修羅 15 総つく
「おはよう」
2人、交わすおはようの言葉が幸せでたまらない。
総の寝起きの顔を見つめて、吐息を一つ吐く。
「ふぅっ〜」
「なんだよ。」
「うーん。かるく嫉妬。」
「なんにだよ」
「総の寝起きの顔に。いったい何人の女に見せた。白状しろだよ。」
朝からヤキモチも大概にしろって言われるかと思ったら
「なぁ、お前それ俺のセリフだぞ。いったい何人の男に朝の顔を見せた。白状しろ」
二人で顔を見合わせて、笑い合う。
啄むようにキスをして、お互い脛に傷をもつ身。過去の事には目を瞑ろうと約束し合う。
ったくなぁー、女を翻弄する事があっても、女に翻弄される日がくるなんて思わなかったよなぁ‥なんて、総がポツリと呟いていたのが、嬉しくて嬉しくてニンマリする。
うふふっ、お次は胃袋とばかりに、朝ご飯を作る。土鍋で炊いた熱々のご飯を、塩おむすびにする。
お漬け物と出し巻き卵、お味噌汁を添える。
「美味い」ニッコリ笑って総が言う。
そうでしょ。そうでしょ。考えてないようで考え尽くしたメニューなんだから。
うふふっ、あたしはこっそりほくそ笑む。
だけど、だけど
はぁっー あたしって‥ 一皮剥いちゃえば相変わらず健気なのね。トホホっ
成長してないなぁーって感じるけど、あたしは、今の自分が大好きだ。
自分自身を可愛く感じちゃう。
「‥なぁ‥‥つくし」
「あっ、ごめんごめん。」
「俺さぁ、お前の全てを手に入れてぇと思ってた。朝も昼も夜もお前とずっと一緒にいてぇと思ってた。俺が、毎朝どんだけ幸せな思いしてるか、わかるか?」
可愛いあたしは、総のこんな告白が嬉しくてたまらない。思わずクスリクスリと笑みが零れちゃう。
「ちょっ、たんま。」
「っん?」
「やべ‥」
「っん?」
ぐいっとあたしを抱き寄せて、耳許で囁く。「お前があんまり可愛いく笑うから、見ろお立っちまった。」ったく、流石に時間がねぇだのなんだの言いながら、出掛けて行った。
欲しい。欲しい。総が欲しい。あたしの心は決まった。やるべき事はただ一つ。
身支度を整え、社に向う。
***
「おはようございます。」「おはようございます。」
あちらこちらから声が聞こえる。
伸び伸び明るい会社だな。そう感じる。
Sunny Spotは、あたし達3人の可愛い子供。
ここに来れば辛い事も嫌な事も全て忘れる事が出来た。
全て切り替えて、前だけを見つめる事が出来た。
あたしの子供のような存在だと思っている。
執務室に入る
「先輩、おはようございます」
「つくし〜おはよう〜」
2人があたしに声をかけてくる。
「おはよう。2人にお願いがあるの」
あたしは、2人の目を真っ直ぐに見つめ、お願いをする。
2人があたしを優しく包みこむ目をした後に
「あのさぁ、つくしのお願いの前に、あたし達2人からも話があるの。先ずはそっちを聞いて貰っても良いかな?」
「えぇ、先ずは私達二人のお願いを聞いて頂かないといけませんわね。」
美しい笑顔で2人が微笑む。
大きな商談を決める時に、浮かべる笑顔。
口火を切ったのは、滋さん。
「つくしに、パパからお見合い話が来てるの。これ、断れないから宜しくね。」
次に桜子
「百瀬の伯父様達が、先輩の親代わりで付き添いに決まっておりますので。粗相のないようになさって下さいませね。」
美しい美しい顔で笑う。
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