いつかあなたと陽だまりで 11 司つく
見果てぬ夢に、思いを馳せる。
人は、いやあたしは、貪欲だ。
この子だけ、そう思って生きようと決心したのに‥
幸せであればある程に、もっともっとと、心が幸せを求めてしまう。
司に会いたい。そう願ってしまう。
司と出会った16の年から、24年間。
司への思いは途切れる事を知らない。
どれだけ願った事だろう。司が、ただの男だったら良かったって。
どれだけ夢見た事だろう。
司のもとを去って8年。
風の便りで、司にも子供が出来たと聞いた。
幸せに暮らしてるんだよね?
会えないなら、せめてせめて、あんたの幸せを願おう。
あんたは、あたしの笑顔が大好きだって、良く抱きしめてくれたけど
司、あたしはあんたの笑顔が大好きだった。
写真のあんたをそっと撫ぜ、箱の奥にしまう。
溢れ出す思いと共に。
空に月が光ってる。
**
「ママ〜ママ〜」
あっ、転ぶそう思った瞬間‥盛大に転んで今にも泣きそうな顔になる。慌てて駆け寄り抱き起こそうとすると、スクッと立ち上がって 「フゥッ〜 痛かった」 なんて、言いながら膝小僧を擦っている。
この子は、いつの間にか、こんなにも強くなったのだろう? 頼もしく嬉しく、そして、ほんのちょっぴりだけ淋しく感じる。
「マリア〜 強いね〜」
「うん、マリア頑張った」大きな笑顔を向けてくれる。
「あっ、転んだら忘れちゃう所だったよ。あのね‥」 そう言って、マリアが話し出したのは、桜子にくっ付いて、春休みに10日程日本に行ってもいいかだった。
日本かぁ、まだマリアは日本を知らない。
この子の祖国。出来るなら一度行かせてあげたい。あたしが連れて行ったら、どこで誰に見られるか解らない。だけど桜子となら‥
「ママは、行けないけど大丈夫?」
そう問えば、
「桜子ちゃんがね、ママ代わりしてくれるんだって。」
嬉しそうにマリアが笑う。
「ママ淋しいなぁ」
わざと呟けば、
「タスクちゃんや、類ちゃん達にお願いしといたから,大丈夫だよ」
ニッコリ笑って、どうしても行かせてくれと頼み込んで来る。
この子の身体に流れる故郷の血が、この子を引き寄せるんだろうか?
**
1人も2人も一緒だからと、桜子がジョアンも連れて行くと言い出して、それじゃあと、何故かバイヤールの養父母も、同行する事になった。
「ねぇママ。ジョアンもマミーもパミーも一緒なんて凄いわよね。桜子ちゃんって魔法使いみたい。」かれこれ一ヶ月、朝に晩に聞かされ続けその度に,相槌を打たされて‥
今日、日本に旅立って行った。
「なんか、淋しいね」
「うん。なんかね。」
「「じゃぁ、夜は2人でブラッスリーにでも行こうか!!」」
声があって、笑い合って子供が旅立っていった、もの哀しさを、ボスと2人で埋めた。
「ジョアンが居ないのも淋しいけど、マリアがいないのも淋しい」
と、ボスが叫べば
「マリアが居ないのも淋しいけど、ジョアンがいないのも淋しい」
あたしも叫ぶ。
「いつかは、お別れの時が来るのかな?」
「っん?来ない来ない。あっ、マリアはお嫁に行っちゃうか〜」
「ジョアンとマリアが恋に落ちたら良いのにね〜」
酔っぱらい2人で、未来の事を話して笑い合う。
ジョアンとマリアが、結婚なんてなったら、静さんと本当の家族になれるんだね。なんだか嬉しくなっちゃうねって、言ったら珍しく本気の顔で
「つくしも、マリアも今だって、私の本当の家族よ。」と言い切ってくれる。
嬉しくなって、調子に乗って飲み過ぎて、類のマンションにボスと二人で押し掛けて‥
目覚めたら、朝だった。
あきれ顔の類に、グラスの水を差し出され‥ ゴクリ と、二人で飲んだ。
二日酔いの頭を抱え、今日は打ち合わせがなくて良かったね。なんて慰め合った。
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