行ってしまった‥
呆然とするあたしに、インディゴちゃんが
「もしかして、電車行ちゃったとぉ?」
「うん‥」
「ってか、こんな遅く泊まる場所決まっとるの?」
「ううん。」
あきれ顔のインディゴちゃんが、
「じゃぁ、うちにお出でな」
そう誘ってくれたんだった。
あははっ、あたしって厚顔無恥だ。
遠慮しつつも、ちゃっかりしっかりお泊まりさせてもらって‥
飲んで騒いで、ぐーすか寝た。
起きたら、ちゃっかりしっかりインディゴちゃんの作った朝ご飯をご馳走になってる。
「で、つくしちゃんは、これからどうするとぉ?」
インディゴちゃんがあたしに聞いてくる。
あたしが言葉に詰まっていると
「まぁ、良くわかんないけど、2週間くらいなら、あたしもコッチにいるつもりだから、泊まってもいいとよぉ。」
インディゴちゃんが女神に見える
「インディゴちゃんの事、ミューズちゃんって呼ぼうかな?」
「あははっ、そりゃいいとね」
一頻り笑って、インディゴちゃんが出掛けて行った。
まさか、こんな所で会うとはなぁ〜 ホント、人生は解らない。
インディゴちゃんの本当の名前は、たしか藍田ワタルさんだっけかな?
パラ部の新歓コンパで行ったショーパブでバイトしてた、京大OB。
何しろ、綺麗なワタルさん。もといインディゴちゃん。
ざっくばらんな性格で自分の性癖は隠さない。
なんで、男も女も関係なく、インディゴちゃんは皆の人気者だった。
ところで、ここってどこなんだろう?
バルコニーの前には、海が広がる。
うーーーーん 大きく伸びをする。
まっ、いいかっ。
あぁーー 気持ち良いなぁ〜
「ふわぁっ〜」
何だか、温かな陽射しを受けていたら、また眠たくなってきて、カウチで微睡む。
おでこに冷たい感覚がして、目を覚ます。
大きな犬が、あたしのおでこをペロッと舐める。
「うわっ」
「くくっ、はい。どうぞ。飲んだ次の日は水分補給が必要よ。」
渡されたミネラルウォーターを飲む。
うーん、美味しい。
「あんたって、不思議な子よね?」
いやいや、インディゴちゃんの方が不思議な先輩です。
「そ、そうですか?」
ニヤリと笑う。
「で、あんた何から逃げて来たの?」
あははっ、ストレートな人だなぁ〜
この人には、嘘吐いちゃいけない気がして、名前を伏せて、全部話した。
付き合ってた男に振られて、新しい男に抱かれて婚約して、結婚する間近になって、この人だけを見つめて愛していこうと決意したのに、やっぱり付き合ってた男が忘れられず、思わず逃げて来ちゃったって。
インディゴちゃんは、全部聞き終わった後に
「そりゃぁ、陳腐で、ヘビーだわ」
一言そう言ってから
「じゃぁ、出掛ける時は、あたしの部屋からウィックと帽子、サングラス着用とね。」
「ところで、あんたこん中で、何語が訳せるとぉ?」
「うーん。英語、フランス語、イタリア語 あたりなら大丈夫かな」
「じゃぁ、手伝ってよ。」
昼間は、インディゴちゃんの仕事を手伝い、日が暮れ始める辺りから散歩する。
天橋立を散歩する。 インディゴちゃんの愛犬ゾラと共に。
インディゴちゃんは、あの後、何も聞かない。何も言わない。
ただ、あたしと他愛無い会話を交わす。
だから、あたしは思いをぶつけられた
「インディゴちゃんは、辛くないの?」
「辛い?何を?」
「男に生まれた事‥」
「あははっ、そうやね、辛くはないとよ。たまにビックリはするけどね、あららって」
「そっか。」
「つくしは、何が辛いと?」
あたしは、何が辛くて逃げて来たんだろう。
司と一緒になれない事?
薫に愛される事?
