ずっとずっと 138
邸の中に、大きな声がこだまする。
「琉那様、もう少しお淑やかになさって頂きませんと。」
「はーーーい」
「琉那様!」
毎朝の見慣れた風景に、薫と2人で苦笑する。
琉那が喋ると、薫の目尻が下がる。優し気に愛おし気に、目尻が下がる。
琉那がお嫁に行くときは大変だろうなぁ〜なんて、毎朝考えてしまう。
「っん?どうしたの?」
「うふふっ内緒。」
首を傾げて不思議そうな顔をしている。
それはそうと‥ 琉那の初恋騒動はどうなったのかしら?
プッ あの時も大変だったのよねぇ〜
そう、桜の季節だったわよね?
2年生に進級したその日だったわね。
**
神妙な顔をして部屋に入ってきた琉那
「お母様」
「っん?なぁに」
「私、宝珠琉那は、恋をしました。」
唐突に唐突に語り出した琉那。薫に聞かれたら大変だと思って、思わず辺りを見回してしまった。
「そう、恋をしたの。学校の先輩?」
「わかりません。」
「えっ?」
「どこの誰だか解らない。」
「‥そ、そうなの?」
「うん。そうなの。」
「琉那ちゃん、それは‥恋なの?」
「うん。私はあの人と恋をするわ。」
「そう。」
「お母様、その時はお父様の事、よろしく頼みます。」
「えぇえぇ。」
「火曜日にね、インディゴちゃんにも話して来るね。応援してって」
屈託なく話す我が娘‥
よくよく話しを聞けば、琉那が雪月堂に入ろうとした瞬間、丁度出て来た男の子と、出会い頭でぶつかりそうになって、「ごめんね大丈夫?」と優しく謝られて、その瞬間に、ビビッときたのだと言うのだ。
ビビッと婚‥そんな事昔聞いた事あるなぁーなんて思いながら聞いていたら‥
お母様しっかり聞いて頂戴。と怒られた。
どれだけ、その彼が美しく、魅力的だったかを語る。語る。
あたしは、名前も知らない相手に恋をしたと言い切る娘に、驚いた。
偶然すれ違っただけで、もう2度と会えないかもしれないのに‥
また会えたとしても、琉那の事を好きになってくれるか解らないのに‥
もう一度会えば、2人は恋におちるという娘に驚く。
同時に、そういうもののかもしれないそう思う。
「お母様、本当に本当に約束よ。」
「えぇ、琉那がその彼と恋に落ちたら、お母様は絶対に絶対に琉那の味方をするわ。」
その後、インディゴちゃんに話したまでは良かったんだけど‥
瑞希ちゃんと紅ちゃん、調子にのって、恭介君とジーナにまで話したのがいけなかった‥
琉那と2人,薫に呼ばれ‥根掘り葉掘り聞かれて‥琉那が部屋に戻った後‥
「つくし‥」
「っん?」
「勝手に、約束しちゃダメでしょ。」
「‥でもね、まだ知り合ってもない相手だよ?出会い頭でぶつかりそうになっただけだよ?」
「‥…でもじゃない。」
「だってぇ、琉那一生懸命なんだよ。」
「だってじゃない。」
「雪月堂さんで会ったんだよ?」
「‥だからダメなんだよ。」
父親の気持ちは複雑に出来ている。そう感じた瞬間だった。
「薫、駄々っ子みたいになってるよ。」
あたしが笑うと
「じゃぁ、駄々っ子ついでに抱きしめて‥」
薫を抱きしめる。
「薫王子のご機嫌は直りましたか?」
「うん。」
そう言って、幾つものキスが降ってきた。
**
琉那の口から、雪月堂の君の話題は事あるごとに上りはするが、いまだ再会は果たしてはいないようで、薫は安堵している。
いつか邂逅(かいこ)するのだろうか?
琉那の言う通り、それが運命いいえ宿命ならば、邂逅するのだろう‥
運命は変わる。だけど宿命は変わらない‥
琉那の恋が幸せな恋でありますように‥
元気よく出掛けた琉那の後ろ姿に,願いをこめた。
↓ランキングのご協力よろしくお願い致します♥

にほんブログ村
♥ありがとうございます。とっても嬉しいです♥
- 関連記事
-
- ずっとずっと 141
- ずっとずっと 140
- ずっとずっと 139
- ずっとずっと 138
- ずっとずっと 137
- ずっとずっと 136
- ずっとずっと 135