ずっとずっと 130
琉那の健やかな、寝息が聞こえて来る。ケットを掛け直し、部屋を出る。
「すぐに寝ちゃったよ。お婆様達にいっぱい遊んでもらったから疲れたみたいだね」
「楽しそうだったもんね。亜矢さんと雪乃さんも今頃は、お疲れよね。」
つくしが微笑む。
カウチに腰掛けて、つくしを呼ぶ
「‥おいで‥」
僕の膝の上に彼女を座らせて、彼女の美しい黒髪に口づけを落とすと、ふんわりと優しい香りがした。
彼女にキスをして、抱きしめる。彼女の耳許で囁く‥
「ルゥの誕生日の前の日、神戸の宝珠の別邸に行ってきて欲しいんだ。」
「っん?前の日?最終のチェックはいいの?」
あどけない顔をして、つくしが問うてくる。
「前日だから、さしてやる事はないし、それは僕がやるから大丈夫なんだ。お願いしてもいいかな?」
つくしがニッコリと微笑み
「うん。琉那は連れて行っても大丈夫?」
「ううん。お婆様達にお願いしてあるんだ。」
僕は、つくしの言葉を待たずに、口づけを落とす。
僕の身体は、熱く熱くつくしを求める。
つくしの白い肌が、僕の全てを魅了する。
彼女は、喘ぎ悶える。妖艶に‥
***
「薫、ここは恋愛相談所じゃなかとよ‥」
「でも、カウンセリングルームでしょ?」
ぐっ、ったく。つくしと言い、薫と言い‥ もう全く‥
「確かに、ここはカウンセリングルームで、あたしはカウンセラーとよ‥でも、もう時間外ですとよ。」
「じゃぁ、時間外料金で。」
あたしは、苦笑しながら、珈琲を手渡たして、薫に聞く
「で、今度はどんなバカな事をしようとしていると?」
暫くの沈黙の後‥
「つくしと,司君を会わせようと思ってる。」
「‥‥」
本当に決行すると? あんた敵に塩送ってどないすると?
色々な言葉があたしの頭を駆け巡り、結局出て来た言葉は‥
「薫あんた、救い様のないバカとね‥」
あたしの言葉に、薫は、哀しく美しく笑う。
何でももっている男。誰よりも何物よりも、全てを兼ね備えた男なのに‥‥
この男は、つくししか欲しない。つくししか求めない。
頑さを、哀れに思う。
同時に‥‥ 一途な気持ちを、美しいと思う。
アセクシャルのあたしにとっては、望んでも手に入らない感情。
それにしても‥ あたしの人生も、陳腐でヘビーに出来てるとね。
”女” に、生まれたかった、ううんいつか ”女” になれると思ってた。
それが無理だと、分った時死のうと思った。
両親があたしをあたしとして認めてくれた時‥嬉しかった。
愛してくれる2人の為に、幸せに生きようと思った。
なのに‥ あたしは、女は勿論、男さえ愛した事がない。
小さな幼子のように、皆が好き。それだけ‥
あたしは、あんた達のドロドロした感情が、羨ましか。
傷ついても傷ついても、誰かを求める感情が羨ましいと。
どこにでもあるような、陳腐な恋愛がしてみたかっとよ。
‥まぁ、薫やつくしのような ドロドロじゃなくてもよかだけんね。
人生にもしもなんて、ありゃしない。
あの時、ああしてたら、こうしてたらなんて人生には存在しない。
あるのは、今だけと。
過去は今に繋がり、今は未来に繋がっていく。それだけ。
あたしが、あんた達の歪な愛を見守っていてあげるとよ。
* アセクシャル 無性愛者 *
ここで使うアセクシャルは、広義の意味で読み取ってください。
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