ずっとずっと 145
これから遭遇するであろう事よりも、嶺に手を握られ歩いている事に‥ドキドキと、胸が高鳴り嬉しくてたまらない。
嶺が振り向き、
「ねぇ、信じていた世界が全て壊れた時、俺はどうすれば良かったと思う?」
そう問いかける、嶺の真っ黒な瞳と、紅い紅い石榴の花の対比が、あまりにも美しくて酔いしれた。私は、この瞬間もう既に家族よりも、友達よりも、いいえ全ての事よりも‥嶺を選ぶと決めてしまっていたのだろう。
私は、この瞬間、少女ではなく女になったんだ。
彼は言葉を続ける
「自分達の純愛とやらを貫くために、俺は、都合良く作られて、そして今度は人助けしろってよ。ねぇそれってどうだと思う?」
「‥…」
「お笑い種だよね?」
美しい美しい笑顔で嶺が言う。
だけど‥嶺の心が泣いている。
辛い。辛い。と泣いている。
刹那
木立の隙間から、美しい光が見えた。
途切れ途切れの会話が聞こえる。
何を話しているかは解らない。
だけど‥二人の間には、愛が見える。切っても切れない愛が見える。
私は、嶺を振り向く。
「俺の父さんと、あんたの母さん。あの二人、ああして毎年逢うんだって。だけどね、手も握らない。それどころか指一本お互いに触れ合わないんだよ。」
自嘲気味に嶺が笑う。
「なんで俺を作ったんだろう?ねぇどう思う?」
邸に入る2人の後ろ姿が見える‥…
石榴の紅い紅い花が風に揺れている
帰りの車の中で
お父様はこの事を知っていらっしゃるの? 誰に言うでなくポツリと呟いていた。
「琉那のお父上が、始めた馬鹿げた逢瀬だよ。それを断らない2人も大概がイカレテるけどね。」
嶺が微笑する。
何も映していないような瞳で微笑する。
「いっそ、抱き合ってしまえばいいのに。いっそ全てを裏切ればいいのに‥そんな覚悟もない癖に、毎年2人は逢うんだよ。」
私は瞳を閉じる。
「俺は、あんたを愛してる。でもあんたを憎んでるよ。お門違いかもしれないけど、両親の愛の結晶って奴の君を憎んでいるよ。」
「‥‥」
「違うか。あんたのせいで、あんたの好きな母上様は、飛び立てなかっただけか?石榴の花に、あんたに縛られて…飛び立てなかっただけか。所詮、あんたも犠牲者ってとこかな?」
泣いている心を隠して、嶺が美しい笑顔で笑う。
「じゃぁ、私は嶺と一緒で、罪の子供だね。」
私は笑う。
あなたが自分を罪の子供だと名乗るなら、私も一緒に罪を担ぐ。
一生に一つだけ欲しいものを手に入れられるのなら、私はあなたが欲しいから。あなたが私を愛してくれると言うのなら、憎まれても構わない。側にいる。
私の心が、少女から女になった日。
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