いつかあなたと陽だまりで 15 司つく
青空に負けない、美しい水色のワンピース。
大人が子供が振り返る。美しく幸せそうに歩く彼女の姿をもう一度みたいと。
道明寺さんが、こんな光景を見たら大変でしょうね。
青筋たてながら、蹴散らすのかしら? それを先輩が嗜める。
うふふっ、早くそんな素敵な光景が見てみたいですわ。
道明寺邸の扉が開かれる‥‥
使用人が一斉に頭を下げる。楓氏以外使う人間がいなくなってしまったお邸。
楓氏が私達を出迎える。後ろから車椅子が向ってくる。車椅子に座っているのは‥タマさん‥それを押されているのは? 楓氏の顔を見やる。
「三条さん、お許しもなくごめんなさいね。」
鉄の女が謝ってくる事に先ず驚き、車椅子を押してきた相手に驚く。
「道明寺忍 と申します。三条さんとははじめてでしたね」
まさかの展開に驚く前に‥
「楓おばちゃま、こんにちは。」
マリアちゃんの明るい声が邸の中にこだまする。
途端に相好を崩す、お三方‥…
マリアちゃんが、タマさんの車椅子を押し、楓氏と居間に入っていく。
「少しお時間宜しいだろうか?」道明寺総代表に声をかけられ、彼の自室に向う。
珈琲を出され、使用人が退いた所で、唐突に彼が口を開く。
「あの子は、司と牧野つくしさんの子供ですね?」
ここは、勝負だ。
「彼女は、マリア・バイヤール。フランス国籍のマリンカと言う女性が産んだお嬢さんです。」
忍氏は、緩やかに首をふり
「名前など関係ありませんよ。彼女は司と牧野つくしさんの子供で、我々の孫だ。」
自信たっぷりにそう言う。ならば受けて立たせて頂きます。
「でしたら、どうなさるおつもりですか?今度は、マリアちゃんを先輩から引き離すおつもりですか?それとも邪魔だから排除なさるおつもりですか?」
しばし沈黙が訪れ、次に忍氏が放った言葉は意外な事に‥
「三条さん、ありがとう。」
感謝の言葉だった。目尻に薄ら雫が光る。
「もう少しだけ、時間を頂く事になると思うが、司には必ず必ず、マリアちゃんとつくしさんを迎えに行かせます。」
「はい。心よりお待ち申し上げております。」
心の底から湧き上がる喜びと共に、返事をした。
忍氏と相談して、道明寺さんの現在の結婚生活の決着が着くまでは、マリアちゃんと先輩に、危害が加わっては大変なので、今暫く秘密にする事になった。彼は私の手をとり
「三条さん、本当に本当にありがとう。」 そう何度も何度も感謝の言葉を述べた。
先輩が消えた8年の間に、いいえ、道明寺さんが政略結婚をされた18年の間に、道明寺さんとご両親の間にどんな葛藤があったのかは、私には解らない。
18年前に、道明寺財閥を守るために、先輩を切り捨てる。
道明寺さんのご両親にとっても、苦渋の決断だったのかもしれない。
その後、愛人という立場を選択した先輩に、大きな被害を加えさせないように、守ってもいたのだろう。
それが、あの時この人に出来た精一杯の愛情だったのだろう。
忍氏と、居間に向う。居間からは、楽し気な笑い声が聞こえてくる。
マリアちゃんの周りには、笑顔が生まれる。
扉が開き 満面の笑顔で
「桜子ちゃん、楓おばちゃまの事ね、これからメイちゃんって呼ぶ事になったのよ。桜子ちゃんも一緒によ。」
手には、水色のリボンを首に結んだうさちゃんのぬいぐるみを抱えている。
楓氏、いいえメイちゃんが
「そういう事になりましたの。ご協力よろしくね。」
そう言って微笑む。
不思議な程に、その微笑みが‥マリアちゃんに似ていて‥ 嬉しくなる。
隣の忍氏を見やると、嬉しそうに嬉しそうに、目尻が下がっていた。
問題はまだまだ解決したワケではない。
だけどだけど、明るい未来の兆しに胸が熱くなる。
先輩、もう一踏ん張りですよ。
**
クッションッ
「やだ〜 つくし、風邪?」
「夜風に当たり過ぎたせいかな〜?それとも誰かが噂でもしてるのかしらね?」
ボスと2人で笑い合う。
今日は、この前のお詫びに、類を誘ってブラッスリーに行く予定だ。
もうじきブツブツいいながら、やって来るだろう。
朝を向える準備をするために、夜の帳が降りる。
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