曇天 13 あきつく
怖い‥走ってこの場から立ち去りたくなる。
でも‥この男(ひと)から逃げちゃいけない。
あたしがあきらを愛し、安息の場を見つけたように、彼の心にも安息をあげたい。
きっと‥ あたし以外には出来ない事。
あの日、あの時の思い‥ ずっと蓋をしていた思い。
あきらのお陰で、あたしの心は、やっとあの日から解き放たれようとしている。
かつて愛した、愛おしい男にも‥ 解き放って欲しいと願う。
窓の外には、曇天が広がる。
あたしは、この空をみながら、もう2度と後悔の日々を送りたくないと願う。
真っ直ぐに、道明寺を見つめる。
あんたの挑戦、受けて立つ。 どっからでもかかって来い。
そう。あたしは、雑草のつくしだ。 Come on だ!
俺を捨てた憎い女が、俺の瞳を真っ直ぐに見つめ返す。
綺麗だ。憎い筈なのに‥ この手で手折ってしまいたいのに、俺はこの瞳を綺麗だと思ってしまう。
なぁ、牧野‥ 俺のもんになれ。なんねぇなら、俺はお前を奪うまでだ。
なぁ、牧野俺を愛せ。
なぁ、牧野俺を一人の男として見ろ。
なぁ‥
お前の真っ直ぐな瞳があまりにも、綺麗で俺は目をそらす。
俺の荒んだ心が、お前を見ると温かくなっていく。なんでなんだろうな‥
すげぇ、憎い筈なのに‥ すげぇ 好きだ。
ククッ 何なんだろうな この感情はよぉ
なぁ、牧野俺を救ってくれ‥
はたと気が付く。そうか俺は傷ついていたんだと。
こいつを憎む事によって、その思いに蓋をしたんだと。
緊迫した時を打ち破るように、五木専務が、道明寺に声を掛ける。
「道明寺さん、あ、あのぉ‥」
2人同時に、五木専務を睨みつける‥
あたふたしてる、五木専務の表情が可笑しくって。
こんな時だと言うのに、あたしはクスリッと笑ってしまった。
道明寺の片頬も、ニヤリと笑っている。
ねぇ、道明寺、あたし‥あんたの両頬が持ち上げて笑う顔がもう一度みたいよ。
商談にうつって行く‥
仕事の出来る男。あたしは、そうあんたを評価するよ。
牧野から目が離せねぇ。耳許で薄紅色のピアスが揺れている‥
仕事が出来る女。 そりゃ、五木が手元に置きたがるわけだ。
ははっ、益々、面白れぇや。
***
メープルのBarに、あきらを誘う。
誘った俺より、あきらは先に到着してやがる。
「ヨッ 久しぶり」
片手を上げて、あいつが柔らかく微笑む。
小せぇころからそうだ。こいつの笑顔は他のやつらを包みこみやがる。
「あぁ」
バーボンをロックで嗜みながら
「なぁ、あきら‥おまえんとこに、でっけー商談やるよ。」
「っん?」
「だからよぉ、牧野を俺に返せ」
しばらく黙った後に‥真っ直ぐな瞳で俺をみて
「司、つくしは、物じゃねぇよ。俺のもんでもねぇし、ましてや司のもんでもねぇよ。」
「あきら、お前は人妻のケツでも追っかけてりゃいいだろうよ?なっ、牧野を俺に返せ」
「つくしが、お前が良いって言うなら、俺はいつでも身をひいてやる。でもそうじゃない、悪い。つくしは渡せないわっ。」
真っ直ぐな視線で俺を見る。
憐れむわけでも、馬鹿にするわけでも無い、ただただ真っ直ぐな視線を、あきらは俺に投げつける。
この瞳を、俺は知っている‥
ははっ、昼間みたばっかしだ。
俺は瞼を閉じる。 敵わねぇ、そう思う。
なんで、こいつの いいや、こいつと牧野はこんなにも、真っ直ぐに俺を見んだ?
「商談決裂ってやつか? じゃぁよ、チャンスをくれ」
俺は、あきらに牧野と一晩共にさせてくれと頼んだ。
あきらがどう出るか、俺は賭けに出る。
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さぁ、明日も曇天だぁーー あきらをカッコ良くかくぞーーーー(オッー!)
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