いつかあなたと陽だまりで 13 司つく
もうじき、もうじき現れるだろう。
偶然を装い私は、マリアちゃんを、引き連れて挨拶をする。
マリアちゃんを見てあなたは何かを感じる筈だ。感じなかったら?その時は、あなたなど切り捨てるだけ。不本意とはいえ、2人を別れさせた要因を作ったあなたには、きちんと反省をして頂かなくてはいけないから。これはたった一度のチャンス。
5、4、
もうすぐ
3、2、1
「道明寺様、お待ち申し上げておりました。」
楓氏に挨拶をする声がする。
私は、振り向き挨拶をする。
「これはこれは、道明寺代表、いらっしゃいませ。」
マリアちゃんが、ニッコリと微笑む。うーーんこの愛想の良さ。完璧ですわ。
楓氏が、私を一瞥し、次にマリアちゃんに視線を移した瞬間、おやっという顔になる。
もう一度、私を見て
「随分とご活躍のようで」
「おほほっ、これも偏に皆様のお陰様でございます。」
今日の会食のお相手の海堂会長がもうじき現れる事だろう。
3、2、1 ホラッ
「おぉーーっ、桜子ちゃんじゃないか。」
「海堂会長、ご無沙汰しております。」
「っん?道明寺さんと、桜子ちゃんは知り合いかな?」
私は、にっこり微笑む。楓氏は、海堂会長に良く思われたい筈だ‥
「えぇ、息子のお友達ですのよ。久しぶりでしたもので‥」
「おぉーーっ、奇遇。奇遇。では、桜子ちゃんと‥はて?そのお嬢ちゃんは?」
「マリア・バイヤールです。」
マリアちゃんが人なつこく微笑む。
「そうか、そうか、では、そちらの可愛いレディもご一緒に、食事でもいかがかな?道明寺さんも宜しいかな?」
「あっ、はい。それはそれは。勿論でございます。」
全て計算通りに事が運んでいく。
海堂会長は、ウキウキしながら前を進んでいかれる。
一通りの挨拶を終えると、おもむろに
「はて、そちらの小さなレディちゃんはどちらのお嬢さんかな?」
「古くからの友人の子供ですのよ。今回無理いって日本に連れて参りましたの。」
「ほほっ、そうじゃったのか。桜子ちゃんの子かと思ったよ。ははっ、マリアちゃんは、日本が好きかい?」
「はい。」
天使の微笑みという言葉が似合う微笑みで、マリアちゃんが質問に答えていく。
楓氏が、その様をじっくりと観察している。マリアちゃんを見つめる瞳が優しい。
食事は穏やかに進んでいく。
帰りがけに、すっかりご機嫌をよくした海堂会長が、楓氏に声をかける。
「あははっ、愉快じゃ愉快。道明寺さんが、こんなに穏やかな方とは知らんかった。噂は噂じゃという事じゃな。あははっ、これなら、次をお任せしても大丈夫じゃろう。あとで、今後の事を連絡入れさせて頂くよ。」
「おっと、儂は帰らなくてはならんが、マリアちゃんまた儂と会ってくれるかの?」
マリアちゃんがにっこりと笑う。
「はい。どうぞフランスに来て下さい。」
「あははっ、爺はほんに会いにいくよってな。」
「お待ちしてます。」
立ち上がり見送ろうとする楓氏を制し
「道明寺さん、マリアちゃんとデザートを楽しんでおくれ。」
そう告げて帰って行かれる。
私は席を立ち、楓氏に囁く
「送って参りますので、5分程マリアちゃんをお願い出来ますでしょうか?」と。
**
三条さんの連れている可愛い女の子が真っ直ぐに、私の視線に入って来る。
とても美しい女の子。誰に似ているのだろう?とても懐かしく温かな気持ちになる。
目が離せない‥
有り難い事に、今日の会食相手の海堂会長が、三条さんと連れのお嬢ちゃんのマリアちゃんと同席したいとおしゃってくる。
私に、反対する理由などない。
マリアちゃんを見ていると、私の心は凪る。ずっと見ていたいそう感じさせる笑顔。物怖じしない態度に、洗練され気品漂う所作。
気になっていた事を問いかける
「マリアちゃんのお母様とお父様は何をなさっているの?」
デザートを美味しそうに頬張りながら、
「ママは、弁護士さん。パパは世界のヒーロー。」
「せか‥いの?ヒーロー?」
にっこりとにっこりと笑って
「はい。」
「そ、そう。お母様のお名前は?」
「マリンカ・バイヤールです。」
もしかして‥司とつくさんの子供?何度も、何度も過(よぎ)った。
マリンカ・バイヤール 名前が違う‥…
でも‥ そう思い、次の問いを投げかけようとした瞬間、ノックの音がして三条さんが入ってくる。艶やかな笑顔を浮かべて‥
珈琲を頂き、お暇を告げる。
マリアちゃんの事が頭から離れない‥
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