ずっとずっと 123
週末に開かれるパーティー用のドレスだ。
「あら、しぃちゃん綺麗。」
「えぇ、本当に」
「桜子ちゃんは、しぃちゃんにどっちが似合うと思う?」
「先輩には、こちらが宜しいかと。」
「あら、ホント。やっぱり若い人の感性っていいわよね」
「特に、桜子ちゃんは、こういった事に向いてらっしゃるわ。」
桜子、雪乃さん、亜矢さんの3人でドレスを選んでくれる。
「今日は、薫さんはいらっしゃらないのですか?」
桜子が不思議そうに聞いてくる。
それはそうだろう‥あたしのパーティドレスを選ぶ時は、この3年いつも一緒に居たのだから。
「そうなのよ。どうしても、外せない用事があるらしくてね。」
「まぁ、お陰で今日は、しぃちゃんを独り占めされないで済みますけどね」
クスクスと3人が笑っている。
笑い声が、あたしの頭の上を素通りする。
ここ数日、薫の様子がおかしい。
どうしたのかと聞いても、気のせいだよ、仕事で疲れてるんだよ。で、終了。
それ以上聞いてしまったら、何かを開けちゃうそんな気がして、戸惑いに蓋をした。
「‥…それでね、しぃちゃん?」
「あっ、はい。」
「あら、疲れちゃったかしら?」
「‥あっ、大丈夫です。ちょっとぼぉっとしてました。」
気を利かせてくれたのだろう、桜子を残して、雪乃さんと亜矢さんがペントハウスを後にする。
お茶を飲みながら、桜子と他愛もない会話をする。
もうじき生まれるお腹の赤ちゃんの事、
そして、あたしを笑わせる為に千尋さんの面白話なんかも話してくれる。
どこか上の空のあたしを心配したのだろう‥
桜子があたしに聞いてくる。
「先輩、薫さんと何かあったんですか?」
あたしは、首を振り桜子に返事をする。。
「わからない‥」
思案顔をした桜子が
「道明寺さんの事ですね‥」
ポツリと呟いた後に
「週末のパーティに、道明寺夫妻も参加されるんですよね?」
「う‥うん。そう聞いたけど‥ 」
「きっと、心配なさってるんでしょうね。」
「‥‥」
「先輩、一つ忠告致しますわ。」
桜子があたしの目を見つめる。
「この3年、いいえ、もっと長い時間、先輩だけを見つめ、先輩だけを愛してきたのは薫さんです。ご自分の幸せの為にも、これ以上、薫さんを苦しめないであげて下さい。」
真っ直ぐに、真っ直ぐに、桜子があたしを見つめる。
「‥ダメなの?」
小さな声で呟く。
「ダメです。」
「心で思うだけでもダメなの‥」
声を荒げて、吐露してしまったあたしの気持ち。
ガチャンッ
扉の外で、何かが割れる音がした。
***
つくしが、どうしたの? そう、僕に聞く。
言葉が溢れそうになる。
溢れる言葉は、出してしまえばよかったのかもしれない。
だけど‥僕は言葉をしまった。君を失いたくないから。
「つくしの気のせいだよ。それか‥ちょっと疲れてるのかな?この頃少し仕事がハードだから。ドレス選びも、今回は僕は同席出来ないかもしれない‥」
これ以上聞いてはいけないと思ったのか、何も言わずに君は押し黙る。
一緒に居たいのに、一緒に居るのが辛くて‥
仕事のせいにしてして、いつも一緒に選んできたドレス選びを、お婆様と桜子ちゃんに任せた。
でも、やっぱり気になって‥ソワソワしてしまって‥
片倉に
「薫様、本日はお仕事になりません様ですので、一旦ご自宅にお戻りになって、つくし様とお会いになって来て下さいませ。」
そんな風に言われ、自宅に戻った。
「薫様、こちらをお持ち頂けますでしょうか?」
片倉が、つくしのお気に入りの青葉のモンブランを持たせてくれる。
この3年の間で、片倉はすっかり、つくし受け入れるばかりか支持をする立場に変わっている。
何くれとななく、つくしの喜ぶものをこうやって用意してくれるのだ。
つくしがお礼を言うと、照れるのを隠すかのように、憮然とした表情になるのが、可笑しい。
扉の前に立つ‥ 桜子ちゃんとつくしの声がすると思った瞬間‥
つくしの声が響いた
「心で思うだけでもダメなの‥」
その場を立ち去ろうと、踵を返した瞬間、メイドとぶつかり、手にしていたものがひっくり返り、激しい音がする。
扉が開く‥
お願いだ‥ ぼくの情けない顔を見ないでくれ。
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