ずっとずっと 135
使用人達が、ルゥを着飾らせていく。
僕は、ルゥを抱きながら
「生まれてくれてありがとう。」
そう伝える。
ルゥが笑いながら、僕の頬を触る。
可愛い僕の宝物。
ルゥがいて、つくしがいる。僕の幸せな一日がまた今日から始まる。
そして、カウントダウンもまた今日から始まる。
一年のうち一日だけ、僕は君を自由にする。
自由? ふっ 足枷付きのね。
これが僕の精一杯。
君をここに留めささせるための僕の精一杯。
6月2日 君は司君に会いに行く。神戸の邸に、石榴の花咲く邸に。
6月3日 娘の誕生日に、新たな一日を始める。
それが、僕等の儀式になった
ねぇ、つくし知ってる? 6月2日は、裏切りの日なんだってさ。
何に対する裏切りなんだろうね?
***
初夏が近づくと、邸の空気が張りつめる事を知ったのは、幾つの時だろう?
お母様の哀し気な表情を知ったのは幾つの時だろう?
そうあれは‥私が恋をした年の事だった。
16才の春‥私は恋をした。
すれ違った瞬間、胸が高鳴った。
振り向いた。目が合った。恋に落ちた。あの人も私も。
名前も知らないあの人に恋をした。
名前も告げずに恋をした。
きっとまた会える。
恋をして、気が付いた。色んな事に。
お父様のお母様に対する偏愛に。
一年に一度だけ、開かれる神戸の邸の存在に。
色々な小さな綻びに気が付いた。
お父様が毎年言って下さるお祝いの言葉の本当の意味に私は気が付いた。
お父様はお母様を深く深く愛し過ぎてしまったのですね。
愛が歪んでいる事に気が付かぬほどに。
運命の扉は、また一つ開いてしまった。
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