曇天 12 あきつく
ヨシッ 気合いを入れる。
明日なんかこなければいいのに、なんて事を思っても、誰の元にも公平に朝は来る。
だから、明けない夜はない。昏い昏い闇夜を抜ければ、朝が待っている。
ミルクたっぷりのカフェオレに、クロワッサン、サラダにオムレツなんていきたいところだけど、朝はコレだねで、二人揃って、焼き魚、香の物に、野菜たっぷりのお味噌汁。土鍋で炊いたご飯が光ってる。
あきらと2人で食べる朝ご飯は、幸せの味がする。
日本茶を啜りながら
「あのね‥」
あきらに、道明寺からの電話の事を話す。黙って聞いてくれて、最後に
「話してくれてありがとう。」
あきらに、話したら気持ちが楽になる。
この人は、いつでもこうやって、あたしの全てを受け止めてくれる。
おでこに軽くキスをされ
「うん。大丈夫。」
百人力の言葉を貰う。
**
「つくし〜おはよう」
「先輩,おはようございまーす」
駅を降り立つと、あちらこちらから声がかかる。
隣に居るあきらを見て、エッという顔をした後に、ポワンっとする。
あまりにも、皆の反応が同じで段々と可笑しくなってくる。
遡る事40分前、家を出るあたし達は、ちょっとした押し問答をした。
「一緒に行く。」
「だめ。」
「2人で行く。」
「ダメ。」
10分押し問答をして、終いに面倒になって、2人で電車に乗って駅に降り立った。で、今の状況。
「なっ、案外平気だろ?」
小さい声で囁くけど、会社に着いたら質問攻めの気がするよ。
四つ角で、右と左に別れる。
振り向いたら、あきらも振り向いて、2人で目を見合わせ笑って小さくバイバイした。
心配事が全部なくなっちゃうくらい、幸せな朝。
まぁ、無くなりはしないんだけどね。
だけど、勇気はもらった、頑張るよ。
***
「牧野さーん、専務が呼んでました〜」
「牧野、専務が呼んでたぞ」
はいはい。解りました。解りました。
「先ぱーい‥」
「専務が呼んでましたでしょ?」
「あっ、はい。」
もぅ、本当にあいつだけは朝から人の気持ちを逆撫でするプロだね。プロ。
はぁっー 幸せ気分がどんより気分だっつーの。
トントン
「牧野です。」
「はーい、どうぞ」
失礼致します。と入った先には、五木専務と‥道明寺
「ヨッ」
片頬あげて笑う道明寺。
心の準備をする前に、やってきた現実。
五木専務が
「牧野、道明寺支社長とも同じ高校だったんだって?」
暢気に聞いてくる。
だからどうした?とも言えないので
「はい。英徳の先輩でした。」
「だけじゃねぇよな? 俺ら付き合ってたよな。」
「ほぉっー」
ほぉっーじゃない。でも、五木専務のバカさ加減に救われる。
「昔の事です。」
そう言ったあたしに、道明寺が耳元で囁いた
「俺にとっちゃー、昔の事じゃねぇけどな。」
**
ノックの音がして、牧野が入ってくる。
憎い女。愛しい女。倒錯した思い。
俺等が付き合ってた事を
「昔の事です」
いとも容易くいいきる
お前の思いが俺になくても関係ねぇ。
なぁ、牧野、俺がお前を絡めとってやるよ。
もう、誰にも邪魔はさせねぇ
だから、落ちて来い 俺のところへ
曇天 不定期連載中
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