明日になれば 総つく
「おぉ。また明日な」
「うん。またね」
稽古の後、お前を送った時、「またね」確かにそう言った。
でっけぇ目で俺を見つめながら。「またね」そう言った。
なんか言いてぇのかな? そんな風に思った。
明日になれば、また会える‥ そん時聞きゃいいや、そう思った。
だけど‥ そうじゃなかった。
次の日も、その次の日も、会えなかった。
メールを入れた。
ちょっと忙しいからまた連絡する。そんな返事が帰ってきた。
そんなやり取りがあったあと、俺自身が地方に出張だなんだと忙しくなって会えなくなった。
会えねぇと、不思議に会いたくなる女‥日毎、お前に連絡をした。
当たり障りのない話しをして、電話を切った。
最終の日‥ 電話で言うのがなんだか気恥ずかしくてよぉ
明日そっちに戻る。土産渡したいから、お前ん家によるわ
お前にメールを入れた。
リターンメールは届かねぇ。
まぁ、いつもの事だと高を括って、連絡も入れた事だし勝手に寄ってけばいいやなんて思ってた。
跡形も無く消えていた。
邪魔者は消えたとばかりに舞い込む、縁談。
そん時はじめて気が付いた。
俺、お前が好きだったんだって‥
で、俺は考えた‥お前のいなくなった理由を。
で、思い当たった。
もしかしてよぉ お前、俺の事好きなんじゃねぇの?って
俺の為に、身を引いたって奴じゃねぇの?って
独り善がりじゃねえよな‥
ぜってぇーにそうだよな
なぁ牧野、お前さぁ、俺の事好きなんじゃねえの?
そうと決まれば、話しは早い。
縁談は、全部断った。
家元も家元夫人も、関係者全員が困った面をする。
奴らの顔には、” 折角、邪魔者は排除したのに ” そう書いてある。
家元に怒鳴られ、家元夫人に泣かれた。
知ったこっちゃねぇ。
柵? 地位? 金? あははっ そんなのは糞くらえだ。
俺は、茶が好きだ。
茶は、俺の一部だ。
茶の道でしか生きれねぇ事も重々承知だ。
だがな、俺は俺自身の気持ちにも、あいつの気持ちにも気付いちまった。
西門を追放されたら俺に何が残る?
何も残んねえな。
でもよぉ、まぁ、死にゃあしねぇ
命は残る。だったら願ったりだ。
西門が邪魔してきたら?
今は、ネット社会だ。
逆に色んな情報バラまいてやるって、おどしゃいいだろうよ。
上手くいきゃ、西門総二郎が語る暴露本なんてぇのもあるんじゃねぇの?
邪魔は入るだろうけどよ、需要がありゃ出来んだろうよ。
あははっ、なんだか楽しくなってきた。
なぁ牧野、俺が一番怖ぇーのは、お前と会えねぇ、そんだけだ。
で、それが今なんだ。
だったらよぉ、俺はこんな家は捨ててやる。
両手の平にしか、幸せを掴めねぇんだったらよぉ、潔く他のもんは捨ててやる。
俺は、お前だけを抱きしめる。
それによ、西門の名が無くたって、茶自体は点てていけるしな。
茶店でも開くっつーのもいいんじゃねぇの。お前がウェイトレスで、俺がマスター
抹茶も飲めます 的な? 美貌のマスターに抹茶、案外イケルんじゃねぇーの。
そんな戯れ言のたまってる間に、お前を探せだな。
くくっ、心配すんな。そりゃ、あきらに任せてあっから。
ホラ早速だ。
俺は、バイクに跨がり‥お前を迎えに行く。
ってか、お前‥ 漁村好きだな?
もっと洒落た所に逃げりゃいいのによ。
迎えにいくのに、漁村じゃ格好つかねぇだろうよ。
くくっ、まぁいいか。
もうじき、夜が明ける。
朝一で働くお前がやってくる。
手にしていた、荷物を盛大にぶちまけて‥お前が固まった‥
「な、な、なんで?」
「あっ?またねっつただろうよ。」
お前が逃げ出さないように、掴まえた。
「お前、魚くせっ」
「し、し、仕方ないよ‥魚ぶちまけたからね‥‥西門さんのせいだよ」
「そうか?」
「そうだよ‥なんできたの」
牧野の瞳から涙の雫が溢れ落ちる。
「お前,泣くほど俺が好きか?」
「‥泣いてなんかない‥」
「じゃぁよぉ、この雫はなんだよ?」
「あ、あ、汗。」
「ほぉっー お前の汗は、目からも流れんだ。」
「新種の汗だからね。」
「なぁ牧野、俺はさぁお前が好きだ。他のもんはいらねぇ。」
「だ、だ、ダメ。西門さんはお茶の世界に居なきゃいけない‥」
「なぁ牧野、茶はどこでも点てられる。だが牧野は一人しかいねぇ。」
まるでイヤイヤをするように激しく首を振る。
「俺に嘘の人生を歩いていけってか?」
「だめだよ。」
「なっ、そうだろう?」
「違う‥ あたしと一緒になるのなんてダメっていう意味だよ。」
「茶があるからか?」
「‥…」
「お前が居なくなったら、俺は二度と茶は点てねえ」
「そ、そ、そんなのダメ」
「だったら、黙って俺んとこ来い。」
なだめすかして、俺等は一緒になった。
牧野の気持ちが変わらねぇうちに、婚姻届けも出した。
保証人の蘭には、類の名前と司の名前だ。
あきらに探してもらってる間に、ちゃんと貰ってきたんだからよ。
類からは、嫌味の続出。司からは、腹に一発のパンチ。
しかと受け取ってきたんだから‥ 断れねぇよな。
俺等がいまどうしてるかって?
一ヶ月の逃避行中だ。
あははっ 新婚旅行とでも言うのかな?
まぁ、つくしが居ればあとは何とかなるだろうよ。
考え無しって、言われても構わねぇ、大切なもんなんて人生で幾つもねぇからな。
こいつさえいれば、あとは野となれ山となれだよ。
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