ずっとずっと 24
駅に着くと、つぅ爺から連絡の通り、迎えの車が出迎えてくれていた。
直接相手方に向うのかと思っていたら……
サロンに直行されあっと言う間に、メイクをされ、髪をアップにされ、あれよあれよという間に着物姿に変身させられ、あたし宛ての手紙を一通渡された。
中を開くと
しぃちゃんへ
旅行はどうだったかの? 疲れてはないかの?
着いた早々いきなり着物に着替えさせられて驚いてる事だろうが、
これから荷物を届ける相手に茶を点ててきて欲しい。
大変申し訳ないのだが一週間ほどそちらの御仁と過ごして欲しい。
くれぐれもよろしゅう頼む。
つぅ爺より
時差を考えると、あちらはまだ朝の4時だ。こんな時間に連絡をとるわけにもいかない。
いやいやつぅ爺の事だ、絶対にそれ狙いの時間設定だったのだろう。としか思えない
。
ハァ―――― 聞いてないっつーの…散々あたしに会えなくて淋しいだなんだ言ってなかった?
うーーーん あの爺さんだけはホント喰えない…
ニューヘイブンに道明寺が来る事はないとは思うけど… もしもがあるのが人生だ。
こんな事ならニューヘイブンに寄る事を話しておけば良かった…
「ふぅっー 参った」
ウダウダ悩んでる合間に、車に乗せられ着いた先はこれまた、豪奢なお邸…
道明寺邸と比べても遜色ない…もしかするとそれ以上かも?のお邸だ。
に、してもでっかいなぁー なんて思っていると執事が出てきて、邸内に連れて行かれる。
待ち構えていたのは、とても美しい女性だった。
透き通るように白い肌に美しい瞳。柔らかな温かい空気を纏った御仁だった。
つう爺と雪乃さんと同世代の方なのだろうか? 雪乃さんも本当に美しい方だが
この方の美しさときたら、年齢を、不思議なことにその美しい容姿さえも超越している。
「キレイ…」
思わず見惚れ、呟いていた。
「あら、ありがとう とても嬉しいわ。私の名前は宝珠 亜矢。どうぞよろしくね。亜矢さんと呼んで頂けたら嬉しいのだけど?いかがかしら?しぃちゃん」
人懐こい笑顔で彩さんが言う。
その声までがコロコロと鈴の様な音で美しい。
あたしの後ろから
「ゴメンゴメン 遅くなった。」
優しげな声がして…振り返ると背の高い 美しい容姿をしたロマンスグレーの柔和な紳士がそこに立っていた。
亜矢さんのご主人の 宝珠 棗氏 だった。
「あら、棗さんお帰りなさいませ。お早いお帰りね。」
「ただいま 亜矢さん」
「こんにちは しぃちゃん」
お二人並ぶととても絵になる。
すっかり見惚れていたあたしは慌てて
「はじめまして 星野つくし と申します。筒井よりお荷物を預かって参りました。」
「私は、宝珠 棗。 筒井とは、昔からの親しい友人なんだよ。ホウジュは言い辛いから、棗さんにして貰おうかな? さてさて、ここではなんだから先ずは部屋に入って、ゆっくりお話しでもしよう」
品の良いとても落ち着いたリビングに通される。
このお邸は、亜矢さんと棗さんがそうさせているのだろうか?
とても優雅で美しい空気に包まれている。
一目惚れってこんな感じなんだろうか?
