紅葉 後編 あきつく
「お願いって、何だよ? 大人のお色気を伝授しろってか?」
「……そんなんじゃないよ」
なんでか泣きそうになってる牧野
って、俺のが泣きそうなんだけど、どうしたらいいんだ。
俺は、お前への思いにブレーキをかけたあの三日月の夜のように、またこの思いにブレーキをかけなきゃいけないのか?
新しい恋を始めるのには俺じゃダメなのか?
「だから、なんだよ牧野のお願いって…」
「あのね…あたしと美作さんは何があっても一生友達でいれるよね?友達が無理なら同僚でもいいんだけど…それとも、未来の美作商事の社長の友達も同僚もおこがましいかな?」
牧野は何言ってんだよ
同僚?友達?
所詮、俺はそこから抜け出せないんだな。
満月になれないクレセントムーンかぁ。
「…お前の望みなんだったら、友達でも同僚でもなんでもいてやるよ」
「……」
「で、それがお前の願いなのか?」
「…ちがうよ ちがうよ」
小さな小さな声で呟いて突然泣き出した牧野
「いきなりどうした?どっか痛いのか?頭か?それともお腹空いたか?」
いきなり泣いた牧野に俺はあせりまくりこの場にそぐわない質問を永遠と投げつけそうになる
「あたしね5年一区切りにしたいの。美作さん。あたしの事…」
って、さっきから5年一区切り5年一区切りって、一体なんなんだよ?
「牧野、ちょ、ちょいゴメン。俺…お前の言ってる5年一区切りの意味が分からないや。」
「…えっ” そ、そ、そっかぁ」
「あ、あたしの事ちゃんと振ってください。未練が残らないようにきちんと振って欲しいの。」
って、お前なに言ってんの? 振ってください?? 振ってくださいってどういう意味だよ?
振られてるのは俺じゃないのか?
「………」
俺の考えの遙か斜め遠い所にあるような事を言う牧野に俺の思考はついていけないで、黙り込んでしまった。
「ごめんね。ごめんね。ごめんね。嫌だったよね、妹分にしか思ってないあたしにこんな事言われたら迷惑だよね。会社でも会わなくっちゃいけないのに、ごめんねごめんね。ごめんなさい…」
だんだんと泣き声になってくる牧野
「なぁ牧野、ちょっと待て 振ってくださいって何の事だよ?」
「だから…そのまんまの事だよ。振るのも出来ない?あたし振っても貰えないの?」
「そりゃね、色気もないし、胸もないし、食べる事と寝る事だけが好きな女かもしんないけど…きちんと振ってもくれないなんてあんまりじゃないの?」
泣いてたと思ったら、今度は怒り出した牧野。
「ちょ、ちょっと待て 確かに 色気もないし、胸もない、食べる寝るが趣味なのも認めるが… それとどう繋がるんだよ?第一振るって何のことだよ。ワケわかんねぇよ」
「ねぇ、美作さんってバカなの?」
「バ、バカって? いきなりなんだよそれ。」
「だってそうじゃん。あたしの精一杯の告白をワケわかんないなんて。あり得ないよ。いくらモテモテ貴公子だからってあんまりだよ。」
モテモテ貴公子ってなんだよそれ。…って、告白?いまこいつ告白って言ったよな??
誰に誰が告白?
「あぁ俺バカかもしんないや…でも、こんなバカなら俺バカで嬉しいかもしんないや」
「そうやってあたしの真剣な思いからも逃げるの? そんならもういいよ」
「いいならどうすんの? 新しい恋にいくのか?それとも十年一区切りに変更か?」
「こんな薄情者は忘れる。忘れて新しい人好きになる。」
俄然ウキウキしてきた俺
「ほぉっーー 薄情者は、牧野じゃねぇの?勝手に振ってほしい?友達?同僚?新しい好きな人?」
「だって、だって、5年もの長い間片思いしてきたんだよ。もう次にいってもいいんじゃないの?ねぇ違う?5年一人の人を好きなんだよ。薄情者じゃないよ、いつも綺麗な女の人に囲まれてる美作さんには薄情者なんて言われたくないよ。」
「って、最初に薄情者発言したの、牧野お前だよ」
「ぁっ ごめんなさい。勝手に好きになったのに…」
あぁ牧野も俺と一緒だったんだよな。いつも誰かに振りまわされて、調整役で
俺に告白して気まずくなったら俺に悪いとか、なんとか色々考えてたんだろうな
色々考えてたら、俺ってなんてちっぽけだったんだろうって改めて思った。
やっぱ、俺って一人だと三日月にしかなれないよな
俺を満月に出来る女は牧野だけだ。
牧野を幸せに出来るのも俺だけだと思う。
「牧野 俺と結婚して新しい恋しない?」
大きな瞳をさらに大きくして固まった牧野に口づけを一つ降らせた。
「パパ~ママ~はっぱがいっぱいだよぉ」
両手いっぱいの紅葉を天に向って放った 俺達の可愛い椛。
あの日から5年、つくしの言う十年一区切りだよ。
もうじきもう一人子供が増える。
もう一度、いいや何度でも俺と恋しよう。
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