ずっとずっと 143
私は彼を真剣に愛し始めていた。
だけど、呼び名は変わっても、時折手を繋ぐのが精いっぱいだった。
人目を避けて、こっそり会って、2人で他愛も無い事を話して、手を繋ぎ合う。
「シン、あのね‥…」私はこの日、本当は筒野ルゥじゃなくて、
宝珠琉那だって事を打ち明けようと決意していた。
「っん?」彼の真っ黒な瞳を見ていると‥吸い込まれそうになる。
「あのね‥嘘をつく女は嫌い?」
「ふっ、嘘をついたの?」 シンが私に問いかけてから、一拍間を置いて
「俺が嘘をついてたら嫌いになる?」
私は、慌てて大きく首を降る。「嫌いになんかなれない。」
「じゃぁ、一緒だよ」そう言って、髪の毛をくしゃくしゃっとして、初めてのキスをされた。
ぼぉっとなって頭の芯がしびれた。シンが薄ら笑って。
「キスする時は、目を閉じて‥」もう一度 キスをする。2回目のキス。
「俺、ルゥに嘘ついてるよ。」
美しい顔を歪ませて笑う。
シンが、車を走らせる。
「俺の本当の名前は、道明寺嶺。君の本当の名前も知ってるよ。」
私の名前を知っている?
「宝珠琉那だよね? LucyJwell会長 宝珠薫の一人娘。君のお母さんの旧姓は、牧野。牧野つくし。」
「なんで‥?」
「ふっ、なんで? なんでかね。これからいい所に連れて行ってあげるよ。」
嶺が、無言で車を走らせる。
「シン‥」
「っん?嶺だよ。嶺。」
「れ、嶺は、私が宝珠琉那だって何時から知っていたの?」
「最初から‥って、言ったら驚く?」
「‥」
「知ってて君に近づいた。いや、知ってたから君に近づいた。」
嶺が、卑屈に笑う。美しい横顔が歪(いびつ)に歪(ゆが)んでいる。
彼の言葉は、私を傷つけるために発せられている筈なのに‥苦しみに歪んでいる。
「ねぇ琉那はさぁ、英単語のsinが何を意味するか知ってる?」
「‥‥罪‥」 私が答えると、車を走らせながら、嶺が静かに話し始める。
俺は、作られた子供。あははっ、ご都合主義で作られた子供って奴さ。
自嘲気味に嶺が言う。辛そうに顔を歪ませて‥
車は、目的地に向け走っている。 どこにいくのか? 私にはわからないけれど‥
しばらく無言が続いたあと
「琉那は、ご両親の事が好き?」
「‥‥」
可笑しそうに笑いながら、失敬失敬愚問だったね、そう言って、
「俺も、両親が好きだったよ。18の年まではね。」
「道明寺HDは、君も宝珠の娘なら聞いた事あるよね? 以前は、宝珠の傘下のような時期があった財閥さ。
今じゃぁ君の所までとはいかないけど、宝珠に続く位には大きくなってるんじゃないかな?
まぁ、それでも、君のお父上が、道明寺を潰そうと本気を出せば、あっけなく潰れてしまうんだろうけどね。」
自嘲気味に笑ったあと言葉を続ける。
「俺の父さんは、今はそこの代表さ。俺の母親は、‥二人居る。一人は俺を産んだマミー。もう一人は、生物学的な母親で、マミーの愛する女性さ。」
顔を大きく歪ませて
「俺は、何の疾患もない男女が、態々不自然に作った child of sin 」
自分の事を 罪の子供だと、嶺が言う。
怒っているようにも、悲しんでいるようにも感じる笑顔で‥
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