いつかあなたと陽だまりで 10 司つく
うーん、気合いだ、気合い。何も取って食われはしはしない。
先ずは不義理を謝ろう。
ディレクトールが扉をノックして、声をかけてくる。
「どうぞ」
桜子が答えて、扉が開かれる。
「よっ、桜子。」
懐かしい美作さんの声に続いて‥
「ま‥」驚いた西門さんの声がして
「やっぱり、牧野だ。」 王子様ぶり健在の類。
あたしの眼からは、涙が溢れ出す。懐かしくて、懐かしくて、そして不義理が申し訳なくて、あたしの双眼は涙を流す。
「ちょっと、ちょっと、あなた達、私も居るんですけど?」
静さんが、自分の事を指差しながら、ほくそ笑む。
いつの間にか当たり前のように、6人分のセットが用意されている。黒子でもいるのかと?辺りを見回してしまいたくなるように、音も無く、素早く席は用意され、食事が始まる。
「牧野、あんた元気だった?」当然のようにあたしの右隣に腰掛ける類。
「いま、なにやってんの?」相変わらず優雅な美作さん。
「静と、桜子と牧野かぁー すげぇメンツだな」相も変わらず伊達男ぶりの西門さん。
一気に時が戻る、20年近く経っているとは思えない程に‥流石F3、美は未だ健在だ。いいや、年を重ね、充分に自分の美しさを理解している男達に成長している。
あたしは、この人達への申し訳なさも、疚しさも全て捨てさり、会えた事がただただ。嬉しくなって、
「うん。元気にやってる。」
自分でもビックリするくらいに、大きな声で答えてた。
「牧野、声でかい‥」
類の一声に、笑いが生まれる。
桜 の料理は、美味しくて、目の前には懐かしい顔ぶれで‥…
ここに、なんで司がいないんだろう?なんて一瞬考えてしまった。
居たら困るのに‥ね。
静さんが、類達3人に、桜子に語った話しをしてくれた。
「‥な、わけで、彼女は、牧野つくしじゃなくて、マリンカ バイヤール。公共の場ではマリンカか、バイヤールって呼んで頂戴」
類が背伸びをしながら
「うーーーん。了解」
「にしても、やっぱり、前にあった子が、牧野の子だったんだね。」
嬉しそうに、ひと笑いして
「牧野に良く似てるからさぁ、ビックリしたんだ。」
ナニーに間違われた事を話すと、ククッ笑いながら「そっくりなのにね」なんて、首をひねっている。
マリアの画像を、静さんと桜子が西門さんと美作さんに見せる。
「類、これで牧野にそっくりって、お前すげぇよな」
なんてツッコまれている。
何気ない会話なのに、心が解れていく。
だけど
ここに、あんたがいない事が、あたしは淋しい
もう一度、もう一度 あんたに逢いたい
そんな思いを吹っ切って、あたしは皆との再会を喜ぶ。
次の日から、3日と開けずに、類が桜子が訪れて来る。
マリアはすっかり、類になれ、タスクとジョアンがいじけている。
それも束の間、マリアの指示で、お店屋さんごっかが始まったりしている。
「類ちゃんは、パン屋さん タスクちゃんは、スーパー ジョアンとマリアはお客さん。ねっ」
ねっ と言われて、頷いてお店屋さんごっこを楽しんでいる。
司がパパだったら、やっぱりこんな風にマリアと遊んであげるのかな? そんな事を想像して、首をふる。
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