まだ、ご挨拶しか交わしてないのにも関わらず、このお二人の事が大好きになる。
もっともっとこのお二人の事が知りたい。一緒に過ごしたい。この邸の空気感がそうさせるのだろうか?不思議なそれでいてとても心地よい感覚だ。
「棗さん。しぃちゃんがお茶を点てて下さるそうなのよ。」
「しぃちゃん 折角だからこちらでお茶を頂く前に宜しいかしら?」
お道具が用意された茶室に通される。凛としたそれでいて温かさのある設え。用意なさった方の人柄を表すような設えだ。
「初めて日が浅いので、お見苦しい点が多々あると思いますがどうかお許し下さいね。」
お茶を点て、お二方にお出しする。
美しいお作法でお茶を飲まれるお二人。
「しぃちゃんは素敵なお茶を点てられるのね。温かく包んでくれるようなお茶よ」
「…不思議な事に、亜矢の点ててくれるお茶の味にとても似てるよ」
「あら、私こんな素敵なお茶を点ててます?そうなら嬉しいわぁ」
愛らしく頬を染めニッコリ微笑まれる亜矢さん。
最高級なお褒めの言葉を頂き、つぅ爺の頼まれ毎をきちんとこなした事に安堵する。
「来たそうそうお疲れの所、ごめんなさい。ありがとうね。本当にとても美味しいお茶で大変満足させて頂いたわ。」
着物のままでは疲れるだろうからとゲストルームに案内され、ディナーまでゆっくりしてくるように言われる。
通されたお部屋は、華美過ぎず豪華過ぎずに大層品よく纏めらている。品が良いのに最高に可愛らしいのだ。
着物を衣文掛けに掛け、バスルームに行く。バスルームにはバラの花びらが浮かび、いい香りが充満している。心憎いまでのおもてなしに心が癒される。部屋着に着替え小一時間ほど寛いでいると使用人の人が現れ、今度もまた、あれよあれという間に淡い桜色した素敵なシフォンのドレスに着替えさせられていた。
プライベートなディナールームなのだろうか? このお邸にしては小さ目な部屋に通される。
「ようこそ。しぃちゃん こちらへどうぞ。」
席に案内され、素晴らしく美味しい食事を頂く。
棗さんが笑いながら
「ククッ しぃちゃんは本当に美味しそうに食べるね~ 我が家の奥さんのようだよ」
「…驚くらい、2人は似ているねーーー 出逢った頃の亜矢さんを見ているようだよ」
「うふっ。私は嬉しいけど、お若くて可愛らしいお嬢さんがこんなお婆ちゃんと似ているなんて言われたらお嫌なんじゃないかしら?」
ふるふると首を横にふり
「こ、こ、光栄です。」
憧れの亜矢さんと似ているなんて言われてすっかり舞い上がってしまった。
和やかに穏やかに食事は進み、デザートを食べているときに…
「先ほど、筒井に連絡をとったのだが、しぃちゃんが一週間ほどこちらへ滞在してくれると言っていたのだが、本当に良いのかい? 私達は本当に嬉しいのだけど大丈夫かい?」
「あら嬉しい。」
つぅ爺に連絡をとるのをすっかり忘れていたあたし。
期待を込めた目の2人に見つめられ
「ご迷惑でなければ、ぜひともよろしくお願いします」
なんて返事をしていた。
部屋に戻りつぅ爺に電話を入れる。
RRRRR…RRRRRRRRRRRRRRRRR
いつもならワンコール遅くとも2コールで出る直通電話に出ないつぅ爺
やっと出たと思ったら柏木さんで、つぅ爺は多忙の為しばらく連絡出来ないなんてふざけた事を言われ電話を切られる。
「では、こちらで一週間ほど滞在になりました旨をお伝えください」
と言い電話を切る。
ハァッーーー 参ったなぁーと思いつつ、このままで気分が収まらないのでメールで抗議しようとメールボックスを開くと、道明寺からのメール。なんでも商談が難航しててこのまま中東に行くので、しばらく連絡が取れないが済まないとのメールだった。
帰国の知らせをどうするか? あり得ないけど、もしもバッタリ会ったらどうする?なんて思い悩んでいたので、憂鬱な出来事が一つ晴れた思いだった……バレる心配がなくなったなんて、本当は喜ぶべきじゃなかったのにね…
また一つ、あいつに秘密が増えていく…
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