ずっとずっと 150
薫もつくしも、美しく成長した自慢の娘が可愛くて仕方ないのだろう、朝から始終笑顔だった。
ルゥは、完璧に 薫とつくしの愛娘 宝珠琉那 を演じた。
穢れを知らない 宝珠琉那 を。
そして、この日を境に琉那は姿を消した。 宝珠琉那は居なくなった。
どうかどうか、私を愛しているのなら、捜さないで下さい。
どうかどうか、この幸せを壊さないで下さい。
そう書かれた手紙と、石榴の花を残し‥ルゥは消えた。
薫は、宝珠の全てを使って探そうとした。それに待ったをかけたのは、つくしだった。
2人の間で、どう言った話し合いがもたれのかは、あたしは知らない。
だけど、薫はルゥを探すのを諦めた。
愛しているから、大切だから探さない。そう決断したのだ。
**
ルゥが消えて、半年が過ぎ、クリスマスが近づいた頃、マドリードの消印で絵はがきが届く。
大きなお腹の絵はがきが届く。顔は映っていない。
つくしが遊びに来た時に、この絵はがきを見せる。
つくしは泣き崩れ 「嶺君との赤ちゃんなのよね?」そう言って
嬉しそうに絵はがきのお腹を撫でる。
それはそれは愛おしそうに、ルゥのお腹が映った葉書を撫でる。
***
一頻り、涙を流したつくしがポツリポツリと語り出す。
「あのね、あたし、薫に自由にするって言われたの‥
もう僕の事は気にしないでいいって、自由に羽ばたけって
そうしたらね、憑き物が落ちたように、もう司とは会わないって。言えたの。」
あたしは、つくしに問う。
「薫はなんて言ったと?」
一旦、瞳を瞑る。次に目を開けつくしが笑う。それはそれは見惚れる程の美しい笑顔で
「いいの? そう言って泣いたの。。バカよね。あたしも薫も‥」
そう言いながら、つくしが話す。
あぁ、あたしは、この人と共に老いたい。この人を幸せにしてあげたい。改めてそう思ったと。
「司君の事はもういいと?一生会わんでもいいと?」
「うん。もういいの。20才の誕生日のあの日、あたしの命を救ってくれたのは薫なの。あたしが琉那みたいに強かったら何かが変わってた?って考えた瞬間にね、違う、そう思ったの」
それはどう言う事の問いに、つくしは笑いながら
あたしは、司を求める気持ちと共に、薫も求めていたの。安らいだ愛を。見守られる愛を求めていたの。一世一代の恋をしたと言いながら、薫の事も求めていたの。 そう言う。
猾い自分を、認めたくなかっただけなのだと言う。悲劇のヒロインになりたかっただけなのかもしれないと言う。
それにね、薫はね‥そう言いながらクスクス笑う。薫は、あたしが居ないと何にも出来ないの。下手したらご飯だって食べれないのよ。あんな大きな企業の会長がよ? そう言って笑う。
あぁ、この子は、つくしは、長い長い年月をかけて‥やっと自分自身を取り戻したんだ。雑草のつくしを取り戻したんだと。
それにね、あたし、薫と結婚して26年間。幸せなの。
そりゃぁ哀しい事だって沢山会ったし窮屈な思いもいっぱいしてきたわよ。
だけどね、薫と結婚して26年間を無しになんてしたくないの。ううん。失いたくないの。
琉那が、幸せを壊さないで。で書いてあったのを読んだ時ね、
あたしの幸せって何だろう?って考えたの。
それでね、真っ先に浮かんだのが、薫の顔だったの。
あぁ、あたしの幸せはこんなに近くに会ったんだって心底思ったの。
これが、あたしと薫が築いてきた愛だって思ったの。
そう言って、全てを吹っ切った顔で美しく美しく笑った。
満面の笑みで。ルゥと良く似た笑顔。誰をも魅了する笑顔で。
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