ちび 愛を叫ぶ 総つく
母様が、居る時と一緒なの。不思議だよね。
菫が生まれた時から、事あるごとに櫂が言う言葉。
邸の中が、パァッ〜と明るくなる。うんうん。解る解るぞ。
俺が、つくしに惚れたのも、それを感じた瞬間だったんだからな。
ってか、西門の重鎮の奴らも、同じ事感じてやがるんだな。これが。
西門の邸の中で、家元夫人の次に、つくしの魅力に気が付いたのは、宮地と志摩だったっけかな。
竹を割ったような真っ直ぐな性格のあいつを魑魅魍魎渦巻く西門に迎え入れちまって良いもんか......どんだけ悩んだ事だっけな
10年あいつと暮らして来てそんな心配は、杞憂に過ぎなかった。そう言えるようになった。
海千山千、老獪で強かな奴らが、今じゃ己の欲など二の次に、つくしの為に身を粉にして尽力してくれる。
そのお陰で、日本文化が廃れてきたこのご時世に、西門は益々の躍進ぶりだ。
つくしが嫁いできて櫂が生まれ菫が生まれ__その度に、西門が強固になっている。
派閥争いはどうした?
この頃の派閥って言やぁ、櫂派 菫派 その2大派閥のみだもんな。しかも、どっちもすげぇ仲が良いでやんの。
櫂は、解る。こいつは、俺が言うのもなんだが、天賦の才も、精進する心も、茶道を愛する心も持っている。しかも、容姿がこれまた優れてる。櫂が微笑めば、うるさ方のご夫人連中も押し黙る。
だがな、菫は、稽古が嫌いで、正座が嫌いで、行儀も悪い‥ なのにだ、大らかだ。のびのびしてる。隠された才能を感じる。だもんな‥ これまた、うるさ方のご夫人連中が、こぞって菫を可愛がる。
櫂は8才、菫は4才。なのに、見合いの釣書がうずたかく積み上がってやがる。家元も家元夫人も西門の重鎮も、皆が一丸となって、丁重に断ってるのにも関わらずにだ。
有り難い事に、後援会の人数は、年々増えている。ビックリするぐれぇ太いのも一杯だ。
全部、全部、つくしが引き寄せるんだよなぁー。
つくしの人柄に惚れ込み、つくしに良く似た笑い顔の菫を見ると、皆が菫を欲しがるんだもんな。すげぇよな。
誰が凄いって、ククッ そりゃー 俺の愛するつくしに決まってる。
まぁ、てなワケで俺は幸せだ。
だが、2月に入ってからの西門は、どうもいただけねぇ。
重鎮の狸親父共も、後援会の狐親父共も、何故だか皆が浮き足立ちながら、西門の邸にやって来やがる。本来なら、用もねぇ筈なのにだ。
それを言わせないようになのか? でっけぇ仕事を持って来やがる。
はぁっー お陰で、俺は忙しい。
でもってだ、つくしと菫に、来る度に、土産を渡す。
まぁ、これが的を得た土産もんばっかりだ。どっから情報が流れてるのか知りたくなるような、的をついた土産もん攻撃だ。 すげぇよな。 俺は感心していた。
「もうじき、バレンタインディーですからね‥」
櫂がポツリと呟く。
そうか、それだ!
そういやぁ,去年も一昨年もいやいやその前からか、2月になると慌ただしい。いやいや、つくしが嫁いで来てからというもん、用もないのにやって来て、茶飲み友達宜しく本邸で時間潰してく輩が多いけど‥…2月は、特にだ。
「すうちゃんのを楽しみに、張り切ってるんでしょうね。」
そうなんだ。幼稚舎に通うようになった菫は、バレンタインディーなるもんを知ったんだ。だから、だから、去年までと違って,西門が選んだチョコレートBOXではなく、自分で選んで、自分でラッピングして、自分で渡すと、張り切ってんだ。
「あちゃー」
ついつい、声が出ちまった。
「京都の雅君も、当日は来るみたいですよ。お父様についてくるとか、言ってましたけどね‥」
はぁっー
「見え見えですけどね。」
なんでもいいが、雅はいかん。雅は。
あいつは、櫂と一緒だ。何でも良く出来るんだ。
だからダメだ。絶対ダメだ。
「ええ、絶対ダメです。雅はいい奴だけど、京都は遠すぎます。」
櫂、それは幾ら何でも飛躍し過ぎじゃねぇか?
「飛躍してません。僕には解るんです。」
「って、お前エスパーか?」
「いいえ、父様のお考えなら、お顔を見ていれば、想像はつきます。」
「あははっ‥」
コイツばっかりは、侮れん。って?雅もそうなのか? そりゃ困る。
「櫂‥お前に、この件は一任する。」
当たり前だとばかりに、頷く。
「すぅちゃんは、僕の目の届く範囲に、お嫁に出しますから。」
って、櫂‥ お前 本当に小学生か?
俺等の心を知ってか、知らずにか‥
「菫様ー 廊下は、お走りになってはなりません。」
「はーーい」
なんて声が聞こえたと思ったら、バーン 障子を目一杯開いて
「ととさまーー にぃにぃ、 みやびちゃん あしょびにくるって」
満面な笑顔で報告してくる。
菫は、赤ん坊の時から、櫂に似た雅が好きなんだよな。
華道の家元の家に生まれ、 書道家の母と、新風を巻き起こす父の元に育ち
プレッシャーをものともせず、すくすくと華と向き合って生きている。
櫂と一緒なんだよなぁー。
いやいや、だからこそだ。だからこそ。だめだ。
「菫は、嫁には出さん!」
「ととさま どうちまちたか?」
あははっ、飛躍し過ぎてんのは俺か‥
だけど、だけどだ
バレンタインディーなんて くそくらえだぁーー
俺は、菫を嫁には出さん!
茶を持って来てくれたつくしが、笑ってやがる。
つられて、菫も笑ってやがる。
花咲く笑顔でな。
まぁ、何だな バレンタインディー っつうもんは
男親と兄貴にとっちゃ〜、浮かれてばかりいれねぇ厄介なもんだな。
あぁーーー 菫 櫂 つくし
俺はお前等を愛してんぞぉー
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