見つけた 総つく miumiuさま
黙って何かをジーっと見つめている。
一体何を考えているのだろう?
その表情に私の知らないパパの姿が見えた気がした。
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世間一般には、西門流を継承したまだ30代の後半という
この世界では若いと言われる16代目。
学生時代からの付き合いの妻と、
結婚してすぐ生まれた娘。
その後3年して、跡取りがそろそろかと思われたころ
周りの願い通り、長男が生まれた。
仕事も、新しい風を吹き込み、伝統と新しいものを混ぜた西門流は門下生をどんどん増やし
今や、他に追随する者はいない。
そしてそんな若き16代家元のプライベートも
愛する妻と、長女、長男に恵まれ
それは誰が見ても幸せな家族の光景だった。
そんなある日、ママがパパとは別の仕事で地方から帰ってくる途中に事故に巻き込まれた。
まだ会場の近くの病院に収容され、その病院に入院するかと思っていた私は、
パパの指示で翌日には西門の懇意にしている邸近くの病院へ転院させたことを知った。
学校の寮にいた私に
「朱音さん。すぐに桃田先生の病院に来てください。
つくしさんが・・・あなたのママが・・・」
それだけ言うと、おばあさまは黙ってしまわれた。
ママに何かあったんだ?
そう思った私は、すぐに寮長と先生に事情を話し、1週間ほど自宅へ戻る許可をもらい、
すぐに東京の病院へ駆けつけた。
ママは特別室で穏やかな表情で眠っていた。
病院では最高の治療を施したそうだ。
あとは、ママが目覚めるのを待つのみ。
パパがまだ来ていないが、おばあさまが連絡をしたそうなのですぐに飛んで帰ってくるだろう。
パパは、地方の仕事があっても、ママが同行しないときは必ず東京に帰ってくる。
だから今回も必ず帰ってくることだろう。
お邸には帰ってこなくてもママのいる病室には顔を必ず出すはず。
・・・だけど私、がいる間パパは全く姿を見せなかった。
パパが入院しているママの病院に行っている様子は
私が学校から帰ってきてママの病室によった時には全く感じられないのに・・・。
ママの病室で様子を見て、1時間くらいして帰ろうとして
私はそのままウトウトと眠ってしまっていたらしい。
ハッと目を覚ました時に、人の気配を感じた。
視界の端にかすかにパパが見えた。
それは普段、私が目にするパパの様子とは違っていたので、
パパに見つからないようにそっとパパの様子を見ていた。
ママの体をタオルで拭いてあげたり、カーテンを開けて風通しを良くしてあげてたりしたあと
パパは今日あったいろいろなことをママに話しかけていた。
満面の笑顔で・・・とっても嬉しそうに・・・。
その様子を見ていて、前にあきらおじさんと桜子さんが、
邸に来てはママにパパにの様子が邸と外では違うと話しては、面白がっていた。
私は目の端に捕らえたパパの様子に
きっと学生時代のパパはこんな感じだったんだと思った。
そんな学生時代のパパの様子を見てしまった私は
その日だけはパパと顔を合わせにくかったんだけどね。
その日以外は私が顔を出す時間は必ずパパはいなかった。
どこに行ってるのかと思って看護師さんに聞いてみると、
パパは屋上にいるという事だった。
私はパパのいる屋上のドアを音を立てないようにそっと開けてみる。
そこには桜子さんがパパに話しかけているのが見えた。
パパはどこか一点をジッと見つめながら桜子さんの話を聞いていた。
「西門さんが先輩をすぐに東京の病院に転院させるように言ってる時には、正気かと思いましたわ。
すこし容体が落ち着いてからならともかく、すぐでしたから。
でも、運んだ病院がここだと聞いて納得がいきましたわ
この場所は英徳にも西門さんのお邸にも近い
西門さんにとっては、先輩と自分をめぐり合わせてくたのが英徳でしたし、今では西門のお邸でみんなから愛されて、西門さんと一緒に人生を歩いている。
先輩が元気なった時に屋上から見せてあげたいんですか?
北側に立てば英徳、東側にたてば、西門の邸が見えますものね。」
そう桜子さんに言われているパパは表情を変えない。
「あぁ、アイツと初めて会った学校と、一緒に人生を歩こうと決めた西門の邸・・・。
その真ん中のここならば絶対にアイツをまもれるかなと思ってな?
おまえ、前につくしに言ってたけど、
つくしに俺がいなくちゃダメなんじゃないんだ。
俺につくしがいないとダメなんだよ。
俺の傍にいてくれないと・・・。
ここからなら屋上からアイツが好きだって言ってた西門の庭が見えるんだ。」
私がこの話を聞いてるってパパが知ったらどんな反応をするのかとも思うけど、
そんな風に言うパパはとってもカッコよくて、
学生時代にママが惚れたパパの姿を見つけた気がした。
ママ。
パパと毎日来るから早く元気になってね。
パパにママがいないとダメなように
パパが傍にいないとママも元気になれないだろうから・・・。
それから一月後、
私がママの病室にいつも通り入ろうとすると、部屋の中から声が聞こえてきた。
「それ以上食わねーで大丈夫なのか?
腹減ったら、先生に言っておくから時間外でもちゃんと食わねーとダメだぞ」
声だけで判断すると、少しパパが焦っているようだった。
そこにママが、慌てて答える声が聞こえてきた。
「だ、大丈夫だから。ねっ。今日もちゃんと食べたし。・・・だから・・・もう・・・ねっ」
「お前は細すぎるくらいなんだから、もっとしっかり食えよ」
そう言う声が聞こえてきた。
ガチャとドアを開けると
パパがママの口にスプーンを運んでいた。
フフフっ
パパのこんな姿を見られないよね。
パパがママにべったりなのがよくわかる。
そしてそれを何も言わずに笑顔でされるがままになってるママもパパをこれ以上ないくらい好きなんだろう。
おじいさまもおばあさまも、こんなパパの様子を時々呆れた表情で見ている時があるけれど
・・・でもこんな風に愛してくれる人を見つけようって思うんだから、私もパパとママの子供だよね。
いつまでもパパもママも仲良くしていてね。
私はパパとママみたいな夫婦になるのが実は憧れなんだから・・・
まだ二人にはナイショだけどね。
FIN
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スペシャルサンクス miumiuさま

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