曇天 16 あきつく

つくしの寝顔を眺めながら‥こんな時間が、ずっと続けば幸せだな。なんて思う。
真っ白な肌が、暗闇で発光しているように、窓から入る月の光に照らし出される。
つくしの心が何にも縛られずに、自由に空に飛び立てる様に、月に願う。

おでこにキスを一つ落とし

つくしが笑っていられますように。
つくしの毎日が穏やかで笑いの絶えない人生でありますように。

そう願う。


ベッドを抜け出し、カーテンを開ける。
昏い空には、月が輝く‥


俺って、たしか巷でプレイボーイだった筈だよな？　
ククッ‥　仕方ないか‥　

牧野だもんな。　ククッ
同じ女に2度も惚れちまうんだもんな。

つくしの顔に、高校時代の牧野を重ねた。
いつも元気いっぱいの雑草牧野。
司を愛し調教師のように猛獣を扱い、ガンガン笑っていた牧野。

10年ぶりの牧野は、見違えるほどに美しい女になっていた。
なのに、やっぱり牧野で‥　
すげぇ、いかす女になってんのに、牧野は牧野で‥

10年の年月なんて、一瞬のうちに消え去って‥
牧野つくし　に　恋をした。

雨の日に失った恋が、つくしの心に雨を降らすなら‥
憂いを取り去ってあげたい。

つくしが起きたら、俺は提案をしよう。
月を見ながら、決心をする。


つくしに、司の思いを伝えよう。
出来うるならば、司の憎しみも、憂いも取り去ってやりたい。
つくしの為に、あいつの為に

もう一度、ベットに潜り込み‥つくしを抱きしめる。


俺に英気を与えたまえ。 なんてなっ　


＊＊＊

カーテンの隙間から、真っ青な空が広がる。

うん、今日なら大丈夫。そう思う。

キッチンから、ご機嫌なハミングが聞こえてくる。珈琲の良い香りがする。
もうじき、満面な笑顔を携えて、つくしが俺を起こしにくる筈。

軽快な足音が聞こえる。

カチャッ　ドアが開く。

「あきら、おはよう」

満面な蕩ける笑顔のつくしがここにいる。
目を細め、俺はつくしを見つめた。

「おはよう」

2人で並んで飯を食う。

「旨い」
「日本のお父さんって、感じのコメントありがとうっ」
クスリッとつくしが笑う。

日本の父か、うん。日本の父さんは、黙って家族の幸せを見守んのが仕事だからな。
ヨシッ

食後の紅茶を淹れながら‥

「気が付いてるかもだけど‥　昨日、司に会ったよ。」
つくしが俺を見る。

「司が、つくしと2人で会いたいって。」
「‥そっか。うーーーん。あきらはどう思う？」
「つくしが決めれば良いよ。って‥　言いたいとこだけど、それってずるいよな？」

クスリっと微笑んで
「うん。」
「なら、俺は、つくしの背中を押そうと思う。会って来いって。」

あきらが、道明寺と2人で会えと言う。背中を押すと言う‥

大きな笑顔をあたしに見せて
「正直言えば、2人でなんて会って欲しくないよ。」

「じゃぁ　なぜ？」
あたしは、あきらの会わせたくないの言葉に半分安堵して、あきらに問うた。

「っん？一番は、つくしに毎日笑って欲しいからかな。」

あぁ、この男（ひと）は、本当に本当に優しい。

「あとは、格好つけかな」

「そっかぁ‥格好つけか」
「あぁ、痩せ我慢‥してる‥」

あたしは、あきらの栗色の髪の毛を梳く。

うん。あたしも、毎日あきらと笑い合いたい。
うん。あたしには、あきらがついてる。


「猾りぃけど、後悔したくないからこれだけは言っておく。司との恋に決着がついたら、俺をきちんと愛せ。なっ」

あきらが大きな包む込む笑顔で笑ってる筈なのに‥‥

「グッスン　あきらの顔がみえな‥い‥よ‥」

あきらが、あたしを包みこんでくれる。大きな大きな両方の手の平で。

「だけど、俺の事は気にすんな。最終的に誰を選ぶかを、決めるのはお前だ。」
あきらの口づけが降りてくる。

しんしんと降り積もった恋心は、気が付けばあたしの心をいっぱいにして、愛に変わり初めている。
あきらが、嫌だと言っても、あたしはあきらの元に戻って来るよ。


明日、あたしは　道明寺に会いにいく。
これからの人生、堂々と前を向いて、前だけを向いて生きていけるように。

あたしの幸せを、あたしは願う。　
誰のものでもなく、あたし自身の幸せを。

あたしを、心から愛し背を押してくれるあきらの為に
あたしは　自分の幸せを願う。

Hope their happiness

あたしは、もう恐れない。幸せになることを。
あたしは、あたしの幸せからもう逃げない

Not anymore run away from happiness





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