違う。そんなんじゃない。
「わからんとう?」
「うん。」
「なら、運命に流されな。ユラユラと流されてみな。」
インディゴちゃんが不敵に笑う。
そんな生活が10日ばかり続いた夜。
ご飯を食べようとした時に、突然吐き気が襲ってきた。
「ぅっうっ」
吐きたくても吐けない感じ。変な感じ。
「ねぇあんたさ、最終生理いつだったとぉ?」
あたしは、目を瞑る。
もうとっくに来てても、いい筈だった。
バタバタしていて気がつかなっただけで‥もう半月以上過ぎている。
2人でドラッグストアーに行って、検査薬を購入した。
トイレから出て来たあたしは、どんな顔だったんだろう。
インディゴちゃんが、あたしの目を真っ直ぐに見て
「つくし、オメデトウだね」
一言そう言う。
そっか。あたしオメデタなんだ。
あたしの前に、スマホを差し出して
「産むにしても産まないにしても、パパになる男に掛けて、迎えに来てもらうとよ」
そっか、これが運命に流されるって奴なのかな。
神様が、薫と生きていけって指示を出したんだ。
あたしは、スマホを手に取り、薫に電話を掛ける。
最後に悪あがきをする。
一つだけ、あたしは賭けをしたのだ。
「ねぇ、インディゴちゃん。もしもコール5回までで、出なかったら、あたしインディゴちゃんの所で雇ってくれないかな?」
クスリと笑って
「っん? いいとよ。」
あたしは、賭けをする。
見知らぬ電話番号からの電話に、薫が出なかったら、あたしは帰らない。だけどもしも5回目までで出たら、あたしは薫の元に戻ると。その先は、それからだ。
番号をタップする。
1回なり終える前に、薫の声がする。
「もしもし、つくし‥?つくしだよね」
あたしの名前を呼ぶ薫の声がする。
そっか、あたしがのんびり過ごしてる間に、この人はこうやってあたしを待っててくれたんだ。
「うん。つくしです。心配かけてゴメン」
「ううん。どこ?どこにいるの?」
「天橋立。」
ヘリを飛ばして、これから迎えに来ると言う。
あたしは、インディゴちゃんにお礼を言う。
「改めて、またお礼にくるけど‥ありがとうね。」
インディゴちゃんが
「つくし、長いものには巻かれな。運命には乗ってみな。ユラユラでいいからさっ」
そう言って、あたしの背中をバシッと叩く。
「つくしの幸せを作るのは、つくししか、いんとよ。あんたには悲壮感とか絶望とかそんなんは似合わんとう。」
真っ直ぐに、あたしの目を見て言い切った。
1時間後、インディゴちゃんの家の、ブザーが鳴る。
ドアを開けると、髪の毛ボサボサで、目が充血した薫が立っていた。
薫があたしを抱きしめる。
インディゴちゃんが
「あらあら、いい男だわ。」
なんて呟くのが聞こえた。
片倉さんが、インディゴちゃんにしきりに頭を下げている。
「いいとよ。じゃぁ、つくしまた近いうちにね。」
バタンとドアが閉まる。
薫が、あたしの手を握ったまま、離さない。
「つくし、ゴメン」
あたしが言うよりも先に、薫が謝ってくる。
「今日は、2人で別荘に泊まろうか。」
宝珠の別荘に着く。
薫がギュッとあたしを抱きしめる。
「つくし、ゴメン。」
あたしが悪いのに、薫が謝ってくる。
この人は、いつもそう。あたしを一番に考えてくれる。
「あたしが悪いんだよ。」
「違う。僕が悪いんだ。僕が君を好きにさえならなければ‥君を諦めたれたら,今頃君と司君は‥」
そんな風に、薫は思っていたんだ。
違う‥あたしが思わせていたんだ。
「司君に会いたいなら会っても構わない。だから、だから、お願いだから、僕の前からいなくならないで。」
「薫‥あたしね‥…赤ちゃんが出来たよ。」
「いいの‥?」
心配そうな顔で、薫があたしに聞く
あたしは、笑って答える。
「ダメなの?」
薫が首を振って、あたしを抱きしめる。
「ありがとう。ありがとう。」
優しく優しくあたしを抱きしめる。
あたしは、運命に流される。
***
彼女のお腹に、やっぱり子供が出来ていた。
僕は、賭けに勝ったんだ。
彼女は、守るものを得たから、もう2度と僕の前から消えはしない。
彼女が僕に落ちて来た。僕たちの未来と共に。
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