ずっとずっと 136

火曜日の午後は、あの子がくると。
ホラホラ音がする。

「インディゴちゃーん」
今日も元気にやって来る。

薫に似た美しい容姿、つくしに似た全てのものを包みこむ光を放つ女の子。
宝珠家の、筒井家の、宝物として、何一つ不自由なく育った少女。

今は亡き、宝珠の筒井の者達がが最後迄、愛して止まなかった薫とつくしの子供。


カチャッ　
「お邪魔しまーす」
琉那が入ってくると、部屋の空気がガラッと変わる。
亜矢さんも、そうだったなぁーと懐かしく感じる。　

っん？
この一週間で、何か随分と女の子らしくなったとね？　
いつもの琉那と、なんだか雰囲気が違う。


椅子に腰かけて、クルクル回ってる
「琉那なにしとっと？」

「あのね、あのね‥私、恋をしたみたい」
ニッコリと琉那が微笑みながら、呟く。

琉那の周りがキラキラ光ってると。
うわっ　綺麗とね。
　

「聞いとった？」

「ぷっ、はいはい、聞いとったよ。」
「で、相手の男は誰とぉ？」

「わかんない。」


屈託もなくわからないと答える。

「わかんないけど、私はあの人と恋に落ちる。」
真っ直ぐに真っ直ぐに、琉那が宣言する。


恋をするって、こんな顔になるとねー
あたしは、感心して琉那を見る。　
先週の琉那はまだまだ寝んねちゃんだったとよ。


薫がまたまた、騒ぎ出すとよね〜

心を読んだのかのように
「なので、お父様の事はフォロー宜しくお願いします。」
そう言って、ペロッと舌を出す。

「了解と。はぁっー、薫また親ばか大発揮だとよぉ。まぁ、まだ相手の名前もなんもわからんとよね？」
「うん。でもあの人は私の片割れだと思う。だから必ずもう一度出逢う。」

「そうとね。じゃぁ、そん時は、インディゴちゃんはあんたの為に、応援せんとね。」

「うん。宜しくお願い致します。」


相手の男も大変とよ。心してかからんとね。
珈琲を啜りながら、暢気にそんな事を考えてたと。

「それはそうと、光はやっぱり向こうに行くと？」

椅子をクルクル回しながら
「うーん　そうしたいみたい。ただね〜お母様がね〜」

「やっぱり反対しとっと？」

「うん。普通の学生時代を味わって欲しいんだって。でもね、IQが200超えなんて、こっちにいたら異端児だから、住みにくいだけだからって、お父様に説得されてた。」

「じゃぁ、つくしがあっちへ付いていくと？」

琉那が手を振り
「ナイ、ナイ。あれだけお母様にべったりなのに、光と2人でNYになんて行かすわけないでしょ。」

「そりゃそうとね。」

琉那がクスクス笑いながら、
「昨日もね、お母様が　La Verite　の会食で遅くなったら、大騒ぎだったんだから。」

「ぷっ　先週会った時も、帰りは薫のお迎え付きだったとよ。」

「あっ、やっぱりわざわざ行ったんだ〜お父様は偶然とかおしゃってたけど」

相も変わらず、薫へのつくしの愛は続いていると。

普段は穏やかに。つくしを労り、尊び、愛し続けている。　
傍から見ても仲の良い夫婦とよ。

薫の中に静かなる狂気が生まれるのは、５月も半ばを過ぎた頃かしらね。
一年のうち半月の狂気。静かな静かな狂気。

一時もつくしを離さそうとしなくなる。
この時期、LucyJwellの同伴パーティが異常に多くなるのもその影響だったりするとよね。

薫のすごい所は、自分が世界を飛び回るのではなく、相手を飛び回らせる所。流石、宝珠の筒井の血だと感心したけれど、薫の場合‥一番の原動力が、つくしとよ。

薫の側近はそれを知っているから、つくしの行動は常に監視されている。

薫が自由にさせても、周りが許さない。
そりゃぁ世界経済を担ってる男の一番の落としどころなんだから仕方ないとよね。


「でね、でね。」

クルクル良く動く表情で、琉那が話すのを遮りあたしは聞いた。
「ところで、その名前も知らない彼とはどこであったと？」

「聞きたい？」

「別にどっちでもいいと‥」

「いやーん聞いて聞いて」

ちょっぴり頬を染めて、琉那が答える
「あのね、雪月堂‥」


時を超え、人を違え、
出逢いは再び‥　訪れる

窓の外には、桜の花びらが舞っている。
ひらひらと風に舞っている。




↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥


にほんブログ村

♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