ちび ひな祭り 総つく
菫の声がする。
庭を見やると、大野を従えて棒を振り回しながら歌を唄っている。
でっけぇ声で歌を唄ってやがる。
ふっ、何の歌だ?
しばし聞き入る‥
おっ、流石に季節がらだな。ちったぁー情緒が育ってきたか?
上手に唄うようになったもんだなぁ なんて聞き入る。
♪♬ あかりをつけましょぼんぼりに、
おはなをあげましょ もものはな♬♪
♪♬5にんばやしの ふえたいこ
きょうは たのしい おちゃかいだ♬♪
いやいや、茶事があんのは間違いじゃねぇえど、最後は、雛祭り だ。
相変わらず、ちこっと惜しいんだよな。
てかお前、すぅちゃんは、お茶会は嫌いなの って言ってだろうよ。
ニョキっとどこからともなく、現れた櫂が
「さすが、すぅちゃん。茶道家元の娘ですね。」
なんて事を涼し気な顔で言う。
はたと思い出したように‥
「父様、お雛様は、3日を過ぎても飾っておきましょうね」
俺の目を真っ直ぐに見て、そんな事を言い出す。
「雛祭り茶事‥雅のお母様がいらっしゃるみたいなんですよね‥」
あぁ、そういやぁ、つくしが呼ぶとかなんとか言ってたよな。
てか、お前、小ちゃい時から、雅の母ちゃん好きだろうよ?
「雅もついて来るらしいんです。」
忌々しげに、櫂が呟く。
いやいや、今からそれだとお前、菫が嫁…いやいや、菫は嫁には、やらん。
「ねっ、ですから父様、お雛様はゆっくり仕舞いましょう。」
櫂が、ニコリと微笑んだ。
ハハッ、そうだそうだ。なんなら一年中飾って置くか。
櫂と目を合わせ、ニヤリと笑い合った。
それにしても、雅は学校だろうよ?
「創立記念日らしいですよ‥」
櫂‥ お前いつから エスパーになった?
「父様のお顔を見てたら解りますよ。解らないのは、母様くらいだと思います‥」
しれーっとした顔して話しやがる。
っんとに、この性格‥誰に似たんだか?
魑魅魍魎渦巻く中で、誰よりも強(したた)かに生きてくだろうよ。
「爺様が、櫂は総二郎にそっくりじゃと言ってました。」
一言言い捨てて
「すぅちゃーん、おやつにしよう」
満面な笑みで、菫を呼んでいる。
まぁ、菫とつくしに弱ぇーとこは、間違いじゃねえけどな。
頭を掻きながら、茶室に向う。
西門の雛祭り茶事には、家元夫人とつくしが取り仕切って行わう。
釣り釜‥あいつ苦手なんだよな。
かっ、毎年の事とはいえ、自分の事よりも緊張すんな。
夜にでも、稽古つけてやんか。
稽古の後は‥まぁそうだな。くくっ 緊張でも解いてやっか。
「ととさま、ととさま‥」
はっ、いつの間に‥
「なに、ニヤニヤしてるんでしゅか?」
いいもの見つけたとばかりに、嬉しそうに聞いてくる。
菫を抱き上げ、
「菫の、桃の節句に着る着物の事考えてたんだよ。」
「そうでしゅか?むふふっでしゅ」
「あん?むふふっての何だ?」
「おあばちゃま と かかさま と すうちゃん おそろいでしゅよ。」
3人で揃いの着物ってか?
ったく、どんだけ仲がいいんだよ。なぁ。
「ごりょんさんは来ないって言ってたか?」
「おおおばあちゃま が くれたんでしゅから くるにきまってましゅ」
来るに決まってるか。
ごりょんさんも、菫とつくしには、弱いってことか。
母さんも良かったな。
「あっ、ないちょでした。ととさま しぃっーしててくだしゃいね。」
プッ、女衆4人で驚かせよう作戦だったって事か?
「解った。で、なんで 内緒なんだ?」
「ととさま、じじさま、おおじじさま びっくりだいさくしぇんでしゅ」
エヘンッと得意げに、菫が大きな笑顔で笑う。
そうか、そうか、じゃぁ父様は、ビックリしてあげましょか。
菫の、つくしの笑顔は、本当に皆の心を温かくする魔法だな。
俺は、幸せを噛みしめる。
雛祭り
4世代が 揃いの着物着て、仲良さげに語らう姿は、一門の者の心を温かくした。
すぅちゃんへの 釣書は堆(うずたか)く堆く なっていく。
雅くんのママは、本格的に動き出す‥
西門の5件先のお邸が、主が代わったらしい‥
西門の奥の部屋に移された、雛人形。
6月になるまで、仕舞われる事がなかった‥‥雛人形
それもこれ、あれもこれ 良き思い出になる筈だ。
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